67 ダンスレッスン2
「いや、今のはルノーが悪いですよ。ルノー、ニーナに謝りなさい」
アンリが落ち着いた声で言い、ルノーに近寄る。
「ニーナ! 頭にきても、手を出しちゃダメだ! ルノー様に謝りなさい」
僕は、腕組みしてニーナを睨む。
ニーナの目から、涙が溢れた。
わっ、しまった、泣かせてしまった。
「何だよ! アレクだって、わたしにひどいこと言ったくせに! そんなに怒るなんて! ばか!」
ニーナが、僕の胸をポカポカと殴る。
「泣かないでよ、ニーナ…」
「アレクシス、君は、ニーナに厳しく言い過ぎだ」
アンリが、僕に強い口調でいうと、ニーナの肩を抱いて、
「ニーナ、落ち着いて。あちらで少し休もう」
と、ニーナを椅子に座らせた。使用人にジュースを運ばせて、ニーナに渡す。
ニーナは、ジュースを飲むと、その甘さに落ち着いたらしい。
アンリが渡したハンカチで顔を拭いた。
ルノーが、ニーナの隣に座って、ニーナの顔を覗き込む。
「僕が悪かったよ、ニーナ、僕、間違ったことを言った。ニーナは魅力的な女の子で、僕の知っている中で一番、素敵だ。さっきは、つい、変なことを言ってしまった。本当にごめんなさい」
ニーナは、じっとルノーを見る。
「僕は、君に嫌われるのは嫌なんだ。こんなことになってしまって、もう、どうしたらいいか…」
「ルノー、わたしも、ごめんね。…わたしが、はじめにルノーに失礼なことを言ったから悪かったと思う。あと、叩こうとしてごめんなさい。わたし、ルノーのこと、嫌いじゃないよ」
ニーナはルノーに笑顔を作る。ルノーがほっとした顔で微笑む。
「じゃ、僕と踊ってくれる?」
ニーナはしばらく考えるようにルノーを見てから、俯いた。
「アレクシス、ニーナに謝りなさい」
アンリが僕の傍に立って言った。
「なんで、僕が…」
「君は、もう少し、言い方を考えた方がいい。ルノーもいけなかったけれど、ニーナが泣いたのは君のせいだ」
アンリが少し怒った顔をしている。いつも穏やかだから、意外だった。
仕方なく、僕はニーナが座る席の前に立って、ニーナを見下ろす。
「ごめん、ニーナ、さっきは強く言いすぎた」
ニーナは僕からプイッと目を逸らす。
こっちが謝っているに、可愛くない。
「ニーナ、ちゃんと目を見て聞いてよ」
「アレクシス、怒ってどうする」
アンリに突っ込まれ、僕は深呼吸をする。
しゃがんで、片膝をつき、ニーナの顔を見上げる。
「ニーナ、一緒に踊った時に変なことを言って、ごめんね。本当は、ダンスをしていた君がいつもより大人っぽかったから、僕は少し照れてしまったんだ」
僕は白状した。本当のことをいうより他に、上手く説明できる気がしなかった。
ニーナが、僕の目をみる。僕の本心を探っているようだ。
「本当だよ、君は素敵だった。僕は、言い方を間違えた、ごめん。それから、さっきは君にきつく言いすぎた。暴力はダメだというのは、ニーナもわかってくれると思うけど、僕も、もう少し優しく話せばよかった。反省している。許してもらえるなら、一つだけ君の言うことをきくよ」
「本当?」
「うん、約束する」
ニーナが、僕の目をじーっと見る。
僕は自分に言い聞かせる。もう、怒ってない、僕は怒ってない。
「わかった、許すよ!」
ニーナが、僕の首に腕を回し、抱きついてきた。
僕はバランスを崩して、後ろに倒れそうになるのを、堪えて、ニーナを受け止める。
ニーナは僕から離れると、立ち上がり、嬉しそうに僕のことを眺めてから、ルノーを振り返った。
ルノーに駆け寄り、軽く膝を折ってお辞儀をする。
「ルノー、わたしと一緒に踊っていただけませんか」
「喜んで!」
ルノーが、椅子からぴょんと立ち上がった。
ルノーとニーナのダンスは、二人とも軽やかで、元気いっぱいで楽しそうだった。
ニーナは、くるくるとよく周り、アクロバティックに踊っていた。
踊り終わると、周りの人々から拍手がわいた。
「ルノーとが一番踊りやすかった!」
ニーナの言葉に、ルノーが頬を赤め、嬉しそうにする。
「僕も、ニーナが一番だ!」
そしてルノーとニーナは続けて2曲も踊って、みんなから拍手をもらい、満足そうに二人で笑い合っていた。




