表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/96

59 王宮の庭7


 ニーナが、後日、王宮に泊まりに来ることになって、王子二人はご機嫌だった。王宮の中を案内するよとか、舞踏会でも開こうかとか言って盛り上がっている。


 僕は、ゆっくりスイーツを堪能する。さっきまでは、不甲斐なくも味わう余裕がなかった。

 王宮のパティシエが作るスイーツは、どれもとても美味しかった。見た目の煌びやかさよりも、味の方が優っていて、ほっぺたが落ちそうとはこのことだ。

 とりわけ僕が気に入ったのは、クラフティ・リムーザンというカスタード生地にサクランボが入った焼き菓子。並んでいるスイーツの中では素朴な見た目のお菓子だけど、トロッと滑らかな食感とサクランボの酸味が程よくて、なんだか懐かしい味がした。今度エミールに作ってもらわないと。


 ニーナが希望していたアイスクリームの3段重は、最後に提供され、数種類のフレーバーから選ばせてもらえて、どの味にするかで盛り上がった。

 気がつくと、ルノーとニーナが二人して、5段重ねに挑戦していて、僕とアンリとで、お腹を壊すからやめなさいと止めに入った。でも、ルノーもニーナも、僕らの言うことは聞かずに5段重ねに挑戦して、ニーナは途中で挫折し、食べ切ったルノーはニーナから尊敬の眼差しを受けていて、嬉しそうだった。

 そして、みんなご機嫌で、次に会えるのを楽しみにしていると挨拶してお開きになった。 



「ニーナ、君、なんか企んでるだろ?」


 王宮からの帰りの馬車でニーナと二人きりになり、僕は、向かい合った席からニーナを見据える。

 王宮では追及できなかったことが、やっと聞ける。


「王宮に数日泊まりたいなんて、君の本心じゃないよね? 王宮は礼儀作法にうるさくて、しきたりを重んじることくらいは、知っているはずだし。 君は、窮屈な生活は苦手だろ?」


 殿下へ希望したニーナのご褒美には納得いかなかった。ニーナらしくない気がした。

 さあ、きっちり説明してもらおうか。


 ニーナは、バツの悪そうな顔で、後ろに下がろうとして、場所の椅子の背もたれの後ろを見て、逃げられないと悟ったように、僕を上目遣いで見る。


「わたし、もうすぐ、ルナールに帰らなきゃいけないから……、アレクと一緒にいられるなら、王宮でもよかった……」

 そう言った、ニーナは目が泳いでいた。ニーナは嘘をつくときの特徴だ。言ってくれている言葉は嬉しいけど、そのまま信じることはできない。どこかに嘘が隠れている。

「嘘はダメだよ」

 僕は、腕組みをして、怖い顔を作る。


 ニーナは、泣きそうな顔をして、下を向いた。


「い、いや、怒っているわけじゃないんだよ、理由を聞きたいだけ。もしかしたら、ルナール家に関係があるのかなと思って……」

 ニーナは、喋らない。

「ニーナ?」

 ニーナの顔を覗き込む。


「お城だと、アレクが怒ってばかりで、嫌だ」

 ニーナは、半ベソだった。

「え、ちょっと、泣かなくてもいいよ、怒ってないって」

「怒ってる!」

「怒ってない、本当だよ」

 僕は、慌てて、ニーナの隣に座り、顔を覗き込もうとする。

 ニーナは、僕の視線を避けるように首を振る。

 それから、膨れつらになり、僕に抱きついてきた。


「ニーナ…」

 僕の胸に、顔を埋めているので、ニーナの表情はわからない。

 僕は、ため息をついた。


「わかったよ、どうしても言いたくないんだね。もう聞かないよ」

 僕は、ニーナの頭に手を置いた。

 ニーナは僕にぎゅーっとしがみついたまま、動かない。


「ほんとに君は困ったヤツだな」

 ニーナの頭をくしゃくしゃと撫でてから、馬車の外の景色に目をやる。

 もう、日が陰り始めていた。


 ニーナが、お城での生活が夢だったとか、見えすいた嘘をついたら、本当のこと言うまで許さないつもりだった。

 でも、結局、僕はニーナの泣きそうな顔に、負けた。


 仕方がない。

 ニーナは、「何か企んでいる」のは、否定しなかったから、そうなんだろう。

 まあ、なんだろうと、僕はニーナに付き合うし、ニーナのそばにいたい。


 ニーナの腕には包帯が巻かれている。今日、アデル王女を救った時の怪我だ。

 無理するんだから…、痛かっただろうに。


 しばらく窓の外を眺めていると、僕に抱きついたままのニーナから、寝息が聞こえてきた。

 僕は起こさないように、そっと、自分の上着を脱いで、ニーナの肩にかける。

 無茶ばかりして、走り回って、たくさん食べたのだから、疲れたのだろう。

 夕飯はもう食べられないんじゃないってくらい、スイーツを食べていたよね。

 僕はニーナの食べっぷりを思い出し、笑いそうになった。


 ニーナと過ごす1ヶ月も、あと数日しか残っていない。


 もう少ししたら、一緒にいられなくなるんだと思うと、たまらなく切なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ