宇宙人受難之碑 12
女神隊員は右手を高く挙げました。するとその手に剣が現れました。女神隊員は両手で剣を握り、振り上げました。男の顔面に剣を突き立てる気です。
「いいぞ、ヘルメットレディ!」
「やれーっ! やっちまえーっ!」
「宇宙人なんか、ぶち殺しちまえーっ!」
その罵声を聞いて女神隊員は、はっとして動作を止めました。あたりを見ると、いつの間にかたくさんの人々が集まってました。
彼らが発する言葉は、じょんのび家族の子どもたちが発してた言葉とは真逆な言葉。その温度差が気になってしまい、女神隊員は手を止めました。
彼女は何か疑問を持ったようです。今私がやってる行為は、テレストリアルガードの隊員として正しい行為なのか?
「宇宙人なんか斬り刻んじまえよーっ!」
その憎悪に満ちた言葉を聞いて、女神隊員は振り向き、その言葉を発した男をにらみつけました。ま、女神隊員はフルフェイスのヘルメットを被ってます。そのせいで外から眼がみえません。にらみつけたところで、あまり意味がないのですが。
女神隊員は考えました。女神隊員の今日の目的は、ヘルメットを脱いで自分の顔をさらすこと。自分の単眼をさらして、5,000の同胞の名誉を回復させることでした。
でも、こんなに憎悪に満ちたやつらに自分の素顔を見せたら、今度は自分が憎悪の対象になってしまいます。自分もこの星の人から見たら醜悪な宇宙人。素顔を晒したらどんなひどい罵声を浴びせられることか・・・
女神隊員はすべてを諦めました。すると剣が粒子単位で砕け散り、風に流されるように消失しました。さらに次の瞬間、女神隊員の姿そのものが消えてしまいました。さっきまで声援を送ってた人々はびっくりしています。
「お、おい、どこにいっちまったんだ?・・・」
強い夕陽の中、女神隊員が縮小・等身化して住宅街の路地に降り立ちました。女神隊員は今ひどい自己嫌悪に襲われてます。今日私はみんなに素顔をさらす覚悟でここに来たのに、できませんでした。やっぱ私は弱い存在なんだ・・・
女神隊員はヘルメットを脱ぎました。そしてそのヘルメットを思いきりアスファルトに叩きつけました。あらわになったその単眼は泣いてました。思いっきり泣いてました。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
突然のその言葉に女神隊員ははっとし、振り返りました。そこには5歳くらいの女の子が立ってました。女神隊員は何かを言いました。が、女の子の頭の上には?が浮いてます。そう、女神隊員は自動翻訳機がないとこの星の人とは会話できないのです。女神隊員は慌ててヘルメットを拾い上げ、被りました。
「ご、ごめんなさい!」
「お姉ちゃんはヘルメットレディ?」
「うん、そうだよ」
「うわ~ かっこいい~!」
「でも、私は宇宙人なんだ。見たでしょ。私は眼が1個しかないんだよ。
あなたは宇宙人が嫌い?」
「うん、大っ嫌い。でも、お姉ちゃんは違うよ。お姉ちゃんは私たちのために戦ってくれてるもん。お姉ちゃんは正義の宇宙人だよ!」
「あ、ありがと・・・」
女神隊員はその少女の言葉に、何か救われたような感覚を覚えました。
ここは病室のようです。どうやら女神隊員がテレストリアルガードの隊員になったとき、最初に居室として与えられた無菌室のようです。




