50 空飛ぶ馬3
盗賊達は、気を失っていて、動く気配はなかった。
息はあるので、死んではいない。はず。
解決しなければいけないことは、二つ。
一つ目はニーナが魔女とバレないようにすること。
二つ目は、盗賊を捕まえること。放っておくと、次の犠牲者が出るかもしれない。
「ニーナの魔法で、この人たちの記憶を書き換えるのはどう? 僕たちを襲ったけど、僕が強くて、盗賊を退治しちゃったみたいな感じに!」
「……アレク、それ、みんなに信じてもらえると思う?」
「うん……、無理?」
「無理」
ちぇー。僕の手柄にするのはいい考えだと思ったんだけどな。
「とにかく、わたしは風の魔法しか使えない。だから人の記憶を変えるなんて、できないよ」
「へぇ、魔法って万能じゃ無いんだね」
僕らは、盗賊を見ながら、作戦を考える。
日は落ちかかって、薄暗くなってきている。
「もしかしたら、この人たちって、ニーナが魔法を使ったかどうかなんてわからないんじゃない? 突然風が強く吹いたっていう、自然現象だって思うかも。」
「…そうかもね。強い風が突然吹くことなんんて、たまにあるからね」
……人が木に叩きつけられるような風は、たまにも吹かない気がするけど……
「この木が倒れているのは、不自然だよね」
盗賊の横には、根本から折れて倒された太い木がある。
「場所を移動する?」
僕は頷く。この盗賊達重そうだから、移動させるのは大変そうだけど、仕方ない、頑張ろう。
「こういうシナリオのはどう? 僕らは盗賊に襲われて、捕らえられそうになったけど、盗賊達が内輪もめをはじめて、その隙を見て逃げ出した」
「それならいけそう」
「で、逃げる時、風が凄かったけど、怖くて急いで逃げたってことにする」
「いいね」
「で、早く家に帰って、衛兵に知らせる」
「それで行こう」
ニーナがニヤッと笑った。
「じゃ、コイツらは、わたしが運ぶから、どこか、盗賊が潜んでそうな場所知らない?」
「……知らないよ、そんな物騒なところ」
「岩場とか」
「ああ、それならもうちょっと先にある」
「でも、ニーナが、この人たちを運ぶって、どうやって?」
「簡単だよ」
ニーナは、にっと笑った。
ニーナが左手をスッと上げると、竜巻が3つ発生した。
気を失っている男達を竜巻がもちげる。
「さ、行こ」
「……すごいね、ニーナ……」
僕とニーナは、また馬に跨る。
速く駆けても、その後ろを、竜巻に持ち上げられてた男達がゾロゾロと続いて来る様子は、側から見るとシュールだろうと思った。
薄暗い時間でよかった。
数分走ると、道沿いに大きな岩がある場所についた。
「ここでいいね」
ニーナが軽く手を振ると、盗賊達は、岩場の近くの木の根本に、どすんと下ろされた。
まだ、意識を取り戻す気配がない。
「大丈夫かなぁ」
「アレク、放っておきなよ、そんな奴ら」
「でも……」
僕は、生きているかどうか心配で、馬を降りて近づいてみた。
すると、ぱちりと一人が目を開けた。僕と目があう。弓矢を持っていたやつだ。
「わっ」
僕は慌てて後ずさる。
「う……ああ…、ここは……」
男は譫言のように言い、起き上がろうとする。
「ニーナ、この人、目を開けた!」
「もう、アレクったら……放っておきなさいって言ったでしょっ」
ニーナは、僕を、めっと睨むと、左手をあげた。
ごぉぉっとまた風が吹き、目を開けた男は、また木に叩きつけられて、気を失った。
僕が近づいたせいで再び木に叩きつけられてしまったようで、なんか悪いことをした気分になる。
「さ、行こうよ。もう暗いよ。早くしないと、おじ様や、クレマンに叱られるよ」
「そうだった、急がなきゃ! それに、早く衛兵に伝えて、この人達を捕まえてもらわないと!」」
慌てて馬に飛び乗る。
もう、ほとんど日が沈んでいる。ヤバイ。
「そうだ、アレク、空から行こうか? その方が速い!」
「え?」
「わたしは風の魔法使い。空も飛べるんだよ!」




