表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/96

79 王国の秘宝4


「ニーナ、もういいぜ」

 リヒトが言うと、ニーナは頷き、手を軽く振る。

 船から黒い風が吹き始め、瞬く間に風は渦を巻き、船を飲み込んだ。

 轟々と渦巻く黒い風で、黒船は見えなくなった。


「リヒト、ニーナ、説明してくれ。あの黒い船が、呪われた船と君が言った、あの不気味な船が、この国の秘宝とは、どういうことなんだ? 今、我々は、国の秘密に触れているのか?」

 オスカー先生は戸惑いを隠さずにリヒトに聞いた。

「そうですね、黒船は、その存在を知ることすら許されないものです。この国の、つまりは国王の、魔力の源ですからね。」

 リヒトは、薄く笑う。


「では、なぜ、君はそれを知っている?」

「今、ここで、その説明をしている時間はなさそうです。そろそろ、鎧兵が復活する。急ぎましょう。王子達を連れて、ここを出ないと」

「リヒト」

 オスカー先生がリヒトの肩を掴む。

「オスカー様、後程、ちゃんと説明します。今は、王子やこの子達の安全が優先でしょう」

 リヒトは真っ直ぐに先生を見て言った。

 オスカー先生は、頷いて、リヒトから手を離す。


 鎧兵は、まだ、バラバラと通路に散らばっていた。

 僕らはそれを通り越し、王子達の待つ、通路へと急いだ。

 

 王子達はマリーと一緒に、僕らを待っていてくれた。

 アンリは、捻挫した足に添え木をして包帯を巻く応急処置がされており、顔色が戻ってきていた。 

「皆様、ご無事でお戻り何よりです」

 マリーが僕達に頭を下げる。

「マリー、ご苦労だった」

 オスカー先生がマリーに声をかける。

「アンリ様は、私の背中におぶっていきましょう。ここを早く出たほうがいい」

 リヒトが言って、アンリはリヒトの背中に乗った。

 みんなで足早に、出口へ向かう。

 リヒトは意外にタフで、王子をおぶっているのに、長い螺旋階段を息を切らさず登って行った。

  

 入り口だった赤い絨毯の部屋に戻ると、昼間の日の明るさに安心したのか、王子達は床にへたり込んだ。


 リヒトが膝をついて、アンリとルノーに視線を合わせる。

「今日、お二人が迷い混んだ場所は、王宮の禁忌に触れる場所です。その存在を知るだけで、殺されてしまうかもしれない。王子とて例外ではないでしょう。今日のことは、夢でも見たと思って忘れてしまったほうがいい。お二人は、夜に王宮を散歩していて、アンリ王子は転んで足を捻挫しまった。足を休めるために話し込んでいるうちに、疲れて眠ってしまったことにしましょう。そして、私たちに発見された。どうですか?」

 アンリとルノーは神妙な顔で頷いた。


 リヒトは、すっと立ち上がると、ニーナの頭に手を置いた。

「今回のことは、うちのニーナがお二人を煽ったせいもあると思います。本当に申し訳ありませんでした。ほら、ニーナ、お二人に謝って。」

「アンリ様、ルノー様、危険な目に遭わせて、ごめんなさい。」

 ニーナは、みんなの前で頭を下げた。

「いえ、今回は僕たちが勝手にしたことです。ニーナは、悪くない」

 アンリが慌てる。

「いいえ、ニーナが言い出さなければ、こんなことにはならなかった。これから、こいつにはきつくお灸を据えておきますので、どうかご容赦ください。では、失礼します。」

 そういって、頭を下げると、リヒトは、ニーナの手を引っ張って、さっさと部屋を出ていってしまった。


 僕とオスカー先生は顔を見合わせる。

 ひとまず、王子達の無事を関係者に知らせなければならない。

 僕が王子の侍従を呼びに行き、それから、王子達が見つかったと大騒ぎになった。

 僕らは、皇太子妃殿下をはじめ、たくさんの人にお礼を言われ、くたくたになって、やっと遅い昼御飯にありつけた。



「オスカー先生、ニーナ大丈夫でしょうか」

 僕とオスカー先生は、昼食後、僕の部屋で紅茶を飲んで休憩していた。

 今日は、僕らと国王とのお茶会が夕方に予定されていた。王子たちの事件があり、予定が大幅に変更されけれど、お茶会は開催されるようで、それまでは自由時間となっていた。

「リヒトさん、ニーナに厳しそうだから、叱られて泣いてないかなぁ」

「ニーナが、心配かい?」

「ええ。泣き虫だからニーナは。」

 オスカーはふっと笑う。

「まあ、ニーナにはいい薬じゃないのか?」

「そうかなぁ」

 でも、泣かせるのはかわいそうだ。

「君は、自分の心配はしないのかい?」

「自分って、僕ですか?」

 僕に何かあったっけ?

「君は時々自分に都合の悪いことは忘れるのかな? 今回の件は、君達が、夜に王宮内を探検して回ることに、王子達を巻き込まなければ、こんなことにはならなかったんだよね?」

「え、えーと、一応、僕は昨日、王子達も止めたんですよ、夜中に王宮をうろつくのは危険だって。ほら、昨日の朝、先生に言われたから。でも王子達は、ご自身の判断で探検に行かれたんだと……いうのは、ダメですか?」

 汗が出てきた。先生、目が怖い。

「一昨日の夜の行動が、今回のきっかけなんだろう? 一昨日の夜は、どこに行っていたんだい?」

「えーーーっと」

「喋るまで許さないからね」

「……そんなぁ」

「今日は、図らずも王宮の禁忌に触れてしまった。公爵家に帰ったら、君の父さんと、今後のことを話さなければならない。君たちを王宮から守るためにもね。公爵の地位があっても、タブーに触れるのはまずいことなんだ。わかるだろ? 黒船のことは……リヒトには、まんまと逃げられたからよくわからなかった。あいつは、そのうち、力尽くでも捕まえて、話をさせてやろうと思っている。」

 そうなんだよね。リヒトは、あれだけ後で説明すると言いながら、何も言わずにいなくなった。ずるい。僕だって、今すぐここから逃げ出したい。

「ああ、そうだ、マリーも捕まえて、一昨日のことを詳しく聞かないと」

 先生はすっと立ち上がると、ドアからそーっと出て行こうとしていた赤毛の侍女の肩を掴んだ。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ