女神の一番長い日 18
寒川隊員はここは逆らわない方が得策だと判断し、ただ黙ってハンドルを握ることにしました。
上空を見ると、陽はかなり傾いてきました。ここはちょっと古い住宅街です。はるか向こうに高架橋の線路が見えてて、そこまで家がびっしりと建ち並んでいます。ちょっと背の高いビルも点々と見えます。
そんな街の中にあるマンションの工事現場。仮囲いに沿ってテレストリアルガードのセダンと4WD、それに複数のパトカーが駐まってます。仮囲いのゲートが開いていて、工事現場の監督がテレストリアルガードの隊員と警官隊に囲まれ、職質を受けてます。
「いや~ 問題の作業員はちょっと前までここにいたんですがね・・・」
それを聞いてる隊長はなぜか含み笑い。
「ふふっ、そうか」
警官隊の中の1人が隊長に話しかけました。
「すみません。最初に駆けつけた警官がここでガードマンに職質したんですが、どうやらそれを本人に聞かれてしまったようなんです・・・」
今度は寒川隊員が現場監督に質問。
「なにか写真はありませんか?」
「ええ、そう言われるかと思って、用意しておきました」
現場監督は2枚の写真を取り出しました。それには男が1人ずつ写ってます。履歴書に使うような写真です。
「この男とこの男です」
隊長と海老名隊員はそのうちの1枚の写真に注目しました。そう、その写真はテレストリアルガード基地の中で隊長と海老名隊員が見た写真の男なのです。隊長と海老名隊員は顔を見合わせ、ニヤッとしました。
工事現場の監督の説明が続いてます。
「この2人、今まで一度もしゃべったことがなかったんですよ。病気なのかなあと思ってたんですが、まさか宇宙人だったとは・・・」
「仕方がないなあ・・・ 全員で捜索するか。相手は重火器を持ってる可能性もあるから、みんな、十分気を付けてくれ!」
この隊長の命令にテレストリアルガードの隊員と警官隊の全員が応えました。
「了解!」
と、倉見隊員が横目で女神を見て、ニヤッと笑いました。何かよからぬ企みが頭の中に浮かんだようです。
隊長の再びの号令。
「じゃ、みんな、行くぞ!」
全員が応えます。
「おーっ!」
テレストリアルガードの隊員たちと警官隊が散って行きました。隊長も海老名隊員を連れて捜索に出ようとしましたが、先ほどの警官に呼び止められました。
「あの~・・・」
「ん?」
警官は警官隊とともに駆けて行く女神を見て、
「あの人はなんでヘルメットを被ってるんですか?」
「ああ、彼女は5年前の戦争で顔を潰されててねぇ・・・」
「ああ、なるほど。かわいそうに・・・」
海老名隊員はそれを聞いて、うまいこと言うなあと、関心したようです。
狭い路地が続く街並み。パトカーがサイレンを鳴らしながら行き交ってます。さらに狭い道では、警官隊があたりを見回しながら小走りで移動してます。その最後尾に女神がいます。そこに突然、
「おい!」
呼び止める声。女神ははっとして歩みを止めました。女神が振り返ると、そこには倉見隊員が立ってました。その手にはレーザーガンが握られています。
「お前、何様のつもりだ!?」
これを聞いて女神はこう思いました。
「ああ、もう来たか」
倉見隊員の怒声が続きます。
「お前、テレストリアルガード辞めろ! お前なんかより橋本さんの方がずーっとずーっと使えるんだよ! テレストリアルガードは橋本さんが必要なんだよ!」




