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エバーシンス  作者: k-ta
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 各営業先の忘年会に顔出し、時には取り引き先をはしごし、金曜、土曜日は午前様というより、朝までと言う日々が2週間続き、日曜日は泥のように眠ること2週間以上たった。11月末になり、まだ終わりは見えないものの、ペースは落ちてくるようだ。顔を広げる絶好のチャンス。宴会好き、そして年配のうけのよい、福岡にとっては、他の新入社員に比べればたやすいことだが、やはり、ペースは掴めておらず、酔い潰れ、他者に迷惑をかけることも多い。やはり、桜井ともなると、ペースを考えながら、相手に心地よい気分を味わわせることには長けている。桜井だけではない。他の営業の先輩と出かけても、酔い潰れることはなく、綺麗に酔っている。ただ自分の存在意義、新入社員の役割は全力と思っているので、間違いではないと思っているが、しばらくお酒はいらないと思うまでに至っている。今週は金曜日だけだ。やっと休日らしくなると思っていると、同期会の連絡があった。同期会だけでなく、部署の忘年会もあることに、肩を落とす。救いは、地元ではないので、大学や高校、部活時代の飲み会は年末年始に集中しているので、そこはまた別区画だと思っている。もちろん結城の家には全く行けてない状態が続いている。土曜日に行っていいかのメールを送ろうと思っていたら、同期会。また次の機会になりそうだ。

 水曜日、忘年会もなく、今日は早く仕事を終わらせて、すぐに帰るつもりだった。社を出ようとしたところで、上原に呼び止められた。

「なんか疲れてるみたいね」

「忘年会続きで死にそう」

「やっぱり営業は大変だね」

「他の部署と数が違うよな」

「そうね。広報も色々行くけど。私はまだまだ。マスコミ関係とかあるみたいで、逆に行きたいくらい」

「今は営業でいることを後悔してるよ」

「飲み会大好きなのにね。今週末は?来れそう?」

「営業の忘年会ないから、参加するよ」

「じゃあ、今日はもう帰っちゃうね」

「どうかした?いや、せっかく丸の内のイルミネーション、見て帰ろうかなと思ってたから、どうかなと思って」

「行く行く」

「本当に。やったぁ。一人で行くか迷ってて。じゃあ早速行こ」

まさかの、クリスマスイルミネーションデート。疲れも吹き飛んだ。丸の内のイルミネーション会場に向かおうとしたところで、退社している結城を見つけた。

「結城さん」

振り返った結城は福岡を見て、笑顔で近づいてきた。その姿に上原はまた心打たれた。満面の笑顔がまた素敵だった。

「福岡君。今帰り?」

「はい」

「お疲れ様です」

「あー、広報課の上原さん」

「はい。嬉しいです。名前覚えてくれて」

「さすがに覚えるでしょ。水上課長が最近上原さんにおつかい頼んでいるから」

「そうですよね。でも嬉しいです」

「なんだ。知り合いなんですね」

「進めてる企画で広報と進めてるのがあってね。そっか2人は同期か」

「そうなんです」

「そうだ。今から僕たち、丸の内のイルミネーション見て帰るんですけど、結城さんも行きませんか?」

と、言った時に、上原の視線を感じた。

「いやいや。2人の邪魔はしないよ。いってらっしゃい」

「僕らそういう関係じゃないんですよ。だから、行きましょうよ。近くだけど、改めて行く機会ないじゃないですか」

「私からもよかったら、ご一緒に」

「ありがとう。でも帰るよ」

そう言って、結城は駅に向かって行った。なんだろうか。福岡は複雑な気持ちになった。上原と2人で行けるのを喜んでいて、2人きりがいいのに、上原と結城を近づけるチャンスと思ってしまっていた。なぜ焦ったのか。早く決着をつけたい衝動だったのだろうか。このはっきりとしないモヤモヤした気持ちは収まらなかった。

「どうして、イルミネーション誘ったの?」

「一緒に話すチャンスかなと思った」

「イルミネーションだよ。まだ顔しか知らない相手と一緒に行くとこじゃないよ。それに、今急に来られても、何を話せばいいか準備もしてなかったし」

「自然な流れの方がきっかけ作りやすいかなと思ったんだよ。それに準備準備、まだ早いって、じゃあいつ行動起こすの?」と得体の知れないモヤモヤが言葉を荒立てた。

「自分のタイミングがあるの」

「そっちのタイミングまで、まだ待てと。もう紹介できる段階まで来てるのに、いつまで振り回されればいいの?」

「振り回すって、協力してくれるって言ってくれたよね。振り回してるつもりじゃなかった。そんな言い方されるなら、もういいよ」

「ここまできて。知り合う為に頑張ったのに。……いや違う。俺が手伝うって言ったんだ。ごめん。そうだった。ごめん。……申し訳ないけど、もうこれ以上協力できない」

「……わかった」

「そして、やっぱり疲れてるから今日は帰る」

「……うん」

 好きな人にこんなに冷たく言い放つことができるなんて思ってなかった。ただどうでもよかった。その足は、自宅ではない、結城の家に向かっていた。ついさっき別れたばかりだ。同じ地下鉄かもしれない。なんの連絡もせずに、勝手に向かっている。駅を降りて、結城の家に向かうが、周囲に、らしき人はいない。もう家に帰ったか。インターホンを鳴らすも、返答はない。まだ帰ってないのか、居留守なのかわからないが、まだ帰ってない気がして、入り口前のアプローチの花壇のレンガの上に座って待つことにした。買い物して帰るなら、少し待てば帰ってくるだろう。


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