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「メール見たよ」
「見た。今日初めて面と向かって話できたよ」
「よかったじゃんか」
「めちゃくちゃ緊張したぁ」
「じゃあ、今度は話しかけやすくなったんじゃない?」
「どうかな。話す話題がないと。いきなりはいけないけど、挨拶はできそう」
「まっ、一歩ずつだね」
「だから、もうちょっと、普通に挨拶交わせるようになるまで、一緒に飲みにいくのは待ってもらっていい?」
「いいけど。せっかく顔知ってもらえたなら、もう大丈夫なんじゃない?」
「いや、まだちゃんと認知はされてないと思うし、自然に挨拶交わすようになってからだと、結城さんも抵抗が少ない気がするの」
「そんなに構えなくてもいいと思うけどな」
「福ちゃんは、泊まったりできるようになってるけど、てかそんなに仲良くなってるのが驚きだけど」
「たしかに、ここまで仲良くできるとは思ってなかった」
「とにかく、私俄然やる気でてきた。頑張るね」
「頑張れ」
「ごめん。待たせたな。おう、上原」
「千曲君、久しぶり」
「久しぶり」
「じゃあ、私行くね」
「ああ」
「千曲君も、また」
「また」
上原が社内に戻るのを少し見届け、千曲と社外にランチに向かう。
「お前よく、上原と仲良くできてんな」
「なんで」
「話すことがなさすぎて、あの殺伐とした空気見たろ?」
「なんか、不穏な空気ではあったな」
「わかんねーな」
「千曲にその気がないからだろ」
「にしても、あんな美人に何話すことがあるよ。何話してもつまんなそうに聞きそう」
「なんか上原に恨みでもあんのか」
「ある」
「なんだよ」
「なんか気に入らない」
「ただのモテない男の嫉妬じゃねーか」
「そう言われるのも心外」
「お前は外見だけみて、中身を見られない奴なんだなぁ」
「あー。なんかこの話になるとムカつくから、やめやめ」
千曲は美人に対して、何か恨みでもあるのだろうか。自分が話しかけさえもできないからといって、勝手に人物像を作りあげ、意味もなく嫌うことで、自分を肯定しようとしているのであろう。街並みは11月上旬だというのにクリスマスムード一色になっている。クリスマスなんて縁のない福岡にとって、今年はどんなクリスマスになるのだろう。そうだ、今度、上原にイルミネーションを見に行こうと誘ってみよう。でも待てよ。これから忘年会シーズンに突入する。現に来週末に一件ある。営業は今月怒涛の忘年会ラッシュだ。いつ行けるかわからない。早めに行かないと。早速メールを打つ。急な誘いダメだろうな。と考えるうちに、あっ来週末、結城のところに行く約束してたことを思い出した。忘年会で何時に解放されるかがわからない。残念だが行けそうもない。その件もメールを打っておいた。




