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71 王宮迷走4


 帰り道は、行きよりは楽だった。

 もう道がわかっていて、行く先に不安なものが存在しないと知っていると気持ちも足取りも軽い。


 帰りはみんなで話しながら、ワイワイと歩いてきた。


 僕の家で、ニーナが屋根に登って昼寝をしていた話は、王子達にウケが良かった。

 ニーナは、王宮の屋根にも登ってみたいと言い出して、それはやめろとみんなで説得した。

 なんだか、4人の連帯感が強まった感じがした。


 長い通路を抜け、長い階段を登ると、扉を抜け、旧神殿の祭壇の前に着いた。

 みんなで、祭壇の前にしゃがみ込んで、休憩する。

 暗闇に目が慣れていて、お互いの表情もわかる。

 何事もなく、無事に帰ってこれて、ほっとした。


「隠し部屋じゃなくて、残念でしたね」

 アンリがニーナをねぎらう。

「うん、でもわたしがこっちがいいと言ったんだし、ごめんね、みんな。もう一つの方にすればよかった」

「いいよ、ニーナ。こんな逃げ道を知ることができたし、結構、楽しかった」

 ルノーがニーナに笑顔を見せる。

「そうだね、みんな無事に戻れたし、よかったですよね」

 僕も相槌を打つ。

 僕らの中には、探検を成功したような達成感があった。


「みなさん、お怪我はありませんね? 坊っちゃま以外は」

 凛としたマリーの声が響いて、僕らは思わずシンとする。

「はい」

 とそれぞれが頷いた。

「さて」

 と、マリーは立ったまま、両手を腰に手を当て、僕ら4人を見下ろした。

「皆様、よくお聞きください。今日のところは私も同行しましたが、今後このように、夜中に無断でうろつくことや、タブーとなっているとこに近づくことは、けして、なさってはいけません。王子様方は、ご自分のお住まいとはいえ、王宮には危険なところがあります。今日は、たまたま安全だっただけです。今日のこの場所も、王宮ではトップシークレットでしょう。王族の緊急避難経路です。こんな場所のことを誰かに喋ったら、とりあえず坊っちゃまとニーナ様は、命がないと思ってください。王子様方も、ただじゃあ済まされないでしょう」

 物騒なことを言うマリーに僕たちは顔を見合わせる。

「いいですね、決して、今日、ここに来た事は口外なさらぬように」

「はい」

 僕らは神妙に頷いた。


 マリーは、よし、と言う顔をして、

「では、お部屋へお戻りください」

 とみんなを旧神殿から追い出した。


 先ほどマリーが眠らせたと言っていた灯りを持った人はまだ眠っていた。よく見ると、剣を持った兵士だった。

 斬られなくてよかった。眠っている横に、そっと、灯りを戻しておいた。


 マリーは僕と一緒に、王子達やニーナが部屋に戻るのを見届けてから、僕の部屋までついてきた。

 そして部屋に着くと、傷の手当てをすると部屋に入ってきた。夜中なのに。


 マリーが、僕の腕と足の傷口を消毒する。

「マリーはさ、今日、僕を尾行してたんだろ?」

「坊っちゃまは嘘が下手ですからね。朝まで部屋に入るなってわざわざ言うってことは、夜のうちに抜け出す気があるなと推測できます。ニーナ様は、なぜか、坊っちゃまを信頼しているから、ニーナ様の行動を見張りたければ、坊っちゃまを見張るのが一番ですからね」

「マリーはニーナ思いだもんね」

 手当てが終わると、マリーは部屋を出ていく。僕はドアの前まで見送った。

「ごめんね、寝る時間が少なくなってしまったね」

「今回は覚悟の上です。あ、そういえば忘れていました」

「え? なに……いてっ」

 マリーにデコピンされた。いつもの不意打ちに額を抑える。

「なんだよ、もう」

「ほんとに、坊っちゃまは手が掛かる。次はこれくらいじゃあ、許しませんからね」

「なんだよそれー、もう、わかってるよ、ごめんって」

 マリーは僕をちろりと睨んで、暗い廊下へ消えていった。



次の日はみんなぐったりしていた。

 夜中に歩き回って、寝不足だから当たり前だ。


 朝食の後、今日の予定を変更し、ルノーの部屋でボードゲームの続きをすることにして、使用人達を追い出し、僕ら4人だけで話すことにした。


「やっぱさあ、アレク、お城から離れずに、お城の中の部屋を探した方が良かったんだよね。もう一つの方は、いつ行く?」

「って、ニーナ、まだ、探すつもり?」

 ニーナは、にっと笑う。


「昨日、マリーがあんなにダメだって言ってたじゃないか」

「大丈夫、バレないように行くから」

「いや、マリーにはバレるって! 君ならわかるだろ?」

 ふふんとニーナは鼻を鳴らす。

 魔法使いの考えることはわからない。


「昨日、お兄さんにはバレなかった? リヒトは、結構、鋭いと思うけど」

「大丈夫。リヒトは、夜は忙しいから、女を口説くのに」

「…ニーナ、そういう言い方はやめなさい。王子達のリヒトのイメージが崩れる」

 ニーナはアンリとルノーを見て、肩をすくめた。


「アンリ様もルノー様も誰にも気づかれなかったんですか」

「もちろんだよ! 昨日汚れた服も隠しておいた。うまいタイミングで洗濯に出せば証拠隠滅はバッチリ」

 ルノーは嬉しそうだ。 

 

 なんでみんな無事なんだろう。

 僕なんて、昨夜はマリーに尾行され、今朝はオスカー先生に昨日の悪事が見抜かれた。



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