橋本隊員奪還作戦 15(終了)
「どうした?」
突然の声に女神隊員はびっくり。で、その声がした方向を見ました。そこには隊長が立ってました。
「隊長・・・」
隊長は女神隊員の左手側に座りました。
「今日はよくやってくれたな。ありがと」
「・・・も、もうあんなむちゃな命令はしないでください」
と、女神隊員の前髪から何かが流れ出てきました。顔の中央です。鼻水? いいえ、これは涙です。ふつーの地球人だったら涙は2筋流れますが、単眼な女神隊員の涙は1筋だけなのです。
隊長はその涙を見て、一瞬神妙な面持ちに。次の瞬間、柔和な顔を見せました。
隊長は女神隊員の帽子をおもむろに取りました。そして女神隊員の右側頭部に右掌を当て、彼女の頭部を自分の胸に優しく抱き寄せました。
女神隊員の涙は止まりません。逆に増えてきました。そしてついに声を出して泣き始めてしまいました。廊下を歩く人々はこの2人を見てびっくり。でも、隊長はそのまま泣かせました。
女神隊員は生まれたときから特殊能力をくさん有してました。母星では期待の星だったのです。そのせいか、幼いときからたくさんの試練を与えられ、それを次々とクリアしてきました。
けど、今日ほどむちゃなミッションはなかったのです。ほんとうに、ほんとうに怖かったのです。ここまで我慢してきたものが、一気にあふれ出てしまったのです。
隊長は女神隊員の頭を撫でながらこう言いました。
「今日はすまなかった。ほんとうにすまなかった。こんなむちゃな命令はもう二度としないよ。誓うよ。誓う」
隊長は女神隊員の頭を抱く腕をほどきました。女神隊員は隊長の顔を見ました。ウィッグの透き間から単眼が丸見えです。
「ほら、眼が見えてるぞ」
隊長は女神隊員の頭に白い帽子を被せました。
「さあ、行こっか」
「はい」
2人は立って歩き始めました。
ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。今海老名隊員がモニターで深夜に放送してるアニメ番組の録画を見ています。突然引分けの自動ドアが開き、隊長が、
「ただいま」
と言って入ってきました。けど、海老名隊員の興味はあくまでもアニメ。隊長には振り返りもせずに、ぶっきら棒に、
「おかえりなさい」
と応えました。隊長はテレビ画面のアニメに気づき、
「おい、一緒に見るって約束だったろ」
海老名隊員はまたもやぶっきら棒に応えました。
「だって、隊長、なかなか帰ってこないんだもん」
隊長は呆れました。
「もう・・・」
隊長は卵型のテーブルに座り、海老名隊員に話しかけました。
「相変わらずお前の予知能力はすごいなあ・・・」
アニメに夢中になってる海老名隊員ですが、その状態で、
「ふ、これくらい簡単ですよ」
隊長もアニメを見始めました。今度は海老名隊員が隊長に話しかけました。
「女神さん、すごいですねぇ。上空1万メートルから飛び降りたのに、傷が1つもつかなかったなんて」
「でもなあ、あいつに泣きつかれたんだよ、病院で。怖かったんだってさ・・・」
海老名隊員はそれを聞いて、少し顔色を変えました。
「へ~ 意外だなあ。なんでもできるスーパーウーマンだと思ってたのに」
「あいつ、身体的にはオレたちの想像をはるかに超えていたのに、精神的にはまるっきり子どもだったな・・・」
「でも、与えられたミッションはクリアしたんでしょ?」
「ああ」
「じゃ、安心じゃないですか。私もあんなすごいミッションをクリアしたいなあ・・・
隊長、そろそろ私の身体を元の身体に戻してくださいよ」
けど、隊長は何も応えません。海老名隊員は応答を促すように、
「隊長!」
と、今度は強い口調で呼びかけました。
「わかってんよ」
隊長は2度目は応えてくれました。さらに言葉を続けます。
「オレからしてみりゃ、お前、今のままでも十分役に立ってるぞ。今日だって橋本のピンチをいち早く察知してくれたじゃないか」
「それじゃ応えになってませんよ。隊長、私だってメガヒューマノイドに変身すれば、あんなミッション、簡単にクリアできますよ!」
「ふっ、何回も言ってんだろ。18になるまで待ってろって」
「え~ またそれですか? そろそろ次の宇宙人が侵略に来ますよ!」
「おいおい、お前の予言じゃ、次の宇宙人襲来までまだ時間があるんじゃないか?」
「あれ? 私、そんなこと言いましたっけ?」
「言った」
海老名隊員はその言葉に反応しません。彼女の興味は、またアニメに戻ったようです。隊長もいつの間にかアニメに夢中になってました。




