掲示板でブラック労働を否定するオタクに、課金の代わりに株式投資を勧めるエッセイ。
※2020/09/07追記 今作はWHOがゲーム依存を依存症だと認定したという内容の動画中に20時間ゲームをする青年の話があり、彼が長時間のゲームによって生活(睡眠や学業、職業や家族・社会生活など)に支障が出ている状態である点に対し、ある方がコメント欄で「ブラック労働の方がマシ」という意見を述べ、それによって反対意見を持つ方々の一方的な叩きに対し疑問を感じたので書きました。
動画の趣旨であるゲーム依存に関してはWHO ICD第11版(ICD-11)ゲーム障害(Gaming disorder)(ICD11コード:6C51)を参考にしていただければと思いますが、内容をざっくりと説明すると男女年齢を問わず、金銭的な余裕などは一切配慮されず、ゲームによって当人が持つ社会性を失う行動や、重要な機能領域に重大な障害をもたらす危険性に対しての基準であり、他の依存症(アルコールや薬物、ギャンブル依存など)同様に財力があるからOKという事は一切ないという事を念頭の上、読み進めてくださるようお勧めいたします。
最近とある場所でゲーム依存、特にネットゲームの依存について語る動画を見たのです。内容はゲーム経験者やプロゲーマーなどの意見もあり、ある程度公平な内容でしたので納得できるものだったのですけど、そちらのコメント欄で語られていたコメントは理解に苦しむものが多く散見されました。
その内容というのが「誰かのために働いているのなら、ゲームやっているよりブラック労働の方がまし」という趣旨の意見を書いた方がいて、「マシ」という発言者の言い分はゲーム依存の基準を考え、ゲームしかできなくなっている依存者より、かろうじでも社会性を維持しているブラック労働者の方が「マシ」で、ブラック労働を100%素晴らしいと言っている趣旨ではないと思えるのですが、叩くような形で多くの方が「ゲーム依存を批判する前にブラック企業を批判しろ。ブラックで20時間労働する位なら、ゲームを20時間している方が健全だし、課金などで経済を回しているから世の中のためになる」という、ほぼ一方的な攻撃であったように見えました。
この意見がネットという環境で気分と声が大きくなったイキりオタクの方が、噛みつきやすい突っ込み処のある反対意見を見つけ叫んでいるのではなく、いわゆる普通のオタク趣味の方も、やりがい搾取の上で生まれたゲームを楽しむ事は否定せず、ブラック企業やブラックな労働環境に組み込まれた弱者だけを否定することが常識的な考え方と捉えるなら、それこそブラック企業の温床になっているのではないか?と、疑問を感じてしまうのです。
確かにブラック労働といわれる長時間労働や無賃労働は、多くの企業や個人に損害を生む資本主義の悪癖だと私も思いますし、そうした労働が無い世界は理想だと私も感じていますが、同時にゲーム開発業界やアニメーション・声優関連など、いわゆるオタク産業も志望者が供給過多で、ごく一部を除き低賃金で運営されている所が殆どであり、長時間労働ややりがい搾取が横行して買い手市場を形成している事はニュースなどでもよく語られていますから、ブラック労働を嫌う方ならば耳にされることは多い筈で、特にネトゲ・ソシャゲ業界というのは版権元が安く開発や運営をしてくれる企業を探しますので、長時間労働低賃金のブラックの温床になっており、ニュースや業界人のSNS上の暴露などでご存じの方も多いと思います。
こうした現在のゲーム業界を支えているのは、いわゆるオタク的経済活動でガチャと呼ばれるようなものや、ゲームを拡張するダウンロードコンテンツなど、いわゆるゲーム内課金と呼ばれるものがメインですが、皆様が使った資金の多くは全体経済と同様に殆どが上流に留まり続け、上から下に滴り落ちるというトリクルダウン理論は発生せずにいるのでしょうから、まさにオタクいう「経済を回している」という言葉は、ブラックな労働環境で安価な労働力により多くの企業が不当な利益を得るゾンビ的経済の一つで、昨今の日本経済の縮図ではないかと思うのです。
彼らは事実に目を向けずブラック企業に務める方を馬鹿にする一方で、やりがい搾取でブラック企業が作り上げたオタク系コンテンツを褒め称え、経済を回しているという免罪符を掲げ、萌えというエロコンテンツやレアリティなどの言葉で射幸心を煽るガチャに安易な享楽を求めて溺れ、自らの資産や貴重な時間をすり減らし、気に入らないと直ぐにSNSやレビューサイト等で俺は消費者様だと大暴れを始め、クリエイター達が仕事をしていない、監督は無能などと誹謗中傷合戦を始める状況を見ていると、オタクの皆さんが嫌いな老害と呼ばれる人たちと何が違うの?と感じ、こういった考えをリアルを語っても「俺は嫌な思いはしてないし、人様の趣味を否定する黒井は最低な奴だ」と罵られますが、それでも私は無意識に誰もが搾取され、無駄に傷つく悲しい世界を何とかしようと思うので言いたい。
そうした現状を作っているのは、安易な快楽を求めてコンテンツを次々に大量消費するオタク側の問題ではないか?もっと自分が好きなオタクコンテンツを大事にするために、ブラックな経営をする経営陣の餌にしかならない安易な課金よりも、より発言権のある株式投資を行い、株式総会などで投資家として経営陣に向けてクリエイターの地位向上を訴え、やりがい搾取と長時間労働による奴隷制度から、クリエイターがきちんと人間的な生活できる健全な社会を目指す方向へ舵を取るべきではないか、そうして作られたクリエイターやプログラマーなどの労働者が搾取されない優しい環境で作られたコンテンツなら、オタク達にとって理想である『ブラック労働で作られていない素晴らしい作品』になるのではないかと感じるのです。※具体的な方法や金額を後書きに追記しました。
それと同時に思う事は、ゲームを始めとしたオタク系産業の煌びやかで楽しそうな部分だけではなく、暗く悲惨な闇の部分にもしっかりとフォーカスを当て、憧れで安易にオタク系クリエイターを目指す若者たちが安価な使い捨ての労働力になってしまう現状を考え、オタク側が社会問題として警鐘をきちんと鳴らしていくのも大事な自浄作用であると私は考えます。
もちろんそれでもクリエイターになりたいというのなら、個人の夢自体を否定することもできませんが、そうした安価で粗悪な労働環境によって困窮し転職活動もままならなくなる状況を知っている身からすれば、体や精神を壊して手遅れになる前に夢を諦めることも、夢を追いかける事と同じように立派な選択であると思います。
もしあなたがそうした環境に置かれているのであれば、信頼できるご家族やご友人がいるのであれば、一度ご自身の置かれた環境をきちんと相談し、生活を立て直すためにどうするべきか考えて欲しいし、そうでないのでしたら行政の行う就労支援や、就労・生活困窮を救うNPOなどもありますので、一度恥を忍んで誰かに相談をしてほしいと思います。
夢を追い続けるのも才能かもしれませませんが、そこにあるのがブラック労働による搾取という悪夢なのでしたら、夢は夢としてきちんと終わりを見つけ、ご自身の人生のために新しい生活を始めることも立派な決断であり、引き際を理解するという素晴らしい才能ではないか、そう私は考えずにはいられないのです。
そしてもし今作を読んでご自身のゲーム依存を疑われるような方は、お一人で解決が難しいと考えるのでしたらご家族やご友人に相談したり、一度専門家へと足を運んでみては如何ではないかとは思いますが、本作はそうした問題に苦しむ方々に『ゲームを止めろ』とか『こうしろ』と押し付ける内容ではなく、あくまでこういう道もあるのかと思う方や、これからクリエイターになりたい方へ向けたメッセージであると告げておきたいと思います。
ここまで小難しい事を色々と語って思う事は、やはりなろうをはじめとした趣味の作品は素晴らしい!という事ですね。作者が表現したいものを公共の福祉や良識を守りつつ、自ら望んだ作品を商業という檻の外で自由に書き上げ、作者も作品も応援しくださる読者とともに成長し、参加する全ての人でおもしろいを形にできる世界。
こうした取り組みが健全に成長してゆく世界なら、ブラック労働で作られたコンテンツのない素晴らしい世界になるんじゃないかと思うので、皆様のなろうライフが一層素晴らしいものになることを私は望まずにいられません。
※2020/09/06追記 こうした方法は石油王しかできないというご意見をいただきましたので、具体的な方法を追記しました。
まず石油王の様に一人で大きな株を買わずとも、通常1単元株(百株)で株主総会に参加する為の議決権を手に入れる事は可能です。例として鬼滅の刃のアニメやFGOなどのゲームを運営しているアニプレックスという会社を上げますと、この企業はソニーミュージックエンターテインメントが資本金100%の親会社、その親会社ソニーミュージックエンターテインメントもソニー100%子会社なので、結果としてソニーの株を買う事になります。
ソニーは現在は一株九千円前後で推移していますので、単元株が百株ですから約九十万円前後で意見を伝える事が可能で、例えば月額一万程度のゲーム課金をされる方でしたら、課金の代わりに現在の相場でも約八年程度毎月購入すれば権利を手に入れられますし、仮に現在の株価ではなく落ち着いている時期を狙うのでしたらもっと早くなります。さらに早くと仰るのでしたら毎月貯金をして安い時に買ったり、貯金代わりに毎月の買い増しを増やしていただくのも手だと思います。
問題点を挙げますと投資ですので元本の保証はありませんから、経営状況によって購入した金額より下がる可能性はありますが、投資というのはガチャの様な不可逆ではありませんので、将来気持ちが変われば株式売却も可能ですし、経営危機でもなければ1単元を購入すれば株式配当という形で毎年いくらか戻ってくる上、株主優待もあるのでメリットはあると思います。そうして一単元を手に入れて、企業が定める基準日(大体3月)まで株を持っていますと、貴方の下に招集通知が届きますので、晴れて個人株主として大手を振って総会に行けます。
この株主総会というのは議決権行使だけの場ではなく、会社の業績や経営の状況や質疑応答、全てが終わった後の懇談会など全体はかなりのボリュームがあります。その中で株主の質疑応答の時間は個人株主にとって関心事を語るチャンス、会社にとって質疑の内容が総会の花と呼ばれる位に重要ですから、議題に対してかなり自由に質問をすることが可能であり、過去の様々な企業の株式総会の質疑応答を例に挙げますと、『代表者ばかり質問に応えるが話したがりなのですか』とユーモアたっぷりに質問する、『欲しい人気商品が手に入れにくいから増産して欲しい』と品薄を訴える、『グループ内の働き方改革の進捗はどうか』と労働環境を確認したり、『どこかの事業所のマナーが悪いから企業のイメージが下がる』と身近な問題を提言したり、『子会社関連の不祥事に言及する』など、様々な意見を持つ個人投資家が質問する事で盛り上がり、場合によって鋭い質問者の発言が他の投資家の賛同を得て拍手が沸き上がり、それを見た経営側が唸る場面もよく見られるものです。
こうした株主総会で行われた質疑応答は、企業のHPで議事録の一部として一般にも公開しますから、経営陣も株主や世間の信用を裏切らないよう迂闊な事を言えない重要な発言となりますが、参加者・質問者が多い場合は必ず質問者に選ばれるという事もありませんし、時間が押して質問の打ち切りもありますので運の要素もあります。
もしそういった点が心配なのでしたら、同じ志を持つ株主を集め集団で事前質問書を送り意見の正当性を担保したり、場合によっては株主グループで抗議をしてマスコミに訴えたりSNSなどで発信する方法もありますから、こうした方法を駆使すれば貴方が石油王でなくとも経営陣に変化を促すことは可能であると考えられますし、実際ソニーも過去に株主の提案したNHKが映らないテレビを作ったりしていますので、会社のオーナーである株主の発言権は私たちが思っている以上の効果があるのかもしれません。