神の国を侵略した龍《ドラゴン》 15
「やめてったら、やめてーっ!」
女は激しく怒鳴りました。女医さんは「困った」とも「呆れた」とも取れる顔色を見せました。そしてちょっと時間を開け、女に質問しました。
「じゃ、訊くよ。あんた、いったいなんなの?」
「私は・・・ 私は昨日街を破壊した龍・・・」
「はぁ?」
女医さんは唖然としてしまいました。女医さんはこの女は5年前地球に侵入してきたユミル星人の兵隊の生き残りだと思ってたからです。でも、すぐに納得しました。
「そっか、これであんたの創傷の意味がわかった。あの創傷の原因はミサイルだったんだな。でも、巨大化する宇宙人は聞いたことがあったけど、巨大な怪獣に変身する人間がいたなんて・・・」
「別に巨大化してたんじゃない。今が小さくなってるだけだ」
「そっか・・・」
「通報するのか?」
「しない」
「なんで?」
「宇宙人だったら通報する義務があるが、怪獣に変身する人間は、通報する義務はないから」
それを聞いて女はちょっと笑いました。
渋谷で怪獣が暴れた事件をいつの間にか人々は渋谷怪獣事件、またはただ単に渋谷事件と言うようになりました。
その渋谷事件から2日後、小林クリニックに入院中の女は、今ベッドの上で半身起こされてます。上半身は包帯でぐるぐる巻き状態です。女医さんがその包帯を解いてます。
包帯が解かれると、背中にいくつかのガーゼが出てきました。そのガーゼを外すと、その部分の皮膚は裂け、中の肉もえぐれてました。
女医さんがその傷に霧吹きのようなもので薬を吹きかけました。その瞬間、女にひどい傷みが走りました。
「いた・・・」
「我慢しろ。お前、ほんとうは巨大な龍なんだろ?」
再び包帯を巻いて、今日の治療は終了。ここで女が女医さんに質問しました。
「なんで私を助ける?」
「きまぐれ」
「私はお前の同胞を1000人以上殺したんだぞ?」
「別に私の親族が殺されたわけじゃないんだ。無関係」
この件に関しては、女医さんから明確な答えは得られないようです。女は質問を替えることにしました。
「この国に神はいるのか?」
「いたな。昭和20年、西暦1945年までは。あまり役に立つ神じゃなかったが」
「今はいないのか?」
「いない」
「一昨日巨大化して私と闘った女は、女神と言われてた」
「女神?・・・ ヘルメットレディのことか?」
「ヘルメットレディ? あいつ、ヘルメットレディというのか? 私は女神と聞いたぞ。ヘルメットレディてなんだ?」
「地球の守り神みたいなものだ」
「守り神? やっぱ神じゃないか!」
女医さんは「それは比喩的表現だ」と言おうとしましたが、話がややっこしくなりそうなので、やめておきました。
女はふとマガジンラックに入ってるスポーツ新聞を見ました。
「あ、それ取って」
女医さんは手を伸ばし、スポーツ新聞に触れ、
「これか?」
「うん」
女医さんはスポーツ新聞を手にすると、女に手渡しました。女がその新聞1面を見ると、大病院のエントランスの前で子どもたちに囲まれてる女神隊員の写真が載ってました。女医さんはそれを横目で見て、
「そいつがヘルメットレディだよ」
「あは、やっぱり人気があるんだ・・・ とっても凛々しくて、みんなに尊敬されてるんだろうなあ・・・」




