女神の一番長い日 20
次の瞬間男は全力で警官にタックルしました。警官の身体は無残に吹き飛ばされ、転倒。
「うぐぁっ!」
警官は腰ひもを離してしまいました。男は他の警官の手をかいくぐりながらダッシュ。突き飛ばされた警官はそれを見て、
「ふっ、バカなやつだ!」
警官は手にしてたリモコンのスイッチを押しました。するとビリビリ! 男の手錠に思いっきり電気が流れました。
「うぐぁーっ!」
男の身体はガクッと崩れ落ちました。無残にも白目をむいて泡を吹いてます。その一部始終を見ていた女神の身体に悪寒が走りました。
女神はテレストリアルガード基地の中でこの手錠をかけられていたのです。そう、女神もこのような無残な姿を晒していた可能性があるのです。あのとき手錠を解いてくれた人は、今自分の側にいる香川隊長。もしこの人がいなかったら、私はいったいどうなっていたことか?・・・
隊長が考え込んでいる女神を不思議に思い、声をかけました。
「ん、どうした?」
女神は倒れている男を見て、隊長に質問しました。
「あの人、どうなってしまうんですか?」
「さーな、オレにもわからんな。逮捕後の宇宙人はどこに行くのか、見た者は1人もいないんだ」
ここで女神は先ほどの倉見隊員のセリフを思い出しました。
「なあ、知ってるか? 日本の法律てーのはなぁ、地球人を保護するためにあるんだぜ。お前みたいな宇宙人には適用されないんだよ!」
そうです。今女神には人権がありません。日本の法律の保護下にないのです。テレストリアルガードの隊員という身分だけが、女神を法的に守ってるだけです。誰がなんと言おうと、女神はテレストリアルガードを辞めるわけにはいかないのです。
一方海老名隊員はつぶやいてます。
「もう1人の宇宙人はどこに行ったんだ?」」
その男は今必死に駆けてました。同じ地区の別の路地です。寒川隊員がこの男を追い駆けてます。
「待てーっ!」
男は角を曲がりました。が、袋小路、行き止まりでした。寒川隊員がレーザーガンを構え、1歩1歩迫ってきます。
「ふふ、残念、終了だ。おとなしくお縄についてくれよ」
「うう・・・」
男はほぞを噛みました。すると・・・ 男の身体は鈍く光り、そのシルエットはあっという間に巨大化しました。寒川隊員はそれを見て、腰を抜かしてしまいました。
「う、う・・・ うわーっ!」
夕焼けの中、街にドシン、ドシンという音が響いてます。その音を聞いて、木造家屋から次々と住民が飛び出てきました。
「なんだなんだ、地震か?」
「うぉーっ!」
その咆哮に人々が振り返りました。そして唖然。その視線は自動的に上へ行きます。そこには夕陽の逆光の中、巨大化した男のシルエットがありました。2階建て木造家屋の5倍ほどの高さがあります。
「うぉーっ!」
男は再び咆哮をあげました。その声に人々の顔は恐怖にひきつり、次の瞬間男とは正反対の方向に一目散に駆け出しました。
「うわーっ!」
「怪獣だーっ!」
「逃げろーっ!」
その人たちを追いかけるように、巨大化した男がドシン、ドシンと地響きを立てながら道を歩いて行きます。途中電線が足に絡みつき火花が散りますが、男は構わず前進して行きます。
少し離れた位置から香川隊長・海老名隊員・女神がこの巨大化した男を見ています。




