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56 王宮の庭4


 ニーナは、王宮医に看てもらい、傷の手当てを受けた。

 赤ちゃんは無傷だったと聞いて、安心していた。


 今回も、たくさんの方から代わる代わる感謝された。

 ニーナは、怪我よりも、ドレスが破れたり汚れたりしていたことに、ショックを受けていた。

 皇太子妃が用意してくれたドレスに着替えさせ、例え新調したドレスでも王女様を助けるために汚したのだから父さんには絶対叱られないら大丈夫だと、必死に宥めた。

 王宮でドレスを修復してくれることになった。


 ニーナは、落ち着くと、スイーツの心配をした。

 続きを食べさせて貰えるかどうか、王子に聞くと二つ返事で、スイーツ会が再開された。


「ニーナ、凄かったよ、さすがだ!」

 ルノーが興奮気味にニーナを褒め称える。

「どうやったら、あんな風に木々を跳び渡れるの?」

「日頃の鍛錬ですよ、ルノー王子様」

 ニーナは、キャラメルソースがかかったエクレアを堪能しながら、王子相手に、ぞんざいに返事をする。

「水の中だけでなく、あんな高いところも怖くないんだね!」

 ルノーは尊敬の眼差しでニーナを見つめる。

 アンリもニーナに熱のこもった視線を送る。

「またも、命を救われました。今度は、可愛い妹を! 感謝してもしきれません」


 ニーナはニコニコとスイーツを食べていた。

 ラフランスのゼリー、チョコレートムース、タルトタタン、マカロン。

 ニーナの手が止まり、食べ過ぎじゃないかと心配になる。

 見ると、フォークを口に咥えて、テーブルに並ぶスイーツを眺めている。


「ニーナ、フォークを咥えちゃだめだよ」

 小声で注意すると、ニーナは、上目遣いに僕を見た。

「…もう、お行儀お行儀ってうるさく言わないって、アレクさっき言ったよね」

 ドレスの汚れにショックを受けていたニーナを宥めるときに、つい約束してしまった。

 あれだけ暴れたのだから、今さらだと思ったし。

「う……、まあね」

 僕が答えると、ニーナは、満足そうに、にっと笑う。


 そして、僕の方を見ながら、おもむろにケーキを手で持って、かぶり付いた。

 手でケーキを食べるなんて、普段家でもやらないし、もしやったら、家のみんなが許さないだろうに、…わざとやっている。


 僕が黙って見ていると、もう一度にっと笑って、空いている手で今度は、ガトーショコラを掴んで、かぶりつく。

 両手でケーキを持って食べている状況だ。

 僕が目を見開くのを楽しんでいる。

 さすがに頭に来た。

 そういう人を試す態度は許せない。

 しかも、ここは王宮なのだ、限度がある。


「…ニーナ、約束は撤回するよ、そういう態度を取るとは僕も思わなかった。いくら頑張ったからって、ハメをはずしすぎるのは許しません」

「え、あ、アレク?」

「ダメなことだってわかっていてやっているんだろ、そういう態度をとる悪い子は、帰ったらお仕置きだからね」

「えー! アレク、ごめん、今の、うそ、やり直すから」


「もう遅い」

 僕はプイッと横を向く。


「わ、わ、ごめんってば、アレクっ」


 ルノーが吹き出した。アンリも笑っている。

「あ、お前ら笑うな!」


「ニーナっ、言葉遣いっ」

「はい、ごめんなさいっ」

 王子達が声を上げて笑う。

 僕は、少しむっとする。


「ニーナ、それは叱られるって!」

 ルノーが笑いながらニーナに言う。

 ニーナは、恨めしげに押し黙って、ルノーを見る。


「ほんとに、お二人は仲が良いんですね」

 アンリが、穏やかな笑顔で言った。

「ニーナは不思議な方だ。とても可愛らしい方なのに、水の中にも高いところにも勇敢に人を助けにいく。でも、そんな、いたずらっ子ようなことをして叱られて…。見ていて飽きないですね。」

 ニーナに優しく微笑む。


「アレクシス、僕に免じて、今日のところは許してあげていただけませんか」

 王子にそう言われては、仕方がない。

 ニーナを見ると、首をすくめて僕を見ている。


「わかりました。アンリ様にそう仰っていただけるのなら…」

 王子にそう言ってから、ニーナをねめつける。


「ほんとは、おやつ3日抜きにしてやるところだったんだからな。アンリ様に感謝するんだね」

 ニーナは、神妙な顔をして頷き、王子に顔を向ける。

「アンリ様、ありがとうございます」

「いえいえ、ニーナ、君は、僕たちの恩人です。困ったときは、いつでも言ってください」

「はいっ」

 ニーナは、嬉しそうに頷いた。


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