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エバーシンス  作者: k-ta
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 日曜日、メールを見返して、住所を確認した。番地まではあっている。マンション名がと思いながら、同じ区画を回ってみる。大きな通りから、左に曲がり、一つ目の交差点から、左に曲がり路地に入る。番地も近くなってきて、目星はついた。10階くらいの高さの白を基調としたマンションで、メールで見たマンション名と一致した。305号室の番号を入力し、呼び出しを押した。

「はい。今開けるね」

インターホンの返事から、すぐにドアが開いた。中に進み、エレベーターに乗り込み、3階に上がる。305の入り口で呼び鈴を押すと、

「どうぞ」と返事があり、ドアを開けて中に入った。玄関から中を見ると、ものが何もなくすっきりしている。突き当たりのドアがあいて、結城が顔を出した。スウェット姿で完全にリラックス状態の結城の姿は福岡にとって、新鮮だった。いつもはピシッとしているイメージからかけ離れていて、いい意味で裏切られた感じだ。

「はっ?なんで、スーツ?」

「僕いつもこの格好なんです」

「なんで?」

「いや、何着たらいいかわからなくて、スーツだったら、何も考えなくていいでしょ?」

「休みでも、どこに行くにも?」

「はい。基本スーツです」

「変わってるね」

「ファッションのことはほんとわからなくて」

「そ。まっ、どうぞどうぞ」

「すみません。お邪魔します」

室内に入って、物がないわけではないが、きれいに片付けられた、リビングキッチンだった。広いわけではないが、居心地のいい空間が作られている。

「めちゃくちゃいい部屋ですね」

「そうか?狭いし、物が溢れてるだろ」

「いや、窮屈には感じませんよ。物も結城さんが好きな物で溢れてる感じで。1日ダラダラ過ごせる空間ができてますよ」

「まぁ、ダラダラできるのが1番ではあるけど」

「家賃どのくらいなんですか?」

「んーと。12万かな」

「1LDKでその値段なら、いいですね」

「まぁ駅から遠いし。そういえば、ご飯食べた?」

「いや、食べてないです。なんか食べに行きましょうよ」

「あ〜。いや、ご飯作ったから、よかったら、食べる?」

「まじですか?」

「いや、嫌だったら、無理せず、明日の弁当とか作り置きできるから」

「いいなら、いただきます」

「食べてって。食べてって」

「すみません。僕何にも持ってきてません」

「いい。いい。ちょっと待ってて。あっ、DVD探す?」

「あっ、はい」

「ちょっと待って、持ってくる」

と言って、リビングから半透明のふすまで仕切られた。隣の寝室に入っていった。隣はベッドが置ける程度の広さで、その奥におそらく、ウォークインクローゼットだろうところに入っていった。そこから、ひとつの大きな箱を取り出してきた。箱の中にも10箱くらい入っていて、そこに、びっしりとDVDが入っていて、ケースにタイトルが書かれていた。

「これ全部ですか?」

「そうそう」

「見たいのあったら、出していいから」

「はい。じゃあ見てみます」

几帳面にタイトルが書かれてあり、その量は一箱50枚くらいとすれば、500枚はある。一箱目から、ドラマのタイトルを見ていく。知ってるドラマ、聞いたこともないタイトルもあり、宝の山だ。

「こんなにあるんですね。すごいなぁ」

「でしょ。収集癖もあるからな」

「他にはどんな」

「昔のカードとか、きれいな色の紙とか。あとは、思い入れのあるものは捨てられなくて、たまる一方だよ」

「へぇ、例えば?」

「実家にはたくさんあるけど、ここにだったら何かなぁ。着すぎてもうさすがに着られないお気に入りだった服とか。就職活動中に使ってた、ぼろぼろになった靴とか」

「でもわかります。思い出の詰まったものとか、捨てずに残してしまいますよね」

「福岡君にもある?」

「あります。あります。高校の部活で使ってたノートとか、改訂されたのに、改訂前の辞書とか」

「部活何やってたの?」

「放送部です」

「へぇ放送部かぁ」

「マニアックでしょ。まっ入った理由は、体育祭の競技に出なくてもいいからなんですよね」

「なるほど」

「僕、運動が死ぬほど嫌いで、死ぬほど苦手で」

「そんな感じだね」

「だから。なんとかして体育を休めないか常に考えていました」

「そこまでか」

「はい」

 結城はキッチンに向かい、調理を始めていた。ただ、家に入った時には、肉の焼かれた匂いはしていて、ある程度はできているのであろう。

「何か飲む?今日何で来た?」

「ありがとうございます。電車できました」

「酒がいい?お茶とかがいい?」

「高藤さんは飲まないんですか?」

「俺?ビールひっかけてる」

「飲みながら作ってるんですね。じゃあ僕もビールいいですか?」

「わかった」

「あっ、自分でとりにいきます」

「じゃあ、冷蔵庫から、勝手に出して」

「はい。てか、冷蔵庫でかくないですか?」

「確かに、一人暮らしにしてはでかいかも。料理好きだからね」

「料理もできる男。憧れちゃうなぁ」

「バカにしてるだろ」

「そんな、それは捻くれすぎですよ」

「ならいいけど」

「僕料理できないから、尊敬します」

「いっつも外食?」

「さすがにいつもはって、わけではないです。自炊もちょっとはしますけど、ほんと簡単なものしかしません」

「俺も最初そうだった」

「じゃあいつか自炊するようになりますかね」

「さぁ、それは人それぞれだからなぁ」

「じゃあ、自炊しなさそうです。めちゃくちゃ美味しいそう」

「肉焼いて、付け合わせ作っただけだよ」

「あとちょっとだから」

「はい」

何もかもが完璧だ。この人に欠点はあるのだろうか。ビールを開けて、軽く缶同士を合わせ、福岡はリビングに向かった。これは、と手に取ったのは、"最○の片思い"放送当時は見たことないのは勿論だが、再放送でも見たことはない。ただ、総集編的なものだけの30秒くらいの情報だが、出演者に興味もあり、見てみたいと思っていた。

「ん?あー"最○の片思い"懐かしいなぁ」

「タイトルとか出演者は知ってましたが、見たことないです。でも見てみたいと思ってて」

「確かに、DVD化されてないもんな」

「本当ですか?」

「たしか。これにする?」

「ん〜。まだ一箱目で」

「じゃあ、さわりだけでも見てみる?ご飯もできたし」

「はい」

テーブルに料理が並ぶ、鶏肉の粒マスタード炒め、ツナサラダ、小松菜のおひたし、なすと油揚げの味噌汁、ご飯と並んだ様子をみて、家庭料理、いつぶりだろうと、福岡は感動した。とにかく美味しい。ご飯が進み、箸が止まらない。また結城の良いところが見つかってしまった。この完璧さに、人は嫉妬したり、自分のできなさを実感し卑下したりし、近づきにくい存在を形成しているのもわかる気がする。福岡もその感情は抱いているものの、まだ憧れは強い。もう一つ先行く、人に理解されにくい趣味嗜好を知ったからだろう。ご飯は進み、ビールもいつのまにか3本飲み干し、ドラマを見ながら、完全にリラックスモードになっている。自分の家じゃないのに、この居心地の良さ。明らかに眠たくなっている。


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