女神の1番長い日 9
その監視カメラが捉えた宇宙人の姿が巨大なモニターに映し出されてます。ここはテレストリアルガードサブオペレーションルーム。隊長と3人の隊員がその映像を見ています。隊長がぽつりと口を開きました。
「ふ~ うちにも取調室が必要だったとはね」
ストーク号に乗ってた一般の隊員に疑問が浮かび、それがストレートに言葉になりました。
「あの・・・ これじゃ、巨大化して逃げ出してしまうような気がするんですが?・・・」
ヘロン号に乗ってた若い隊員がそれに応えます。
「平気平気。あの手錠は特別製だ。この状況下で巨大化したら、両手が引きちぎられてしまうよ」
隊長。
「さーて、行くとするか!」
全員が一斉に応えます。
「了解!」
再び会議室です。ドアが開き、テレストリアルガードの隊長と3人の隊員が入ってきました。宇宙人はそれに少し反応しましたが、あえて振り向かないようにしてます。まず、隊長が口を開きました。
「手荒いことしてすまなかったな」
宇宙人は何も反応しません。すると隊長は右手を宇宙人に向かって真っ直ぐ伸ばしました。その手にはリモコンが握られてます。隊長がそのリモコンを押すと、宇宙人の手錠がパカッとはずれました。それを見て3人の隊員がびっくり。ヘロン号に乗ってたベテランの隊員が、
「た、隊長、何をするんですか!?」
と言いながら、さっとレーザーガンを構えました。隊長はそれを見て、
「おい、やめろ!」
と怒声。そして詰問。
「なんでレーザーガンを持ってる!?」
ベテランの隊員はおちょくるように応答。
「用心するに越したことはないですよ!」
隊長は舌打ち。
「ちっ」
宇宙人は手錠が痛かったのか、右手首に左手を当ててました。隊長はそれを横目で見ながら、隊員たちに話かけました。
「オレたちゃ警察じゃないんだ。逮捕状も取ってないし、手錠をかけておく法的根拠がないだろ!」
ベテランの隊員は納得いかないようです。
「しかしねぇ!・・・」
宇宙人はフルフェイスのヘルメットを脱ごうとしています。隊長はそれを見て、
「あ、ヘルメットは脱がないでくれ。この星にはいろいろと病原菌があるし、あなたがもってる病原菌もわれわれには猛毒になる可能性があるからな。それにそのヘルメットには自動翻訳機が備わってる。被っていた方が会話しやすいはずだ」
宇宙人はヘルメットにかけた手を離しました。隊長は言葉を続けます。
「君にはすまないことをした。あの船には数千もの君の同胞が乗ってたなんて、夢にも思わなかった。許せとは言わないが、今は怒りを収めてくれないか」
「ふ、ふざけんな! なんで攻撃した! いくらなんでも攻撃する前に警告するだろ! この星じゃ、警告もなしに撃ってくるわけ!?」
ついに宇宙人が口をききました。溜まり溜まったものを一気に吐き出したようです。それを聞いて危険を感じたのか、さらにもう1人、ヘロン号の若手の隊員が、
「ちっ!」
と舌打ちをして、レーザーガンを構えました。
隊長は慌てて宇宙人の前で両手を広げ立ち塞がりました。そしてあらん限りの声を発しました。
「やめろと言ってんだろーがっ!」
その怒声にベテランの隊員と若手の隊員はびびりました。
「ええ・・・」
隊長、なんでそいつを庇う? そいつは凶悪な宇宙人だろ!? ベテランの隊員は疑念がいっぱいになりました。