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ーー何番出口だよ。もうわからん。前日にどうして、リサーチしなかったかな俺。少し前にこの場に来たから鷹をくくっていた。自分をぶん殴ってやりたい。
この体が憎い。どう考えてももう走れん。
誰か聞きやすい人。教えてくれるさ親切な人。どこだ。出てこい。あの人は?なんか急いでる?あの人は?ダメだ。なんかめっちゃ怒ってる。東京怖い。
もう間に合わない絶対。
遅れてしまうくらいなら、帰りたい。
あー。もうとりあえず、地図見て、地上に出てみるしかないかなぁ。地図は…。
あっ、あった。
ん?あれって。
今まさに知りたい場所を示すロゴを持った人が目の前を通り過ぎていく。コタニの紙袋を持った人。この人はきっとコタニの社員もしくは関係者に違いない。この人を逃してはいけない。行け!ーー
人がどんどん進んでいる中、かき分けながら、目的の人に向けて、何度も声をかける。「すみません。」と言うたびに様々な人が振り向くが、振り向いて欲しい人はこちらに気づいてくれない。思い切って、大きな声で言ってみる。
「すみません」
「はい?」とかなり怪訝そうな顔をしながら振り向いた。二人が流れを止めている為、通りすぎるひと通りすぎる人が迷惑そうな顔をしている。
「どうされましたか?」
「お急ぎのところ申し訳ありません。その紙袋」
と、結論のわからない言い方をしてしまったと、言った瞬間に思った。相手の男性も不信感を募らせているのがわかる。
「コタニの紙袋をお持ちだということは、そこでお勤めか関係者の方ですか?」
「はい。勤務しておりますが」
「はぁ。よかった。あの私、御社の面接に向かっておりまして、全く行き方がわからないんです。教えていただけないでしょうか?」
社員の男性は理解してくれたようで、流れから壁際まで連れて出てくれて、案内図を指さして、出口の番号を教えてくれた。が、土地勘のない人間にとって、出口を出たところで、どういう道順で行けばよいのか、皆目検討もつかなかった。
「わかりましたか?」
「すみません。出口は今教えていただいた番号でわかると思うんですが、出てからがわかりません。あの、面接が10時からで、間に合いそうになくて、あの、申し訳ないんですが、連れていっていただけませんか?お願いします!」時間は9時半を過ぎている。
この人にも、今から用事があることはわかっている。断られるかもしれないが、今はもう何が何でも頼むしかない。お願いします。僕の願いを叶えてください。
「わかりました。もう時間がないから急ぎましょう」
「ありがとうございます!」
そのまま、その社員であろう男性は出口の方に向かって行く。かなり急ぎ足で、人を間をぬって進んでいく。見失わないよう必死に着いていく。普段運動しないせいか、息は切れ、汗もにじんでくるのがわかった。階段を社員であろう男性は軽快に上がっていく。こちらはひぃひぃになりながら、彼の姿を追った。ふと見ると、靴底の一部だけが水色になっているのが見えた。ただついて行くのに必死で、ガムでも踏んだのかなぁとしか思えなかった。出口に近づくと、明るい日差しに包まれたみ空色の空が眩しかった。階段を登りきるのを待ってくれている。逆光でこちらからはどんな人なのか認識はできない。登りきると休む間もなく、出口から右に向かい、2つ目の交差点を左へ。少し真っ直ぐ進むと本社ビルが見えてくる。あーあったと安堵したが、そのまま社内に入り受付まで案内してくれた。
「本当にありがとうございます。本当に」
「お役に立ててよかったです。さっ、早く受付を済ませないと。頑張ってくださいね」
「はい。ありがとうございました」
息は荒いまま、受付へと向かい、最終面接会場の場所を聞いた。受付の人が立ち上がり、会場へと案内してくれるようだった。エレベーターホールについたころに、ふと平常心に戻った。ここまで案内してくれた人の名前を聞いてなかった。もし、この会社に入社したら、いや、しなくてもきちんとお礼がしたいと思った。エレベーターホールから会社入口を見ると、もうその人はいなくなっていた。慌てていたため、顔もはっきりと覚えていない。私が案内しました。といってくれない限り見つけようもないだろう。
「どうかされましたか?」
「あっ、いえ。」
エレベーターの中に入り、最終面接会場に向かった。