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96 エピローグ


 星祭の夜、王宮の神殿が破壊された事件は、国王が、儀式の際に魔力を制御できなかったため起きたということになった。

 国民は、国王の魔力に畏怖し、国内の犯罪発生率が下がったそうだ。

 神殿は今、改築工事が進められ、その費用も、国王の個人の財産から払うという。

 国王が、事件の全ての罪を被ってくれたのだ。


 でも、それは表向きで、マルクスやリヒト達は、とりあえず、王宮の牢屋に入れられていた。

 当分ここで反省しろ言われたと、会いに行った僕に、呑気に話していた。

 牢屋暮らしも別に気にしていないみたいだった。

 牢屋には入っているが、牢番がいるわけでも、牢屋に鍵がかかっているわけでもない。

 今、王宮の片隅では、マルスク達が暮らすための住居とするため、古い建物を改築している。それができるまでの仮の部屋としての、牢屋暮らしらしい。

 ただ、昼間は、王族としての礼儀作法を勉強させられているようで、それのほうが嫌だと言っていた。

 そして、リヒトは水不足の村に雨を降らしに行ったり、マルクスは石や巨木を雷で破壊するために駆り出されたりしていて、国王に魔力をうまいこと利用されている。

 二人に、逃げ出す気がないのか聞いたけれど、黒船を貰うためだから、仕方ないと言っていた。


 マルクス達の家が整備されたら、マルクスとリヒトを王族として公表すると、国王は言っているらしい。

 元海賊でニセモノ大富豪商人から、王族の一員になってしまったマルクスとリヒトは、僕と対等の身分になるらしい。


 そして、神殿を破壊した真犯人のニーナは、毎日のように王宮に通わされている。

 どうやら、国王は本気でニーナを将来の国王候補に考えているようで、礼儀作法から話方、語学、その他いろいろとビシバシ教育されている。

 もちろん大人しく従うニーナじゃないから、王宮は、たまに壁が吹っ飛んでいるらしい。

 国王の魔力で修復しているとマリーが言っていた。

 初めは、ニーナが逃げ出さないようにニーナを包囲する魔法使い達も備えられていたが、とてもニーナは押さえつけられなかったらしい。

 結局、うちのマリーがいつもニーナに付き添っている。他の魔法使いの言うことはてんで聞かないニーナだが、マリーにはまだ、大人しく従うため、マリーは王宮で救世主扱いだ。


 で、僕はと言うと、もう、それはそれは酷い目にあっている。

 父さんは、意地悪だということを僕は身に染みている。僕は怒らせてはいけない人を怒らせてしまったらしい。

 父さんのいうことを散々無視して外出禁止中に脱走を企てたうえに、王族の緊急避難路を勝手に使って王宮に侵入した僕に、父さんが考えた罰は、外出禁止なんて可愛いものじゃなかった。

 何と、父さんは、海賊モルガン一家の手下達が、王の私兵になるための訓練に、僕も放り込んだのだ!

 「ニーナを守りたければ、魔力か剣術のどちらか必要だと君にもわかるよね? 剣術なら努力でなんとかなるだろう」って、父さん、それはあんまりだ!

 僕の運動神経がどれだけ人並みはずれて鈍いか知っているくせに……。

 だから、僕も、毎日のようにニーナと一緒に王宮に通い、毎日ボロボロになって家に帰る。

 散々だよ、もう……。


 でも、まあ、毎日王宮に行くことにはいいこともある。

アンリやルノーに会えるからね。

 僕らは、あいかわらず仲良くしていて、こっそり王宮探検も続けている。

 黒船以外にも、この王宮にはまだまだ秘密がありそうだって、ニーナが言うからね。


 ニーナと過ごす毎日は、刺激的で退屈している暇がない。

 ニーナは相変わらずお菓子が大好きだし、屋根の上も大好きだし、次に何をやらかすかわかったもんじゃない。

 ニーナは毎日楽しそうな姿を見るだけで、僕には力が湧いてくる。


 僕とニーナは時々、海の話をする。

 僕は海に憧れる。

 ニーナが見ていた景色を見てみたい。

 そして、二人でもっと広い世界を旅したい。

 いつか二人で海に行こうと、僕らは誓いをかわした。

 そのときのニーナの笑顔があまりに素敵だったから、僕は、どんな困難にも立ち向かえる魔法にかけられた。


                           <おしまい>



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