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90 潜入3


「こいつは、もしもの時、ニーナに言うことを聞かせるための、餌にできる」

 リヒトが、僕に顔を近づけて、意地悪そうに言う。

「そんな……。リヒトさん、酷い」

 ニーナを助けにきたつもりが、ニーナの足を引っ張ってしまったら、僕にはなんの意味もない。

 そんな無様なことはしたくない。

 僕の反応に、リヒトは意地悪そうにニヤける。

「酷い? お前、俺らの計画を邪魔しに来たんだろ? その俺らに捕まったんだから酷い目に合うのは当たり前だよな」

 ぐうの音も出ない僕は、リヒトを睨むしかない。  

「いい顔だ。この状況で、怯えないのは、なかなかのもんだぜ。そうだな、もうちょっと怖がらせてやったほうがいいかな」

 リヒトは隣にいる大男に楽しそうに言う。

「おい、こいつが騒がないように布噛ませとけ。で、ちょっと手荒に運んでやれ、死なさない程度にな」

「オーケー」

 大柄の男は楽しそうな声で返事をした。

 にやにやする大男から逃げようと、座ったまま後ろにずりずり下がって抵抗してみる。

「い、嫌ですよ、僕はここに置いて行ってもらって、十分です、自分で何とかしま…うっ」

 乱暴に、口に布を突っ込まれた。布は頭の後ろに縛り止められたようだ。

 襟首を捕まれて、乱暴に大男の肩に担ぎ上げられた。


 男はそのまま走り出す。僕の手は、後ろ手に縛られているから、落ちたら頭からまっ逆さまだ。

 大男だから、結構な高さがある。大男が走っているから、僕が見下ろす地面は、飛び跳ねて見える。

 男は僕の足を掴んでいるだけで、走りながら時々手を離すから、落ちそうになる。僕は声にならない悲鳴を上げた。

 

 周りからは。稲光と轟音が続く。人々の悲鳴が続いている。

 何本かの木に落雷したようだ。「火を消せっ」と叫ぶ声もする。

 混乱している様子は伝わる。でも今の僕には、周りを見ている余裕はない。

 

 突然、大男が僕の足を掴む手を話した。落ちるっ、と身構えたが、落ちない。

 ほっとした次の瞬間、僕は、大男の肩から地面に下ろされた。建物の壁がある。

 ここは、神殿だと思い当たる。周りを見渡していると、ごつんとげんこつされた。

 痛いと思って動きを止めると、僕の胴体にロープが巻かれた。

 なにするんだ、と大男を睨む。


「大人しくしてないと、落ちるぞ、坊主」

 大男が、にやりとする。大男が片手を上げると、僕の体は地面から離れ始めた。

 後ろ手に縛られたまま胴体に食い込んだロープの部分が引き上げられている。

 吊るされてる? 胴体や腕にロープが食い込んで痛い。ぐんぐんと地面が遠くなる。落ちたら死ぬ高さに引っ張りあげられていく。

 僕は、血の気が引く。

 呆然と下をみる僕の横を、大男がロープを手に、するすると壁を上ってきた。僕の高さまでくる。

「いい子だな」

 大男はそういって、僕の体をとんと突いた。体がブラブラと揺れる。見えている地面も揺れる。数メートル先にある地面だ。

 お、落ちる! 僕は、声にならない悲鳴をあげる。

 揺れが治まると、僕は大男を睨む。もう、涙目だけど。

 大男は、愉快そうに笑ってまたぼくを突いた。 助けて!

 そうして、何度か揺らされなから引き上げられて、僕は、建物の中に入れられ、床に転がされた。

 ほっとする。地面が近いって素晴らしい。


 ああ、でも、ニーナを助けに来たはずが、捕らえられて、縛り上げられて、吊るされて、何だか僕って惨めすぎないか?

 ……いやいや、めげてる場合じゃない。

 周りを見渡す。ここは、神殿の中だ。


 ごおっと強い風の音がした。窓の外からだ。顔を上げると、窓の外は強い風が吹きすさんでいた。風に取り巻かれている?

 建物の向こうの方て、こちらに近づこうとして風に飛ばされそうになっている人々が見える。兵隊みたいだ。


 

 神殿の中に目を移す。リヒトの背中を見つけた。立ったまま下を見下ろしている。ここは、神殿の天井に近い、窓際の通路だ。リヒトを含め10人程度が並んでいる。大男もいる。みんな僕に背中を向けて下を見ていた。

 何が起きているのか。

 確か、この儀式中は、神殿のなかは王族と、少しの護衛しかいないはず。

 ぼくは、体を起こして下を見る。

 国王やアンリを含んだ王族が、祭壇の前に集まっていた。それに対面して、マルクスが剣を担いで立っている。

 そのとなりには、黒いマントを着た小さな人がいた。杖を構えている。


 たぶん、あれは、ニーナだ。


 大変だ、もう、ニーナ達は国王に刃を向けてしまっている。

 でも、黒いマント姿で顔が隠れているから、ニーナだとバレていないはずだ。

 まだ、間に合う。

 さあ、これから、挽回だ。




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