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83 ニセモノの館1


 ニーナに会いたかった。

 王宮から帰る時、明後日、遊びにいくよと約束していた。約束が守れず、1週間が経ってしまった。


 王宮から帰ったその日、父さんから1週間外出禁止を言い渡された。僕が王宮でちょっと問題を起こしたせいだ。

 僕は約束があるから、一度ニーナに会って話したいと訴えたが、それすら許してもらえなかった。


 僕は、外出禁止なんか無視して、家をそっと抜け出してニーナに会いに行こうと画策したけれど、これがすぐに見破られて、捕まった。昼間や夕方はもちろん、早朝も夜中もダメだった。

 この1週間で、うちには、父さんやマリー以外にも魔力を持つ人間が数人いることに、僕は気づいた。複数いる魔法使いの目を潜り抜けるのは、僕には無理だった。ヤツらは結界を使うから。


 5回ほど脱出に失敗した後、あんまり言うことを聞かないと、もと地下牢の物置を地下牢に戻して閉じ込めると脅された。別に閉じ込めたければ閉じ込めればいいと僕は腹を括ったけれど、イネスに、1週間くらいは大人しくしてなさいと泣きながら諭され、イネスが泣くのは困るから、しぶしぶ言うことを聞いて、週の後半はじっとしていた。父さんとは口論する以外に、口を聞いていない。フリシアのことを聞きたかったけれど。


 明日は、星祭がある。ニーナの予定が空いていれば、一緒に祭りに出掛けたいとも思っていた。

 ニーナ兄妹がルナール家として所有した屋敷はシモン先生の家に近く、僕の家から歩いて行ける距離だ。

 僕は夕食後、自宅を抜け出す。家の誰にも捕まらなかった。外出禁止が解けたんだ、やった!


 このところ日が長くなっているから、夕食後でも、まだ明るかった。

 ニーナの屋敷につく頃には、一番星が見えてきていた。

 夜になる直前、薄明るい。屋敷の正面玄関はノックをしても反応がない。

 誰もいないのかと思いつつも、ニーナなら、庭にいるかもと、庭の方へ行ってみることにした。


 庭に行くと、小さな小屋があり、その脇に数人の人々がいる。

 焚き火をして、肉か何か焼いているようで、香ばしい香りがしてきた。

 僕はその人たちにニーナの居場所を訪ねようと、足を向けた。

 すると、風にのって会話が聞こえてきた。


「いよいよ、明日だからな。やっとお宝にありつける、夜まで待てねぇかも」

「王宮に忍び込むなんざ、派手なことができるのは痺れるねぇ」

「まあな、場合によっちゃあ、国王ともご対面だ。俺らみたいなやつが、国王に一泡ふかせるんだぜ! 式典の時間が待ち遠しいぜ!」

「クロフネ以外にもお宝があったら、いただいてきちまおうか」

 なんか口調が荒い人たちだけと、何の話をしているんだろう。

 王宮とか国王とか、お宝をいただくとか…、芝居の練習だろうか。

 

 焚き火をする人々に近づくと、その人たちの風体があまり品のよいものではないことに気づいた。

 大富豪のルナール家の使用人なら、それなりの衣服を身に纏っているはずだが、焚き火をする人たちは、薄汚れたシャツにズボン。だらしなく着崩している風でもあり、前に街で見たゴロツキのようだった。

 僕は嫌な感じがして、足を止めた。


 家を間違えたのだろうか。ニーナの知り合いとは思えない。ルナール家の使用人にも見えない。

 引き換えそうと思い、ゆっくり後ろに下がる。


「なんだ、お前?」

 突然、自分の後ろから聞こえた声に「わっ」といっても飛び上がった。

 見ると、大男がいて、僕を見下ろしている。気配に気がつかなかった。足音なんてしてなかった。

「おい、こいつ、なんだか知ってるか?」

 僕は襟を掴まれた。大男が、焚き火をする人々に話しかける。

 男たちが僕の方へやって来た。

 5人ほどいた。僕を囲む。なんか嫌な雰囲気。酒臭い。焚き火を囲んで宴会をしていたのだろうか。


「なんだか身なりのいい坊主だな。どっかの貴族の子どもみたいだ。」

「ばかか、貴族の子どもが一人でこんなところうろうろするかよ、馬車にのってお供を連れてしか出歩かねぇんだぜ、あいつらは」

 違いねぇ、がはは、と笑う。

 どうしよう、その貴族ではあるんですけど…。言いにくい。襟を掴まれているから、身動きも取れない。


「と、突然お邪魔して申し訳ありません。ニーナさんは、ご在宅でしょうか」

 襟を掴まれたままだと格好がつかないけど、挨拶がまだだったと、思い当たった。

「ニーナさん? お嬢の知り合いか?」

 男たちの視線が僕に集まる。オジョウ、ってなんだ?


「ニーナさんと約束があって来ました。ベルを鳴らしたのですが、どなたも出られないので、黙ってこちらに入り込んでしまい、失礼いたしました。」

「ガキの癖に妙に丁寧だなお前。しかも、俺らに囲まれて、怖くねぇのか?」

 目付きの悪い一人が僕の顔に近づく。酒臭いですよ、おじさん。


「アレクシスと申します。ニーナさんに、お取り継ぎいただきたいのですが。」

「アレクシス…、どっかで聞いたな…」

 僕の襟を掴んでいる大男から声がする。

 名乗ったのだし、いい加減、離してほしい。



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