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エバーシンス  作者: k-ta
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 12月22日。福岡は仕事を終えて、家路を急いだ。先週、上原と結城を見て以来、結城には連絡をとっていない。明日金曜日は天皇誕生日、明後日はクリスマスイブだ。きっと今日もデートなのだろう。今が1番盛り上がる時期だよな。と思い、独り身の寂しさが身に染みた。考えてみたら、クリスマスイブは当然ながら1人だ。いつもはいつでも誘い出して、飲んでバカ騒ぎできるのに。家に帰って1人酒をカッ喰らうか。と、駅前のスーパーに寄って帰ることを決めた。駅に向かって歩いていくと、以前阿川と見た桐島専務を探している青年がいることに気がついた。パーカーにゆったりとしたボトムスに赤いスニーカーと、やはり、この街には目立つ。誰かと話していると角度を変えて見ると、結城とだった。遠くてよくわからないが、何か渡して、振り払うように去って行こうとする姿が見えた。それをパーカーの男が追っていく姿が見えた。気になって、そちらに向かっていくものの、すぐに見失ってしまった。2人はどういう関係なのか?渡していたものは何なのか?気になってしょうがない。電話をかければすぐに聞けるのに。それもできない。結城に会うと、連絡をとると、聞きたくない真実を知ってしまいそうだから。ふっと、息を吐いて、再び駅に向かっていった。

 電車の中に入っても、このモヤモヤは消えない。いつもの自分なら直球でいくのに、前に進むことを躊躇している。らしくない。自分は思い立ったら、すぐに動くじゃないか。結城に確かめたいことがあるなら、はっきり聞けばいいじゃないか。なぜ避けてしまう。今知りたいなら、今聞け、そう思ったら、電車から降りていた。そして携帯を取り出し、電話をかけた。出なかったらメールを送ろう。電話に出ない。やはり、上原と一緒なのか、さっきの男と何かあったか、地下鉄に乗ってて出られないのか、色々考えは巡る。メールで"何してんですか?"と送ってみようとしたところ、メールが来た。結城からだった。"地下鉄乗ってるけど何?"と。

"帰ってるんですか?"

"そう。"

"明日からクリスマス絡みの3連休なのに、直帰ですか?(笑)"

"ほっとけ。"

"飲みたいです。"

"どうぞご自由に。"

"やったぁ。じゃあ行きますね。"

"は?ご自由には、そういう意味じゃない"

このメールの返信を見たが、結城の家にそのまま乗り込んでやろうということで無視した。とりあえず、駅を降り、最寄りの地下鉄駅に向かった。

 結城の家の最寄り駅を降り、スーパーで惣菜つまみ、ビールを買った。クリスマスイブだから、シャンパンも買って気分だけでも味わおう。家に着き、部屋番号を押した。

「はい」

「来ましたよ」

無言だったが、解除ボタンを押してくれた。今日はなんだすんなりだな。と中に入った。

「メール見たよな」

「えっ?」

「しらじらしい」

「今日はどうしてすんなり入れてくれたんですか?」

「入れるまで、ずっとごねるだろ?」

「よくわかってらっしゃる。お邪魔します。イブイブイブに寂しい者同士飲みましょう。珍しく差し入れもってきました」

「寂しいなんて、一言も言ってない」

「そうでした。そうでした。1人で平気な人でした」

「なんで笑ってるんだよ」

「クリスマスボッチが強がってんなと思って」

「人のこと、言えねーだろが」

「はい。こんなにイケメンがボッチだと勇気が湧きます」

「入れなければよかった」

テーブルの上にビールを2缶置き、あとは冷蔵庫に入れにいく。惣菜を並べて、取り皿と箸を棚から出して、福岡は座った。自分の家かのように手際がよい。着替え終えた結城はその姿に呆れながらも、受け入れている自分がいることに気がついていた。部屋にいる事に違和感を感じなくなってしまい、完全に麻痺してしまっていた。結城もソファに座って、缶ビールのフタを開けた。

「あっ、ケーキ忘れた」

「おい。大事なものだろうが買ってこい」

「あーあとから生まれたばっかりにこんな扱い」

「あとから生まれなければねー」

「買いに行きませんよ。僕は絶対」

「そもそもケーキ欲しいって言ってないし」

「僕が欲しいんですよ」

「あー面倒くさい」

「だいたい、惣菜も飲み物も僕が買ってきたんですよ」

「当然だろ」

「だいたい、お金もらってませんからね」

「どの口がゆうか」

「僕が買ってくるとか奇跡に近いんですよ」

「あーけちだもんな」

「けち!僕が」

「自覚がないんだもんな」

「初めて言われた」

「みんな、けちだと思ってるよ」

「みんなって誰ですか」

「今まで会った人全員だよ」

「聞いたことあるんですか?」

「ないけど、誰もが思ってるよ」

それを聞いて徐ろに携帯を取り出し電話をかけ始めた。

「あっ、おかん。久しぶり。ん?あー31日に帰るつもり。はい。はい。んでさ、俺って、けちやないよな。は?なんで言ったことないやん。わかった。はいはい。もういいよ。じゃあそんだけ。うん。ほな連絡する。うん。はい。じゃあ」

電話を切って、納得いかない顔をしている。

「何にやにやしてるんですか?」

「いや」

「まだ1人です」

「俺と合わせて、2/2で100%だな」

「まだ2人ですよ。大学の後輩に聞こ」

「あっ、ずりぃ。いや、聞いてみろよ。傷口が広がるだけだから」

「そうだ。今日はイブイブイブだから、連絡したら失礼にあたる」

「俺には連絡したのに」

「いや。一応悩みましたよ。だって」

「だって?」

「いや、俺見たんですよ。先週、上原と飲みに行ってたでしょ?」

「見た?聞いたじゃなくて?」

「俺もあの店にいたんです。帰るところ、たまたま見かけて」

「声かけてくれればよかったのに」

「いえいえ、楽しそうだったし、邪魔はできません。だから、今日もてっきり一緒かと」

「聞いてもいいか」

「はい?」

「福ちゃんは、上原さんのこと好きなんだよな?」

「好きでした」

「だったらなんで?」

「なんでって?」

「俺とくっつけようとしてるだろ?」

「わっ。傲慢だなぁ」

「冗談で言ってない」真面目な口調で冗談で返してはいけないと感じとった。

「……はい。彼女、結城さんのこと好きだそうです」

「だから?」

「だから橋渡し役になろうとしました」

「上原さんのこと好きなんだろ?」

「……結城さんにはわからないですよ。好きな人に振り向いてもらうためには、ブサイクは努力したり、色んな手を使わないと」

「そんなに好きなのに。橋渡しして辛くないのか?」

「辛いですよ。面白いわけないでしょ。でも彼女に近づく方法がそれしかないんですよ。情けないですけど」

「いつから?」

「?」

「いつから、その橋渡しを?」

「結城さんに会う前からずっと」

「会う前から」

「じゃあ、知り合ったのは、上原さんと俺をくっつける為?」

「きっかけは、その為です」

 結城は、一息ついた。この今の空間も上原と繋ぎ合わせる為なのか?この楽しい時間も偽りなのか?やはり、人を信じたり、人と関わるとまたこんな目にあうのか。悲しみが押し寄せてきたが、もうわかってたことだと自分に言い聞かせて、冷静でいた。

「ただ」

「ただ?」

「僕は自分の間違いに気がつきました。あの日、僕が倒れた日。高校2年の時と同じことをして、散々後悔して、こんな目に会いたくないと思ってたことを思い出したんです。だから、僕、上原にちゃんと気持ちを伝えたんです。伝えた時に気がついたんです。なぜ好きだったのかわからなくなってたんです」

「?」

「気持ちを伝えたのは決着をつける為で、もう好きじゃないことに気付いたんです。上原の何が好きなのか?一緒にいてドキドキして楽しかったのに、いつの間にか気持ちは冷めていってたんです」

「わからない間に?」

「いえ、自分が楽しいって気持ちは別に上原といてではなくなってしまってて。彼女が僕のことを利用しているのは重々承知してたことなんですが、結城さんとはうまくいかないと鷹を括ってたんです。結城さん、人と接することを強く求めてないから、彼女もどうせ突き放されて、傷つけられると思ってたんです。そんな冷たい人だと思って、僕は結城さんと会いました。そしたら、そんな人じゃなくて、めちゃくちゃ楽しくて、そのうち目的が変わってたんです。上原に結城さんの事を伝えるという名目にして、結城さんに会うようになってたんです」

「俺と会うため?」

「はい。僕が倒れたあの日、結城さんと上原がもしかしたら、このままうまくいくんじゃないかと思った時に、好きな人が好きな人とうまくいって悲しんでると思ってたんですが、あぁ結城さんと遊ぶことができなくなるから悲しいんだって思いました。そして、上原にはもったいない存在だから、うまくいかないで欲しいと心から願ってしまってたんです」

「……」

「上原とはうまくいきそうなんですか?」

「あの日飲みに行ったのは、福ちゃんと上原さんをくっつけようと思って会ったんだよ。福ちゃんのいいとこをたくさん話して、意識してもらえばって、自分なりに頑張ったんだけど、ダメだってわかった。彼女は言ってないけど、自分に好意を寄せていることに気が付いた」

「モテる男にはわかるんすね。そういうの」

「茶化すな」

「……」

「確かに、自分はモテないとは言わない。けど、好きでもない相手に勝手に好意を寄せられて、それがきっかけでたくさん傷つけられた人間だっているんだ。あんな目にあうなら、誰からも好かれなくていい。空気みたいな存在になりたい人間だっているんだ。上原さんから好意を寄せてるとわかった瞬間から、恐怖しかない」

「恐怖って」

「彼女からメールはきてるが、返信するのも怖い」

「じゃあ、好きになったりはしないんですか?」

「絶対にない」

その言葉を聞いて、ふと安心するとともに、結城にはどんな過去があったのか、気になっていたが、そこはこじ開けて聞くことではないとわかっていた。

「なんて送ってきてるんですか?」

「今度ここに行きましょうとか、明日は空いてますかとか。とりあえず、この日は用があってとか、機会があればってやんわり断ってはいるんだけど」

「はっきり言ったらどうですか?」

「なんて?」

「誘われて迷惑って」

「それができれば苦労しないよ」

「そうやって中途半端に優しいからだめなんですよ」

「お前に言われたかないわ」

「恋愛においては、自分の方が経験値あるような気がします」

「偉そうに。福ちゃんよりはあるわ」

「いや、その感じだと若干、僕が上っすね」

「若干。お互いレベル低そうだな」

「一緒の括りにしなーい」

「別位置の底辺だな」

「言っときますけど、僕全くモテないわけではないですよ」

「おじいちゃんおばあちゃん、おじさんおばさんにモテるもんな」

「そうそう。人気者で本当困りますよ。というわけで、僕が断然上ですね」

「どうでもいいわ」

「やっぱ、落ち着きますね。しっくりくる」

明日も休みということもあり、酒が進む。しゃべるだけしゃべり、テレビ見てだらだらし、結城が予想した通り、ソファで我が物顔で寝ている。福岡の当初の目的が自分と仲良くしようとした為ではないことに、深く落ち込んだが、理由はどうでもよかった。今は純粋に関係を築こうとしてくれているとわかり、喜びと安堵に包まれ、結城も眠りについた。


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