女神の一番長い日 12
ベテランの隊員は再び横目で宇宙人をにらんで、
「だいたい隊長はこいつに大甘ですよ! 隊長の家族も宇宙人に殺されたんでしょ!?」
「何を言うかと思えば・・・ オレの家族を殺した宇宙人は、一つ眼じゃなかったよ!」
ベテランの隊員はさらに語気を荒げて反論します。
「そんなの、関係ないでしょ! 宇宙人は宇宙人でしょ!」
「なんだよ、そりゃ? 屁理屈ばっかり並べやがってなぁ!
そんなにオレの云うことが聞けなっていうのなら、お前、テレストリアルガード辞めろ! はっきり言って不愉快なんだよ、お前は!」
その一言に残りの2人の隊員も反応してしまいました。
「た、隊長?・・・」
隊長の怒声が続きます。
「オレは総理大臣からテレストリアルガード作戦部門の隊長という重責を任せられてるんだ。オレの命令は絶対なんだよ。オレの命令が聞けないっていうのなら、とっとと辞めちまえよ!」
「ああ、辞めますよ! 辞めりゃいいんだろ!」
ベテランの隊員はついにブチ切れてしまいました。そしてそのままドアに向かいました。本当に出て行くつもりです。それを見てヘロン号の若手の隊員が慌てました。
「は、橋本さん、本当に辞める気なんですか?」
しかし、「橋本さん」は無言のままドアに向かってます。その顔は怒りで真っ赤になってます。ヘロン号の若手の隊員はさらに慌てました。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよーっ!」
「橋本さん」はドアを開けると、吐き捨てました。
「ケッ! やってられるか、こんなとこっ!」
ガシャーン! ドアが激しく閉まりました。今度はたった今「橋本さん」と言ってた若手の隊員が、隊長に喰ってかかりました。
「隊長、いったい何考えてるんですか!? 橋本さんはうちのエースですよ! 射撃は百発百中だし、ヘロン号のコントロールはすごいし! 今こんな人はほかにいませんよ!」
そして1つ眼の宇宙人を指差して、
「隊長はこの宇宙人と橋本さんと、どっちが大切なんですか?」
「両方とも大事だ。ま、去る者は追わずだ。今はそこにいる宇宙人の方がずーっと大事だな!」
バーン! 若手隊員は眼の前にあったテーブルを思いっきり両手で叩きました。
「ふざけんなよーっ!」
ストーク号の一般の隊員はその勢いに身を縮めてしまいました。そしてちょっとの静寂。それを停止させるように、隊長は静かに口を開きました。
「お前も辞めるか?」
再びの静寂。と、今度はたった今語気を荒げた隊員がぽつりと発言しました。
「・・・いいえ」
「そっか」
隊長はスマホを取り出し、それに話しかけました。
「おい、ちょっと来てくれないか」
しばらくしてドアがノックされる音と、
「上溝です!」
の声が。
「入れ」
と隊長が言うと、ドアが開き、通信員をやってた女性隊員が入ってきました。
「失礼します!」
「よーし、これで全員揃ったな!」
ここで女性隊員が何か異変に気づいたようです。周りを見渡して、
「あの~ 橋本さんは?」
隊長が応えます。
「辞めた」
「ええ!?」
「諸般の事情てやつだ」
女性隊員はちょっと納得してないようです。隊長の発言が続きます。
「さ~て、新規隊員の紹介だ」
隊長は宇宙人を見て、
「名前は・・・ あ、まだ名前も訊いてなかったな・・・ じゃ、こっちから先にやるか」
隊長はさっき喰ってかかった隊員を見て、
「まず、お前から」
「え?・・・」
「名前だよ。自己紹介!」
隊員は露骨に嫌な顔を見せ、ぶっきら棒に発言しました。
「倉見だ」




