神の国を侵略した龍《ドラゴン》 12
飛んできたヘリコプターは報道のヘリコプターでした。報道のヘリコプターです。ヘリコプターは女の頭上を通り過ぎて行きました。すると、
「くそーっ、ヘリを飛ばすなと言ってんだろ! ぜんぜん心音が聞こえないじゃないか!」
突然の怒鳴り声。女ははっとしてその声の方向を見ました。すると数人の捜索隊員が集まってました。捜索隊員たちは何か探索機械を持ってます。女は思いました。
「この世界には、微細な心音を聞ける魔法の機械がるのか?」
「いたぞーっ!」
女はその声の方向も見ました。そこにも数人の捜索隊員がいました。
「ゆっくり引き出せ! ゆっくりだぞ!」
探索隊員の足元のガレキの中から女性の身体が出てきました。が、捜索隊員の顔色はすぐに変わりました。
「だめだ、死んでる・・・」
と、別の捜索隊員が何かに気づき、叫びました。
「おい、赤ん坊だ! 赤ん坊がいるぞーっ!」
探索隊員の1人が、女性がいたガレキの穴の中から赤ん坊の身体を抱え上げました。しかし、すぐに首を横に振りました。
「だめだ、この子も死んでる・・・」
別の捜索隊員。
「かわいそうに・・・」
「母親が身を挺して赤ん坊を守ろうとしたようだな。せっかく命を賭して我が子を救おうとしたのに、水の泡か・・・」
その光景を見て、女は何か複雑な思いになってしまいました。
女はさらに歩くと、不思議な光景を見ました。先ほどと同じユニホームの捜索隊員数人が、手を合せ祈ってるのです。捜索隊員の前には、ビルのガレキがありました。
その反対方向を見ると、女性とその幼い息子とさらに幼い女の子がいます。女性と男の子は必至に祈ってますが、幼い女の子は理解してないようです。母親と兄にしつこく訊いてます。
「ねぇ、お父さんは? お父さんは?」
それを見て女は愕然としてしまいました。女は今までいろんな次元の国を侵略してきました。そしてたくさんの町を破壊してきました。
彼女にって町を破壊する行為は、最高の娯楽だったのです。しかし、自分が破壊した町がその後どうなったのか、一度も確認したことがありませんでした。初めて見たその光景は、あまりにも残酷でした。
女はつぶやきました。
「ひどい・・・ 私は今までこんなひどいことをしてきたの?・・・」
と、女は突然ふらっときて、その場にへたり込んでしまいました。
「あは、ついに天罰がきた。ここまでか・・・」
女は自分に駆け付けてくる数人の男性を見ました。しかし、ここまで。女は気を失ってしまいました。
ここはふつーより高級な病室。ベッドは1つだけ。
「ありがとうございました!」
ベッドに寝かされてる隊長に女神隊員は立ったまま頭を深々と下げました。彼女の衣服は病院服で、頭にはウィッグなど単眼を隠すものはありません。自動翻訳機のヘッドセットがあるだけです。
隊長は立ち上がることができないようで、そのまま首を横に倒し、女神隊員を見ました。
「よせよ。お前だって医者に寝てろって言われてるんだろ。自分の病室に帰って、すぐに横になれよ。これは命令だ!」
「はい!」
女神隊員は振り返り、ドアのノブに手をかけました。が、隊長が、
「あ!」
と言うと、立ち止まり、振り返りました。
「はい?」
隊長は女神隊員の単眼を見て、
「その眼、隠しておけよ。今は日本人の大半がカメラ付きスマホを持ってるからな。いつ撮影されるのか、わからんぞ」
「はい!」




