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08 菓子

今日は予定があり、先生の家には行けなかった。

オーギュスト伯爵家のお茶会に、父さんに付き添い、参加していた。


オーギュスト伯爵家は財力があり、お茶会も大規模だ。今回の参加者は100人を下らない。賑やかで華やかだ。

伯爵家の庭園はバラの花が見頃で、来場者は口々に褒め称えた。

来場者はそれぞれに着飾り貴婦人達は自分こそが華だと言わんばかりだ。

テーブルには、色とりどりの花が飾られ、シューケットやマドレーヌ、チョコレートタルトなどのスイーツや、サンドイッチ、フルーツが品よく並べられている。

当家でお茶会をするときの参考にするため、しっかりと観察しておくよう父さんに言われている。

おもてなしは大変なんだなぁと、感心していると、思わぬ顔を見つけた。


ストロベリーブロンドの髪にピンクのリボンをつけ、ライトブルーのドレスを着て、控えめに微笑む美少女。

テーブルに並ぶケーキを眺めながら、一人でゆっくりと歩いている。


「こんにちは、ニーナさん、今日はこちらにおいでだったんですね」

ニーナは、僕の声に顔をあげると、一瞬目を見張り、すぐに控えめな笑顔になって軽くひざを折る。

「ごきげんよう、アレクシス様。お会いできて嬉しいですわ」

「僕もです。今日は、バラの季節に、華やかなお茶会ですね、あちらのテーブルの花飾りも素敵でしたよ」

回りの人の視線を気遣いながら、当たり障りのない会話をする。マルクスとリヒトの姿は見えない。

「お兄さん達はどちらに?」

「皆様とご挨拶しています。わたくしも先ほど付き添っていたのですが、休んでいていいと言われましたので、こちらでお菓子をいただいていましたの」

僕は控えめな声で話すニーナの姿を見ていて、ふと、スカートの腰の辺り服に目を止めた。


「ニーナさん、ちょっと…」

テーブル付近は人が多いので、テーブルから離れた場所へニーナを誘って、小声で話す。

「ニーナさん、まさか、クッキーか何かポケットに入れて持ち帰ろうとしていないよね?」

「えっ」と、ニーナが驚いて僕を見て、小声で言う。

「なんで、わかった? ここのクッキーもコンフィズリーもすごくおいしくて! みんな全然食べないから、持って帰って食べようと思ったんだ」

「スカートのポケットに直接入れちゃだめだよ、お菓子の粉で汚れてるし、変に膨らんでいるよ」

ニーナが僕を見たままそっとスカートに手をやる。

「スカートの粉は払った方がいいけど、今はポケットに手を入れてはだめだよ、人の目があるから。誰もいないところで、お菓子を出した方がいい」

「そうか、ありがと、アレク」ニーナは囁くと、さっと、花壇の方へ歩いて行った。ポケットに手をやりながら。


僕はその姿を見送ってから、そっとため息をつく。

僕は、ニーナ以外で、お茶会のお菓子をポケットに突っ込んで歩く令嬢に、お目にかかったことがない。

いったいどういう育ちをしたんだろう。大富豪の令嬢じゃなかったっけ?

今度あったとき、きちんと説明してもらおう…。

お読みいただき、ありがとうございます!

嬉しいです!

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