9.
9.
真理は、まさか 丈 と大賀根 望代が幼なじみだとは予想もしていなかった。
丈 と望代は同じ町内の同級生で幼い頃は、よく遊んでいた。
望代の家は日本でも指折りの大財閥だが、自由奔放な両親のおかげで平凡なサラリーマン家庭で育った 丈とも親しかった。
望代の両親は望代が 丈 と結婚してもいいとさえ思っていたほど寛大だった。
しかし 丈 は身分の違いを気にして高校を卒業してからは望代と距離を置くようにした。
望代は 丈 を追い掛けて同じ大学に入学したのだが、真理の美貌に観念し 丈 に近付くのを諦めた。
そんな二人の過去の関係を知らない真理は徹と話しこんでいた。
真理「温泉の事なんだけど」
徹「どうだ?行けるか?」
真理「うん。大丈夫。でも」
徹「よーし。温泉旅行だー!」
真理「ちょっと、ちょっと話をちゃんと聞いてよ〜。」
徹「あぁ〜ゴメン、ゴメン。どうした?」
真理「一緒に行く相手は私の高校の時の知り合いの名前を出したんだけど、温泉の場所を本当に行く場所を教えちゃったの。」
徹「なんだ、そんな事か。大丈夫、大丈夫。気にするな。もしも何かあったら俺の力で何とかしてやるよ。だから心配するな。」
真理「本当?それよりアナタの方は大丈夫なの?」
徹「俺か?俺の事は心配するな。真理が温泉に行けるんだから俺だって行けるさ。」
真理「何それ?意味が分からないわ。」
徹「大丈夫だ、って事だよ。」
真理「それならいいんだけど。とにかく楽しみにしているわ。」
真理は嬉しさイッパイで電話を切った。
望代「間違いなく浮気ね。」
丈「おい、おい、ハッキリ言うなよ。これでも、かなり落ち込んでいるんだから…」
望代「あっ、ゴメンゴメン!それで、どうするの?」
丈「力を貸してくれないか?」
望代「面白そうだから、いいわよ。でも…高いわよ!」
丈「お金をとるのか?」
望代「バカねぇ〜。お金なんていらないわ。私を誰だと思っているの?とりあえず、どこの温泉?」
丈「なんでも有名な温泉で馬鹿温泉らしいんだけど知ってるか?」
望代「知ってるけど馬鹿温泉って、そんなに有名?」
丈「知ってるのか!?」
望代「知ってるわよ。ウチの経営している宿があるもの。宿は分かってるの?」
丈「あぁ。たしか…阿歩屋旅館って言ってたなぁ。」
望代「あら、奇遇ね。ウチの傘下が経営している宿だわ。それじゃあ監視するように伝えておくわ。相手って、どんな人なの?」
丈「相手は相当の金持ちみたいなんだ。グランドピアノホテルのロイヤルスイートを利用するぐらいだからね。」
望代「ふぅーん。ウチのホテルのロイヤルスイートを利用してるのね。」
丈「おい、おい。あのホテルも君の所で経営してるのか!?」
望代「知らなかったの?相手の特徴は分かる?」
丈「あ、あぁ。真っ赤なスポーツカーに乗ってた。日本では、あんまり見掛けないスポーツカーだったよ。」
望代「分かった。調べるわ。すぐに分かりそうね。きっと、その男が真理さんを誑かしてるんだと思うから少し痛い目にあわしてあげなきゃね。」
つづく