前方の敵後方の敵 16
入谷隊長は苦虫を潰したような顔を見せ、そしておもむろにしゃべり始めました。
「もう1つの答えは、あの女を・・・ 女神隊員を殺すことだった」
倉見隊員と寒川隊員はその言葉を聞いて唖然としました。橋本隊員は苦笑しました。香川隊長は淡々《たんたん》と質問を続けました。
「なんでそんなことを?」
「地上ではあの女の人気はうなぎ昇りだった。それに反比例する形でうちに来る罵詈雑言が増えていった。なら、あの女を殺せば罵詈雑言は止まるんじゃないか? そういう結論に達したんだ」
「ふつーの思考の持ち主だったら、そんな結論にはとうてい達しないな」
その香川隊長の発言に宮山隊員が応えました。
「それだけオレたちは追い込まれてたんだ!」
入谷隊長は言葉を続けました。
「そんなとき、昨日だったな。認識ステルス機能を作動させた未確認飛行物体が大気圏に突入した。我々は慌ててスペースストーク号に乗り込んで、あとを追い駆けた。
けど・・・ 未確認飛行物体を追い駆けてるうち、オレたち3人はこんな会話を始めたんだ。
地上ではすでにテレストリアルガード本隊が対応しているはず。なら、そこにあの女がいるんじゃないか? なら、あの女を殺す絶好のチャンスになるんじゃないのか?
J1全体では謝罪派が過半数だったが、我々3人は暗殺派だったんだ・・・」
橋本隊員。
「そこで昨日認識ステルス機能を発動させたまま、女神隊員を襲ったんだな」
入谷隊長。
「まさかあの隊員服にあれほどの耐久性があったとはな・・・ 中の人に合わせて巨大化したんだから、生地の密度は低くなると思ったんだが・・・」
香川隊長。
「お前たち3人はその後何食わぬ顔でJ1に戻って、あらためてうちに来たんだな」
入谷隊長。
「ここに来るとき謝罪派に詰め寄られたよ。テレストリアルガード基地に行くんだったらちゃんと謝罪してこいと。お前たちがあの女を隠さなきゃ、この件は穏便に済んだんだ!」
「そっか」
隊長はふっと笑いました。と、その左手のサポーターが振動を始めました。
「ん?」
隊長は身近にあった固定電話に出ました。
「もしもし・・・」
と、隊長の顔色が急激に変わりました。
「はぁ~!?・・・」
その一言で会議室の空気が変わりました。隊長は一同の顔を見て、
「おい、その3人を離してやれ。釈放だってよ」
それを聞いて橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員はびっくりです。
「ええ~!?・・・」
香川隊長は宮山隊員を見て、
「ふっ、お前のじーさんの政治力ってやらを十分に見せてもらったよ」
手錠を外されてる宮山隊員は、ケラケラと笑い声をあげました。
「ふふ、そうですか。今後は十分気を付けてくださいね。あははは!~」
こうして3人は開放されました。
サブオペレーションルーム。女神隊員はテーブルのイスに座ってます。今はウィッグだけで特徴的な単眼を隠してます。髪の毛の隙間から自動翻訳機のヘッドセットが見えます。女神隊員は下を向いてます。何かを待ってるようです。
引き分けの自動ドアが開き、香川隊長が入ってきました。女神隊員はピクンと反応しました。
オペレーションルームのコンソールの前に座ってた上溝隊員も隊長に気づき、振り返りました。
「あ、隊長、どうなりました、あいつら?」
「釈放だ!」
隊長の思わぬ発言。上溝隊員は思わず驚きの声を挙げました。
「え、ええ~?・・・」




