前方の敵後方の敵 19
海老名隊員は涙声で訴えます。
「なんで・・・ なんで、あの人のために命を賭けようとするんですか?」
「あの人て・・・ 女神隊員のことか? おいおい、お前まで宇宙人を差別する気か? オレにとっちゃ、お前も女神隊員もかわいい子分だ。
女神隊員は今もがき苦しんでるんだ。なら、救ってやらんと。それが隊長というものだろ」
「私は反対です!
隊長は私と大事な約束がありますよね。どうしてもというのなら、その前に私との約束を果たして下さい!」
「ふ、それはできんな。オレにはテレストリアルガードの隊長として最低限守らないといけない常識というものがあるんだ。お前だってわかってんだろ?
どうしてもって言うんなら、お前、その特殊能力で阻止してみろよ!」
海老名隊員は黙ってしまいました。
ここは廊下。今引き分けの自動ドアが開き、中から海老名隊員が出てきました。海老名隊員は深く考えてます。どうすれば隊長を救うことができるのか?
しかし、です。実は海老名隊員は隊長が女神隊員のために命を賭けようとしてるところまではわかってますが、どのような手段を使う気なのか、てんでわかってません。まずはそれを解明しないと。それを解く鍵は女神隊員?
そう思った瞬間、海老名隊員の頭の中に突然別のビジョンが入ってきました。それは女神隊員がこれから実行しようとしてる、良からぬ企てです。
「ええ? い、いけない・・・」
海老名隊員は慌てて駆け出しました。
女神隊員の自室。女神隊員はベッドの上で体育座りで小さくなってます。頭には前髪のウィッグがありません。特徴的な単眼が丸見えです。ただ、自動翻訳機のヘッドセットはあります。女神隊員は何か思い詰めてるようです。
と、女神隊員は突然ベッドから降り、立ち上がりました。そして巨大な単眼を閉じました。テレポーテーションする気です。
が、ここで自動ドアが開きました。そこには海老名隊員が立ってました。
「女神さん、行ってはいけません!」
「あは、なんのこと?」
女神隊員はすっとぼけました。
「今あなたがしようとしてることを言いましょうか?
ペリカン号のところまでテレポーテーションして、巨大化して、ペリカン号を思いっきり殴って壊して、またここにテレポーテーションして帰ってくる」
それはビンゴでした。「さすが千里眼の持ち主」と女神隊員は頭の中で苦笑いしました。が、すぐに真顔になり、
「海老名さん、行かせてください! 私、もう我慢できない!」
と、強く訴えました。
「そんなことしてもバレますよ。地球の観測機器は女神さんの想像をはるかに超えてますから!」
「もしバレたら、巨大化して、できるだけたくさんの街を壊して死ぬ! もうその覚悟はできてるから!」
女神隊員は大声。けど、海老名隊員は怯みません。
それから2人の間に微妙な時間が流れました。その静寂を破ったのは海老名隊員でした。海老名隊員はゆっくりと話し始めました。
「・・・女神さん、隊長はあの3人を殺す気です」
それを聞いて女神隊員は驚きました。
「え?」
と、海老名隊員は突然泣き出してしまいました。
「隊長は自分の命と引き換えに、あの3人を殺す気なんです!」
「ええーっ!?」
「女神さん、お願い! 隊長を助けて!」
再びサブオペレーションルーム。隊長は卵型の巨大なテーブルに静かに座ってます。




