84 ニセモノの館2
「お前、いつからここにいた?」
ふいに思い付いたように、男の一人が声を上げた。血相が変わる。
「お前、俺らの話を聞いたのか?」
話って王宮とか国王とか言ってたやつのことだろうか。血相が変わるってことは、聞いては不味かったんだな。
「話って、何のことですか」と、知らないふりをしてみる。
「やっぱり聞いてたんだな!」
「知りません。それより、ちょっと、離してください。僕は名乗ったではありませんか。ニーナに会わせてください。」
僕は相手を見据える。相手の顔つきが変わった。怒ったみたいだ。
「おい、ガンツ、こいつは俺らの計画を聞いてたみたいだ。生かしちゃおけねえぜ。」
男は僕の後ろの大男に向かって声を荒げる。
ちょっと意味がわからない。生かしちゃおけないって、何?
「計画って、お前ら飲みながら、外で話してたのか」
「い、いや、ちょっと、旨そうな肉がてに入ったから、前祝いと思って…」
「てめぇらはバカかっ」
地響きがしそうな声で東葛されて、僕を囲む男たちが縮み上がった。
僕もビックリして、男をポカンと見上げる。
「すみません、ガンツ、でも、誰かが来るなんて思わねぇじゃないですか!」
「お頭には報告しておく」
低い声で大男が言うと、男たちが泣きそうな顔になる。
「そのガキ始末しちまえは、分かりませんて。この辺に埋めてしまいましょう」
非常に身の危険を感じる。
どうやって逃げよう。キョロキョロと見回す。
と、僕の襟がぐっと引かれた。僕はよろけそうになり、背中が大男にぶつかる。
「ダメだ。今思い出したが、アレクシスとは、お嬢がお世話になった公爵家の子どもだ。手を出したことがお嬢に知れたら、殺されるぞ、お前」
ひっと言う声を出して、さっきから僕を睨んでいた男が、僕を恐ろしいもののように見る。
ピンチなのは僕のほうだ。
「そのガキ、どうしましょう、ガンツ」
「そうだな、もうすぐリヒトが帰ってくる。お嬢も一緒だ。ひとまず、このガキは小屋に隠しておくか。どうせ明日の夜が過ぎれば俺らもここから消える。このガキも運が良ければ誰かに見つけてもらえて、死なさずにすむだろう、そしたらお嬢にも恨まれねぇし。」
「そうですね、それがいい」
男たちは急にご機嫌になった。
「ひとまず縛っておきますか、縄を持ってきます」
男が一人、駆け出していった。小屋の方へ向かう。
僕は、周りの視線が、走り出した男に移った瞬間に、僕の後ろにいる大男の足を踏みつけ、上着を脱いだ。
掴まれていた襟が外れる。身を低くして、地面を蹴って駆け出す。
「おいっ」
男の声が背中から聞こえた。
必死に走る。
でも、すぐにまた、服の背中を掴まれた。僕は、自分の足の遅さを呪った。
「こら、ガキ、暴れるな」
僕の背中を捉えた男は、僕の腕を掴んで高く持ち上げる。うでが締め付けられて、痛い。
「離してくださいっ」
力一杯の抵抗を試みるが、体が持ち上げられて行き、足がつかなくなった。悔しい。
「たっだいまぁ」
突然、明るい声聞こえた。ニーナの声だ。
「ニーナ!」
僕は叫んだ。
がしゃん、と何かが割れる音がした。
走る足音が聴こえて、僕を持ち上げている男が、動いたため、僕はニーナがこちらに走ってくるのが見えた。
ニーナと目が合う。
「あ、アレク…」
ニーナが、僕を見て絶句した。愕然と目を見開いている。
そして、ニーナは、ゆっくり下を向いた。
腕を掴まれて持ち上げられているから、今の僕はカッコ悪いよね、1週間ぶりに会うのに…。
でも、ニーナと知り合いだと確認できたのだから、早く腕を離してほしい。痛いし。
「おーまーえー、アレクに何をしている…」
ニーナが、下を向きながら、ふるふる震えている。ニーナらしくない、低い声だ。
ニーナの低い声に驚いたのか、「ひっ」と声がして、男が僕の腕を離した。
ドサッと僕は地面に落ちて尻餅をつく。助かった。
「ふざけるなっ」
ニーナのどすの聞いた声が響いたかと思った瞬間に、ごおっと風が吹いて、さっき僕を掴んでいた男が、吹っ飛ばされた。男は木に背中から叩きつけられる。
「お前らも、アレクに何かしたのか」
人を見下すような口調で、僕を囲んでいた男たちを見据える。
いつものニーナの声じゃない。ニーナは、目が座っていた。
「どうなんだ、言ってみろっ」
ニーナが手を振った。
ごおっと音がして、男たちの後ろにあった小屋が、バキバキバキッとすごい音をたてて、半分、吹き飛んだ。




