76 王国の秘宝1
しばらく進むと、風が吹き込んでくるのを感じた。進むほど強くなる。
通路の先が広がっていて、ホールのようになっている。風が強く、同じ向きで吹いている。ホールの中でも渦巻いているようだ。あの空洞の中に何かあるのだろうか。
「面白くなってきたな、ニーナ、お前も感じるだろ?」
リヒトの囁くような低い声がした。
「うん、強い魔力だね。中心はその先の……。」
ニーナの声も、囁くようだ。
「あ、だめ、先生、結界がある!」
ニーナが、声をあげて、オスカー先生に駆け寄る。
オスカー先生が足を止めた。僕も回りを見る、見えるものは、今までと変わらない。通路と細長い水路、そしてその先にあるホールだ。
「結界?」
「…ヤバいかも、先生の足、触れちゃった」
ニーナが、後ずさる。
なんのことだか分からず、先生と目を見合せ、ニーナを見る。
ニーナは、不安げに回りを見ている。
「結界か、なるほどね、これが起動装置なんだな」
リヒトがニーナの脇によった。身構えている。
がしゃんがしゃんという音が聞こえてきた。重たげな金属音だ。近づいてくる。
先生が刀の柄に手をかける。
暗闇から白銀色の鎧を着た兵士がぞろぞろと現れた。4人ずつ並び、10列以上続いているように見える。
鎧兵は、剣を右手に持って、みんな同じ姿勢で、規則正しい足音を立ててこちらに近づいてくる。
白銀の鎧は鈍く不気味な輝きを放っている。
「私たちは怪しいものではない」
先生が鎧に話しかけた。鎧兵は近づいてくる。
「無理ですよ、あいつら、人ではない」
リヒトが先生に言った。
「どういう意味だ?」
「たぶん、マリオネットです。この先のお宝を守っている。強い魔力で操られているだけの、おもちゃです」
「おもちゃ?」
「あ、でも、侵入者を排除しにくるから、こちらは気を抜くと殺されます。」
「何を言ってるんだ?」
「つまり、こういうことです」
リヒトが走り出して、ジャンプし、先頭の鎧の頭を蹴飛ばした。
鎧の首がとび、がしゃんと壁に当たる。
リヒトは、身を翻して、戻ってきた。
首を飛ばされた鎧は、そのままこちらに、がしゃんがしゃんと規則正しい音で向かってくる。
僕は、恐怖で凍りついた。
「ね? 鎧の中は空洞です。」
リヒトは、先生の脇に立つ。
「どう戦えばいい?」
「足を狙って、動けなくする。動きを止めれば、こちらの勝ちです。」
「そうか、で、君は、いったい何者だ?」
「いや、そんな話をしていられるほど、あいつら、容易くないですよ」
「わかった、では、後で聞く」
そういって、先生は鎧の軍団に向かっていった。剣で鎧の太もも辺りを凪ぎ払うと、金属音を立てて鎧が崩れ落ちる。
リヒトは、崩れた鎧から剣を奪って、別の鎧の足を崩しに行く。
二人は、次々に鎧を倒しては行くが、僕は、何もできず、鎧の姿に恐怖して動けずにいた。
「アレク!」
ニーナに、手を引かれ、はっとして壁際に寄る。
ニーナは、僕の肩をぽんと叩いて、壁際に押すと、にっと笑って、鎧に向かっていった。
「ニーナ!」
慌てて引き留めようと手を伸ばす。
ニーナは、すごい早さで走っていって、鎧の足めがけてスライディングキックした。
鎧の足が、がしゃんとふっ飛び、一体が崩れ落ちる。
「えー!」
僕がびっくりしているうちに、ニーナも剣を拾いあげ、鎧の足元へ振り回す。がしゃんと言う音がしたが、ニーナの太刀では、鎧の足は崩れなかった。代わりにニーナが、よろめく。鎧が太刀を振り下ろそうとする。
「危ない!」
僕は、走り出した。
ガキンと音がして、リヒトの剣が、ニーナを庇った。
リヒトは、鎧の剣を弾き飛ばし、その足をなぎ倒す。鎧が崩れ落ちた。
「お前は下がってろ、チビ」
リヒトは、ニーナの襟首を掴んで乱暴に放り投げた。
ニーナが、僕の方へ転がってくる。
「痛ったぁい、ひどいや、リヒト!」




