前方の敵後方の敵 20
隊長は巾着のような小さな布製の小袋を取り出し、それをテーブルの上でひっくり返しました。すると小さな石ころが飛び出し、テーブルの上を転がりました。そう、前章でよからぬネット民を呪い殺したあの小石です。
隊長はその小石を握ると、その拳を胸に置きました。そしてそのまま瞑想にふけりました。
ここははるか上空。さらに上空には漆黒の宇宙が見えてます。今ここにペリカン号が飛んでます。
そのコックピット。メインの席は横に2座席で、先ほどの2人の乗員が操縦してます。その1人が発言しました。
「まもなく成層圏を脱出します」
その後方では入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が補助席に座ってます。宮山隊員と番田隊員が会話してます。まずは番田隊員の発言から。
「あ~あ、オレたち、クビかなあ・・・」
それに宮山隊員が応えました。
「いや~ まだチャンスはあるさ」
「そりゃ、お前にはまだチャンスがあるだろうよ。なんてったって元総理の孫だし」
「あは、次の仕事が見つかったら、紹介してやるよ」
「そうしてもらえるとうれしいなあ」
2人は笑顔です。と、ここで2人は入谷隊長の異変に気づきました。
「ん、隊長?」
隊長の顔は恐怖に引きつってました。
「ああ・・・」
宮山隊員。
「どうしたんですか、隊長?」
「お、お前、あれが見えないのか?」
入谷隊長はまっすぐ前を見てそう言いました。宮山隊員もまっすぐ前を見ましたが、何もありません。
「ええ? 別に何もありませんけど?」
しかし、入谷隊長の眼には見えてました。真っ黒いマントを着て、そのマントと一体になったフードを被ってる男。その手には死神の鎌が握られてます。フロントガラスの外側にそいつは立ってるのです。ここは大気圏の外側のはずなのに?・・・
入谷隊長は震えます。
「な、なんなんだ、こいつは?」
今度は番田隊員が話しかけました。
「隊長、何もいませんって!」
怪物はフードを取りました。その顔は一つ眼のガイコツでした。入谷隊長はついに悲鳴をあげました。
「うぎゃーっ!」
入谷隊長は慌ててシートベルトを外すと、操縦脇の2人の乗員に喰ってかかりました。
「おい、レーザーガンだ! レーザーガンを貸せーっ!」
2人の乗員はびっくり。
「えぇ!?」
宮山隊員と番田隊員は背後から入谷隊長を押さえつけます。
「隊長、やめてください!」
「もう、何やってんですか、隊長!?」
「離せ! 離せ! 離せ! 離せ、このやろーっ!」
ここで隊長ははっとしました。怪物はいつまにかフロントガラスの内側に立ってたのです。
「ぐわーっ!」
入谷隊長はついに乗員からレーザーガンを奪いました。入谷隊長が振り返ると、怪物は入谷隊長に向かって大きく鎌を振り上げてました。
「やめろーっ!」
そう言い終わるや否や、入谷隊長はレーザーガンを発射。その光弾が怪物に命中・・・ が、光弾は怪物を素通りし、そのままフロントガラスを貫通。宮山隊員と番田隊員の顔が瞬時に絶望的になりました。
「ああ・・・」
大きな地球。その縁で何かがピカーっと光りました。
テレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。イスに座ってる香川隊長が右手の拳を開けました。すると小さな石が転げ落ち、テーブルの上を転がりました。隊長がそのまま視線を上げると、そこに赤いマントの幼い女の子が立ってました。




