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「福ちゃんは、年末年始は実家とか帰るの?」
「そうですね。こっちに残っててもすることないですしね。桜井さんは?」
「俺は実家近いから、いつでも帰られるから決めてない。年末年始ってほんとあっと言う間だからな」
「そうなんですね。旅行とか行ければいいんですけど、その時期高いでしょ。そもそも旅行行く相手いなかった」
「広報課の子とはどうなってんの?」
「どうもなってませんよ」
「何やってんだよ。福ちゃんのキャラなら、ガンガンいけるだろ」
「おじさん相手にはガンガンいけるんですけどね」
「おじさん相手にしかいけないのか。情けねえなぁ」
「そんなこと言いますけど、桜井さんはどうなんですか」
「何が」
「彼女さんとうまくいってるんですか?」
「あー。それなぁ」
「どうしたんですか?」
「今度クリスマスあるだろ?」
「はい」
「どうもプロポーズされると思ってるみたいで」
「えっ、するつもりないんですか?」
「まだするつもりなかったんだよ。どうしたらいいと思う?」
「僕に聞かないで下さいよ」
「確かに3年付き合ってるし、彼女も28になるし、時期的に今なんだろうけどな。正直まだ結婚とか考えられないんだよなぁ」
「どうするんですか?」
「どうしようかなぁ」
桜井の悩みは福岡にとって贅沢に感じていたが、付き合っていることがただ幸せなことだけではないこともわかった。年末の営業先への挨拶回りをしながら、桜井には色々話しているが、実は好きな彼女の好きな人とのキューピットをしているとは言えなかった。情けなくて誰にも言えない。情けないと思ってるなら、やめればいいのに。やめる勇気もないのか。社に戻るとちょうど、同期の商品開発部の梶村さつきに会った。
「体調崩していたみたいだけど、元気そうじゃない」
「ああ、もうすっかり」
「同期会のあと、千曲に会ったりした?」
「いや、会っても、連絡もとってないけど、千曲がどうかした?」
「上原さんは?」
「いや」
「そうなんだね。同期会のこと誰かから何か聞いた?」
「何にも聞いてないけど。何?どうかした?」
「そっか。ん〜ここまで言ってしまったから気になるよね。実は、……」
梶村からの同期会の内容を聞いて、身体が熱くなるのを感じた。梶村によると、上原が福岡の気持ちを知ってて、その気持ちを利用して、自分と好きな人との橋渡し役をさせてたと知り、千曲がそれに対して、激昂し、上原と口論になった。とのことだった。まず、福岡自身がしていることが全員に知れ渡ったことが恥ずかしく情けなかった。そして、上原が自分が好意を寄せていると分かっていて、この事を頼んで来ていたことに驚いた。わかっていて、どうしてそんなことができるのか理解できなくなった。それと同時に、上原が好きだという気持ちは自分の中で本当なのか疑問も湧いてきていた。それから梶村とわかれ、すぐに携帯を取り出し、メールを打っていた。話があると。




