橋本隊員奪還作戦 2
格納庫の中央を見ると、ヘロン号が1機駐機してます。格納庫は広く、ヘロン号が5機横に並んでもまだ余裕のある大きさなのですが、今は1機だけです。隊長はヘロン号を見上げました。
「ヘロン号だ。あんたにとっちゃ、ストーク号以上に見たくない機体だと思うが・・・」
確かに女神隊員は黙っていました。この戦闘機にうなじを撃たれ、女神隊員は死ぬ寸前まで追い込まれました。今はきっと巨大化してこの機体を踏み潰したい気分だと思います。
けど、あのとき銃爪を引いた人は橋本隊員でした。忌まわしい飛行機は目の前にありますが、それを操った男はすでにテレストリアルガードにはいません。女神隊員にとってそれは救いでした。
女神隊員はふとヘロン号の脚下を見ました。そこには目地のような線が床に走ってました。よーく見るとその線は、四角くヘロン号を囲んでました。女神隊員は隊長に質問。
「この線は?」
「リフトだよ」
「リフト?」
「この下には整備場があるんだ。そこにストーク号やヘロン号を送り届けるためのリフトだよ」
「へー、今度その整備士さんに会って、あいさつがしたいですね」
「それがな・・・ できないんだ」
「ええ?・・・」
隊長の思わぬ返答に、女神隊員は言葉を失ってしまいました。代わりに隊長が言葉を続けました。
「前にも話したが、5年前ユミル星人襲撃のとき、日本とアメリカは宇宙傭兵部隊ヴィーヴルと急遽契約して、ユミル星人を追っ払ってもらったんだ。
実はそのとき、日本政府とアメリカ政府はヴィーヴルからいくつもの技術供与を受けたんだ。その技術は地球人からみたらとてつもないオーバーテクノロジーだったんだ。いくつかの国はそのオーバーテクノロジーの開示を迫ったが、日本政府もアメリカ政府もその要求を一切無視したんだ。
でもなあ、一部の国からみたら、喉から手が出るほど欲しいオーバーテクノロジーだ。どんな強硬手段に出てくるのか、わからないんだ」
「技術者を拉致?」
「まあ、そんなとこだな。
だからストーク号の整備士もヘロン号の整備士も、人前に姿を現すことは絶対ないんだ。自分だってテレストリアルガード結成式の日以来、一度も会ったことがないんだよ。
自分たちもなんでストーク号が無音で宙に浮くのか? なんでテレポーテーションができるのか? どういう原理でビーム砲を撃ってるのか? まったくわからないんだ。
我々が携行してるレーザーガンも、ヴィーヴルのオーバーテクノロジーを元に作られてるんだ。だから万一盗まれたときは、スイッチ1つで木端微塵に爆発する仕組みになってるんだ」
この地球にはいい国と悪い国がある。それを聞いて女神隊員はとても残念に思いました。この星はまだ成熟しきってないからです。
さて、隊長ですが、さっきから女神隊員の顔をちらっ、ちらっと見ています。どうも何か疑問があるようです。女神隊員に質問してみることにしました。
「あ~ 痛くないのか、そのウィッグ? あんたの巨大な眼に入ってるようにみえるんだが?」
「あは、私の眼には瞬膜という透明なまぶたがあるから、眼に入っても特に気にならないんですよ」
「瞬膜? あんた、爬虫類だったのか?」
隊長さん、瞬膜は人間にはありませんが、他の哺乳類や鳥類にはありますよ。地球上では瞬膜のない人類の方がレアなんです。




