宇宙人受難之碑 1
遥かに伸びる国道。その中を1台のクーペタイプのクルマが走ってます。東の空には今昇ったばかりの太陽があります。今クルマはその太陽を背に走っています。
その車内。運転してるのは香川隊長。コンビニで買ってきたのか、隊長はいなり寿司をかじってます。
助手席には海老名隊員がいます。彼女は眠りこんでいます。中途半端に開いた口からよだれが垂れてます。テレストリアルガードの隊員とは思えない姿です。隊長も海老名隊員もいつもの隊員服ではなく、シャツにジーンズと、かなりラフな格好です。
後部座席には女神隊員が座ってます。女神隊員の服装はジーンズ生地のサロペット。いや、男子用のオーバーオールと言った方がいいか? これ、上溝隊員の見立てなんだとか。
いつも被ってる白い帽子は、今は座席の上にあります。ウィッグだけで特徴的な単眼を隠してました。ウィッグの隙間から自動翻訳機のヘッドセットも見えます。
女神隊員は窓の外を見てます。田んぼ、畑、川、たまーに過ぎる樹々・・・ そんな平凡な風景を楽しそうに眺めてます。
実は女神隊員がこうやって外出するのは、地球に来て今回が初めて。そのせいか、単眼に映る光景すべてが新鮮なのです。女神隊員は今、とってもわくわくドキドキしてました。
ちなみに、3人が乗ってるクルマですが、隊長の私物です。テレストリアルガードのカラーリングは施されてません。
クルマの進行方向には巨大な富士山が見えます。上半分は白い雪の富士山。早朝のせいか、それより下はとっても青く見えます。
3人が乗ったクルマが立派な家屋の敷地の中に入っていきました。どうやら農家のようですが、とてつもなく広大な敷地です。その敷地に3人が乗ったクルマが駐車しました。
クルマから3人が降りてきました。女神隊員は慌ててウィッグを直し、さらに白い帽子を被りました。それをドアミラーで確認します。海老名隊員はまだ眠り足りないのか、眼は半分寝たままです。
隊長が家屋のドアホンを押しました。すると、
「はーい!」
という声が。ドアが開き、40代くらいの女性が出てきました。
「うわ~ よく来たねぇ、お兄ちゃん!」
と言っても、この女性は隊長の実の妹ではありません。隊長の母の妹の娘なのです。つまり従妹。幼少のころ諸般の事情で10年ばかし一緒に暮らしたので、彼女は今でも隊長をお兄ちゃんと呼んでました。
ちなみに、隊長には兄弟姉妹はいません。両親と妻と娘が1人いましたが、5年前の戦争でみんな死んでしまいました。
隊長は従妹に質問しました。
「ダンナさんは?」
「畑。でも、軽トラは置いてったよ」
「あは、そっか。じゃ、借りてくぞ」
従妹はクルマの鍵を取り出し、それを隊長に渡す体勢になりました。
「はい、鍵!」
隊長はその鍵を受け取ろうとしました。が、従妹はその寸前で鍵を吊る下げた拳をさっと横に。拒否の意志表示です。隊長はびっくり。
「お、おい?」
従妹は何か悪だくみを考えてるような眼差し。女神隊員を見ました。
「その人、今をときめくヘルメットレディでしょ?」
また面倒なことを訊いてきたなあ、と隊長は思いました。とりあえず、
「違うよ」
と応えました。でも、案の定従妹は信じません。
「うそ! 顔に何か事情があってヘルメットを被ってるんでしょ、ヘルメットレディは?」




