52 空飛ぶ馬5
僕んち恒例のバーベキューは、別荘の庭で開かれ、みんなで大盛り上がりだ。
父さんとクレマンは、一緒にワインをすでに2本も空けている。
僕は、ニーナと一緒に、ぶどうジュースで喉を潤す。
「しかし、君たちは今回、トラブル続きだったね。せっかく別荘に来たのに、疲れたんじゃないかい?」
「いいえ、楽しかったです、おじ様。今日もアレクとお昼寝していたし、ゆっくりできたんですよ」
「……まったく、君たちときたら…。昼寝しすぎて帰りが遅くなったあげく、盗賊にあったのは、ちょっと、笑い話ではすまされないけどね」
父さんに、ちろりと睨まれ、笑ってごまかす。
「父さん、まあ、飲んでよ、ね、クレマンも、どうぞ!」
二人のグラスにワインを多目に注いでおいた。
いろいろ言われる前に、肉を焼いている鉄板の方へ逃げよう。
「僕たちも肉を食べてきます、行こうよ、ニーナ」
「あ、イネス、それ、僕の肉!」
僕が大事に焼いていた肉を、イネスが横からかっさらった。
「坊っちゃま、上手に焼けてますよ、誉めてあげます」
「なんだよ、それー」
「坊っちゃま、肉が足りません、ニーナ様の肉も早く焼いてください」
「マリー…」
「今日は無礼講なんですからね、坊っちゃまが頑張らないと!」
「…イネス、うちなんか、僕に対しては、いつも無礼講じゃないか…」
「坊っちゃま、何か、文句でも?」
「いーえ!焼きますよ。肉をどんどん焼きます!」
「まあ、坊っちゃま! みんなから肉ばかり焼かされて…」
「ソフィア、そうなんだ。みんな、肉、肉ってうるさいんだよ」
「いけませんねえ、坊っちゃま。野菜も焼かないと」
「…ソフィア…」
しばらく肉や野菜を焼く係に徹していた僕を、ニーナが不思議そう見ている。
「アレク、肉焼くの、好きなの?」
「はい、ニーナ、うまく焼けたよ、食べてごらん」
ニーナの口に、肉を一切れフォークで運んでやる。
こんなこと、テーブルでやったらお行儀が悪いって叱られるけど、バーベキュー だから、もう、なんでもありだ。
ニーナは、ふうふうと息を吹きかけてから、パクッと食べた。
「美味しい!」
「だろ?」
ニーナの「美味しい!」と言う時の顔は、いつも本当に可愛い。
ニーナが、魔女だろうがなんだろうが、ニーナは僕のニーナだ。
「それで、アレクは、なんで汗だくになって肉を焼いてるの?」
「怖いお姉さん達に食べられないためだよ。ニーナも気を付けな、あいつら小悪魔だから!」
「坊っちゃま、誰が小悪魔ですって!」
「ほらね、怖いだろニーナ、イネスはすぐ怒る。あんな風になっちゃいけないよ…いてててて、耳引っ張らないで、イネス! 冗談だよぉ!」
「こらこら、イネス、乱暴はいけないよ」
「エミール! だって、坊っちゃまが、ニーナ様に私の悪口を言うから!」
「困った子だね、君は」
エミールが、腕を組んでイネスを睨めつける。
僕は、叱られてシュンとしたイネスを見て、ニヤニヤしてしまう。僕をいじめるからバチが当たったんだ。
おっと、イネスに睨まれた。慌てて目を逸らす。
エミールは僕のところにきて、僕とニーナを交互に見て笑顔になった。
「坊っちゃま、大変でしたね。たくさん肉を焼いていただいて、ありがとうございます。 どうです? そろそろ皆さん、デザートにしませんか?」
「「賛成!!」」
僕らは声を揃える。バーベキューのデザート!
庭で、火を見ながら、みんなで食べるデザートは、格別に美味しいんだ。
「そろそろ、グリルドフルーツが出来上がるんです。バニラアイスを添えると美味しいですよ」
「素敵! エミール、最高!」
ニーナは目を輝かせた。
「ありがとうございます、ニーナ様」
エミールは、ニーナの頭を撫でて微笑む。
「チョコレートがお好きな方には、チョコレートフォンデュもご用意しますよ。フレッシュなフルーツやパンを付けて召し上がってください」
みんなエミールの笑顔の虜になった。
ニーナと二人で、ベイクドフルーツを、お互いの口に運び、食べさせあって笑う。果物は、焼くと、なんでこんなに甘くなるんだろう。
チョコレートフォンデュは好きなフルーツの争奪戦で、僕はやっぱり小悪魔イネスとニーナ様命のマリーに負けてサクランボは取れなかったけれど、ブドウを死守した。
ニーナはちゃっかりチョコレートフォンデュの前に陣取って、手当たり次第に食べ、チョコレートで服をベトベトにしてクロエに襟首を掴まれていた。
美味しいスイーツがあって、みんなの笑顔がある。今日がどんなに大変な1日だったとしても、終わり良ければ全てよし!
お読みいただきありがとうございます!
「グリルドフルーツ」は、海外では定番のバーベキューのデザート。
リンゴや桃、イチゴ、バナナなど、季節の果物を焼くだけ簡単スイーツです。
ローズマリーやシナモンを振りかけて焼くのもいいですね。
アイスクリームやホイップクリームをトッピングすれば、大満足間違いなしです。
これから、夏のバーベキュー シーズン、ぜひお試しあれ!
今回で、この物語の前半が終了しました。
次回から物語の後半部分に入ります。ぜひ続きもお楽しみください。




