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ーー部活が終わり、夕暮れ時の紅碧の空を歩いて、駅に向かう。駅までの道には同じく、部活帰りの生徒が点々と存在し、自転車で帰る者もいる。賑やかな声が響いて、眩しいほどの笑顔が溢れる中、より自分の惨めさが際立つ。足早に駅に向かおうとすると、目の前に見覚えのある後ろ姿が2つ。近づくことができずに歩速を緩める。けれども、距離は縮まっていく。会いたくない。今はこの2人に会うと、辛くて耐えられないかもしれない。そう思えば思うほど、さらに距離は縮まる。もう、2人の楽しそうな会話が聞こえてきそうだった。見たくない。お願い。と願いに反して、2人が後ろの気配に気がつき振り返る。心臓が張り裂けそうなくらいドキドキしている。ーー
振り返った2人を見て、バタっと音が立ち、目が覚めた。夢だった。ただ自分の家の天井ではない。すごい汗、そして、泣いてる。と思った時に声をかけられた。
「福ちゃん、福ちゃん」
結城の声だ。そうだ、結城の家にいたんだった。
「すみません。なんか寝てしまって」
「すごい熱で倒れたんだよ。汗凄いから、タオルと着替えもってこような」
「すみません」
そうか、熱があったんだ。フラフラしてる頭で考えてみるが、頭が回らない。ただ夢は高2のあの日なのに、ラスト振り返った2人は、結城と上原の姿だった。2人を一気に失う悲しみに涙していた。あの日と同じ事をまた体験するのかもしれない。もう変えようのない事実に感じている。
「とりあえず、水持ってきたから」
と、言われ体を起こされた。
「ありがとうございます」
一気に飲み干す。喉がカラカラだった事に気付く。結城は再びベッドから離れ、少ししてタオルと着替えを持ってきた。
「汗びっしょりだから着替えた方がいい。水、ボトルごと持ってきとくな」
また台所に戻る。タオルで汗を拭き、持参していたスウェットを脱ごうとするも身体が思うように動かない。
「手伝おうか」
「いや、大丈夫です。自分でします」
「わかった。着替えたら。一回体温計ってみ」
「はい」
結城はソファーに座る。ベッドを奪ってしまった。申し訳なかった。約束を破って部屋に来た挙げ句、倒れて、ベッドまで使っている。どれだけわがまま放題しているのだろう。なんとか着替えを終え、体温を測ると38.1°だった。
「よかった。ずいぶん下がった。今は、寒気がある?暑い?」
「暑いです」
「そっかじゃあ、また氷枕作ろうな」
「結城さん、すみません」
「病人に帰れと言うほど鬼畜じゃないよ」
「水飲んだら、早く寝な」
「はい」
熱が出てきついのに、看病してくれている存在がいることが嬉しく、あったかい気持ちで、再び眠りについた。




