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73 王宮迷走6


「王子達が行方不明だって?」


「はい。お二人とも、今朝、お姿がなく、昨夜は眠った形跡がありません。お心ありはございませんでしょうか」

 朝、朝食会場にニーナと行くと、王子の侍従が青い顔をしていた。

 ハッとして、ニーナを見る。

「わ、わたしは知らないよ。」

 ニーナは慌てて手を振る。

「お力になれるかどうかは分かりませんが、僕らも心当たりを探してみます。」

 そう伝えると、侍従は頭を下げて去って行った。

 

「ほんとに、わたし、昨日の夜は、おとなしく寝てた」

 ニーナが必死な顔で僕にいう。

「うん、分かってるよ、ニーナは僕を裏切ったりしない。もしかしたら、王子達は二人だけで隠し部屋探しに行ったのかもしれない」

「じゃ、もう一つの方へ行ったのかもってこと?」

「うん」

 僕が浅はかだった。ニーナを止めればいいと思っていたけれど、もしかしたら王子達はニーナのために隠し部屋を探してあげたいと考えたのかもしれない。もっとちゃんと、二人を止めればよかった。


「ニーナ、オスカー先生に相談しよう」

「大人を巻き込むの?」

「2人は一晩帰ってこないんだ。怪我をしているかもしれない。もしもの時、僕らは二人で2人を抱えて帰るのは無理だ。」

「わたしは二人を運べるよ」

「王宮で魔法を使っていいと思う? 魔女だとバレて国王に捕まってもいいの?」

「それは、嫌。アレクと一緒にいられなくなる」

 ニーナは僕の頬に触れる。ニーナの手は柔らかく暖かい。


 僕らが部屋を出ようとすると、マリーが現れた。

「王子様方が行方不明とか」

 顔色が悪そうだ。

 オスカー先生に相談して一緒に探すと伝えると、一瞬、嫌そうにくしゃっと顔を歪めてから、いつもの無表情になり、

「賢明なご判断です、坊っちゃま」

 と言った。


 僕らはオスカー先生のところへ急ぐ。

 先生は、僕と離れているときは、衛兵の訓練を指導すると言っていた。先生は元国王の近衛兵隊長だったから。

 中庭に、先生の姿を見つけ、手を振る。

 先生は僕らのところへ来てくれた。

 先生に、王子たちが行方不明であり、心当たりがあることを告げた。

 僕らが昨日一緒に探検に行ったせいで、もう一度自分達だけで行ったに違いない。

 もしも怪我をして動けないと僕たちだけでは救えない。力を貸してくださいと。


「まったく、君たちは、王子まで巻き込んでいたのか」

 オスカー先生が怖い顔をして僕らを見た。


 オスカー先生はマリーに目を止めた。

「なぜマリーがいる?」

 マリーは黙って俯いた。

「まさか、お前、昨夜この子たちと一緒だったのか」

 マリーが身を縮める。

「お前が一緒にいて、この子たちを止めなかったのか」

 先生の口調が強くなった。マリーは、じっと下を向いている。

「先生、マリーは僕らを止めたんです、でも、僕らがマリーに一緒に行ってくれと言って。僕らが悪いんです」

 僕はマリーの前に立つ。マリーが叱られるのは理不尽だ。

 

 先生は僕の目を見て、ため息をついた。

「そうだな、今はまず、王子たちを探し出すことが先だ。後でゆっくり聞かせてもらうよ、マリー」

 マリーは、こくんと頷いた。 

 先生は、すぐに、僕らと一緒に行けるように準備してくれた。


 アンリが言っていたのは王宮の本館の3階にある場所だとニーナはいう。

 僕らは本館へ向かう。


 通路で、リヒトが女性達と話しているのに出会った。女性は侍女の服装をしていた。

 リヒトは、僕とニーナを見つけて近づいてくる。


「やあ、アンリ様とルノー様が行方不明らしいけれど、ニーナがここにいるってことは、問題なさそうだね。まあ、男の子だし、親に内緒で、夜の街にナンパにでも行ってるんじゃないかなと思ってたんだ」


 呑気そうなリヒトに、実は…と、自分達の心当たりを説明し、これこら探しに行くと告げる。

 案の定、リヒトは目をつり上げた。

「ニーナ、お前!」

 ニーナは、僕の後ろにさっと逃げる。

「い、今は王子を探すのが先決ですよね、オスカー先生?」

 僕はニーナを庇いながら、先生に救いを求める。

「私はロートレック公爵家のもので、オスカーという。この子達から王子を探す力添えを求められた。私もこの3人には後で話があるが、まずは王子達をお探ししたい」

「私も行きます」

リヒトが先生に言う。



「アンリ達が言っていたのは、3階だよ」

 ニーナがみんなの先を行く。

 王宮本館は3階建のため、3階が最上階になる。しかし、本館は広い。

 ニーナはルノーが描いた地図を覚えているだけのはずなのに、迷うことなく進んでいく。

 

 ニーナの案内で、目的の場所にたどり着いた。

 この3階の一角は、普段使用されていないのか、通路の窓際のカーテンは下ろされていて、朝なのに薄暗い。

 通路の突き当たりの壁に大きな絵が飾ってあって、荒波に浮かぶ船が描かれている。

 その突き当たりの部屋が、アンリ達が言っていた、「入ってはいけない場所」だった。

 


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