54 王宮の庭2
僕の心配をよそに、ニーナは、王子達に寄り添われながら嬉しげにスイーツを選んでいた。
王子はお二人とも美形だし、ニーナも(大人しくしていれば)美少女なので、美しい王宮の庭で立ち並ぶ姿は絵になる。
スイーツは、花飾りとともに並べられ、ミルフォイユ、エクレール、シュー菓子、イチゴのフレジェ、タルトオーシトロン、タルトタタン、カラフルなマカロン、コンポートなどなど、何種類あるのか数えるのが大変だ。さすが王宮だけあって、美しい造形の飴細工、キャラメルコーディングしたフルーツが宝石のように飾られ、色彩鮮やかなショコラが並ぶ。
3人がスイーツを選び終わって席に向かうところをみて、僕もいくつかオーダーし、後に続く。
王子達とニーナは、ニーナの好きなスイーツの話で盛り上がっていた。
テーブルにスイーツが運ばれ、ニーナの目が輝く。
「少しずつゆっくり食べればいいからね、一度に頬張らないように」
イチゴのフレジェにフォークを突き刺して、大きめに切り分けようとするニーナに、釘を刺しておく。
「わかってるってアレク、小さな口で食べればいいんだろ?」
「ニーナ、言葉遣いっ」
「大丈夫だって」
ニーナは、もう、スイーツに夢中で、僕の話しは完全に聞き流している。
全然、大丈夫じゃない。
大きなクリームの塊にフォークをさし、口へ運ぶ。
一口で食べて口の両端にクリームをつけながら、幸せの絶頂の顔をする。
「ほら、口にクリームついてる」
僕は慌てて、ナプキンでニーナの右側の口回りを拭く。
ニーナは、僕に、左のほうも拭いてくれと、顔を「ん」とつき出してくる。
まったくもう、いつもこうなんだからと、きれいに拭き取ってやる。
顔にクリームの汚れが残ってないことを確認して、ナプキンをたたみ、自分のスイーツを食べようとして、王子達の視線が僕に向いていることに気づいた。
ルノーには睨まれている。
「一度、お聞きしようと思っていたのですが、アレクシスは、ニーナと、ご兄妹ではないのですよね」
アンリがにこやかに、でもなんとなくトゲのある口調で言う。
「はい。兄妹ではありません」
「では、どのようなご関係ですか」
「当家でニーナをお預かりしています。行儀見習いのためと、ご家族から託されました」
「それだけですか?」
それだけって、どういう意味だろう。
まあ、実際のところ、僕はニーナを妹みたいなものだと思っているし、僕にとってかけがえのない大事な人だと思っているけど、こんなところで、色々説明したくない。
なので、僕の答えはこれだ。
「ええ、それだけです」
と微笑む。でも、ニーナは、僕のものです、と心の中で付け足す。
「…なるほど、行儀見習い…」
アンリは考え込む。
ルノーはまだ僕を睨んでいる。なんなんだ。
「いいえ、それだけではありません」
突然ニーナが声を上げたので、みんなニーナをみる。
ニーナは、なぜか憮然としていた。
「ニーナ?」
「なんでアレクはそんなこと言うの? わたしたちの関係って『それだけ』だったの?」
「へ?」
な、何を言い出すんだ。
「わたしたちって、もっと深い関係じゃん!」
「え、に、ニーナ?」
ふ、深い関係、って、何? ニーナが何を言い出すのか、僕は心臓がバクバクしてきた。
「わたしたちって」
ニーナが、僕の目を見て真剣な表情をする。
僕は息をのむ。
「親友だよね」
「あ、うん」
「じゃ、訂正して!」
ニーナはどこまでも真剣だ。僕はゆっくりとアンリ達を見る。
ルノーが吹き出して、自分の口を手で押さえ、肩が震えている。
だから、アンリ、その同情の眼差しは止めてくれ。
僕は頬がひくつかないように微笑んで言う。
「訂正します。僕たちは、親友です」
ニーナは、良くできましたとでも言うように満足げに頷いた。




