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80 国王1


「今日の国王とのお茶会って、中止になるってことはないのかなぁ、マリーどう思う?」

「中止というお話は伺ってません、少し時間が遅れるようですが」

「王子達だってお疲れだろうにね。僕らも、もう、メンタル的に無理だよね」

「そうですね、坊っちゃま。私はしばらく一人になりたいです」

「僕もだよ」

 僕とマリーは、オスカー先生にめちゃくちゃ怒られて、国王のお茶会の時間までは二人とも僕の部屋で反省しているようにと言い渡されていた。部屋から勝手に出ないように、イネスが僕らを見張ってる。

 一昨日の夜、王族の緊急避難路を探検してきた話は、オスカー先生を激怒させるには十分だった。僕らは、王宮のタブーに触れた。二日連続で。マリーが絶対喋っちゃダメだって言ったくせに、オスカー先生の前に二人で並んだ時、口を割ったのはマリーだった。


 イネスは、たまに目が合うとが怖い顔で睨んでくるくせに何も言わない。王宮ではお説教をしないという約束を守ってくれているらしい。つまり、家に帰ったら、どうなるか……。父さんにも叱られるのは確定だし、もう、踏んだり蹴ったりだ。


 でも、僕には王宮にいるうちに調べたいことがある。

 フリシアのこと。ニーナとフリシアの関係。

 

 今までは、なんだかバタバタと行事があったから調べる時間が無かったけれど、今のような何も予定が入っていない時間は、王宮の図書館に行って、情報を得たかった。王族の資料は揃っていそうだったから。でも、軟禁状態でそれができない。残念だ。

 

 それから、地下で気づいたこと。マリーが、実は魔女なんじゃないかという話。イネスがいなければマリーを問い詰めていた。それもできない。

 オスカー先生め。


「あ、そうだ、マリー、『フリシア』って人、知ってる?」

「先の第一王女フリシア様のことですか?」

 やっぱり知ってるんだ。マリーは博識だから。

「どんな人?」

「さあ、だいぶん前に海でお亡くなりになったことしか存じ上げません」

「う、海でなくなったの?」

「そういうお話をどなたからか聞いたことがあります」

「顔がわかる方法ないかな?」

「お屋敷に絵がありましたよ」

「もしかして、図書室の隣の小さな部屋の絵?」

「……坊っちゃま、いつの間に、あの部屋に潜り込んでいたんですか」

「あ……あれ? 別に、僕んちだし、君が知っているなら僕も知ってていいよね?」

「まあ、そうですね……フリシア様のことなら、旦那様がお詳しいと思いますが、私はあまり知りません」 

「え? なんで父さんが詳しいの?」

「それは……」

 ドアがノックされ、クロエが入ってきた。


「坊っちゃま、国王様とのお茶会が始まるようです。ご準備をお願いします」

「はい」

 素直に返事をしてみたものの、準備は気が進まない。

 なんだか、今は、国王に会いたくないんだよね。

 さっき僕たち、王国の秘宝とやらを見てきたところだし、マリオネットとかいう鎧兵、壊してきたし。

 昨日は緊急避難路を往復したし。

 これ、もしも国王が知ってたら、僕たち相当やばい気がする。


「それと、マリー。あなたが坊っちゃまを引率するようにと、王宮側から言われました」

「えーー! あ、あの、私、体調が悪くて、引率は無理です」

 マリーが悲壮な顔になって、立ち上がる。マリーが取り乱すなんて、珍しい。

「そんな嘘は通じません。坊っちゃまと二人で、ちゃんとお役目を果たしてきなさい」

 ビシリとクロエに言われて、マリーは肩を落としていた。


 僕はゆっくり準備をしていたけれど、クロエにいい加減キレられて、マリーと二人で追い立てられるように、お茶会の会場へ向かった。  

 係員に案内されて、部屋に入ると、僕と同じ浮かない顔をしたニーナが、ポツンと一人で座ってた。


「あれ? リヒトさんも同席するんじゃなかった?」

「それが、リヒトは、体調が悪くなって、帰っちゃったの」

「えー! もう王宮にもいないってこと?」

 ニーナが頷く。あんなに元気だったリヒトが体調を壊すわけない。

 ずるい。リヒトのヤツ、逃げたな。

 

 しばらくすると、これまた浮かない顔のアンリとルノーが現れた。


 ああ、みんな、気持ちは一つだと、ちょっと笑えた。




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