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もう一週間以上経つだろうか。福岡は体調はすっかり回復しているにも関わらず、毎日結城の家に泊まっている。会社から近いこと、居心地がいいのはわかるが、約束のことなど全くなかったことのようだ。そして、土曜日仕事はもちろんないのに、我が物顔で、ソファでトドのように横になり、テレビを見ている。
「おい!」
「はい?」
「もう風邪治ったんだから、そろそろ帰れよ」
「まだ、完全ではないんです。いつ倒れるかって考えたら、怖くて家に1人でいられないです」
「だからって俺の家じゃなくていいだろ」
「もう勝手を知ってるので、ここがいいんです」
「ちょっとテレビを消して、ちゃんと座って話を聞きなさい」
「えー。今せっかくリラックスモードなのに」
「いいから、話を、ちゃんとしよう」
「はい」
「今日は、もう帰ったらどうだろうか」
「結論から言いましたね。話し合いではないですね」
「話し合っても結論は変わらないからな」
「だったら話する意味ありましたか?」
「話さなかったら、いつまでも居ようとするだろ」
「そんなことはありません。いつかは帰らないと」
「それはいつ?」
「考えていませんでした」
「じゃあいつにするか決めよう」
「わかりました」
「俺は今日がいい」
「じゃあ僕は1年後とか?」
「話にならない」
「じゃあ年内」
「今日」
「今日は無理です。今日にするなら、いつでも来ていいって、いうことにしてください」
「なぜ、交換条件を出してくる?そして、理不尽な」
「正直、僕がいた一週間はどうでしたか?ほとんど生活に変化なかったでしょ。てか家事の量も減って楽だったでしょ?」
「家事が楽になったとかは自分にとって大した問題じゃないんだよ。」
「そっか家事嫌いじゃないですもんね」
「俺にとって嫌なことをしてるのだよ」
「そんなに嫌がらなくても」
「わかりました。じゃあ明日帰ります」
「わかってない」
「心の準備がいります」
「そんな大袈裟な」
「本当に明日には帰ります。お願いします」
「絶対だな」
「絶対帰ります」
やっと解放されるとホッと胸を撫で下ろした。12月も中旬に入り、年末に向けて忙しさは増していく。結城も忙しい時ほど、休みの日は、ただ誰にも邪魔されずに、ひたすらのんびりしたい衝動に駆られるが、ここ一週間は自分の理想的生活ができてない。やはり、人と住むのは自分にとってハードルの高いことだと、実感させられた。次の日、約束通り帰ったが、昼ごはん食べて、ゆっくりし、結局夕方に帰った。部屋は久しぶりに静寂に包まれた。結城はこれだよ、これ。と思っていた。くつろぎながら考えていたのは、福岡のことだった。福岡の力になれないかと思っていた。自分にできることがあればと思っているが、検討もつかない。時間が経ってふと静かな部屋を見渡した。




