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49 空飛ぶ馬2


「お前ら…」

 ニーナから低い声がした。


 ニーナは、うつむいて震えている。

「ニーナ…?」


「お前ら、わたしのアレクに手ぇ出して、生きてられると思ってんのか」


「は? 何言ってんだ、お嬢様ちゃ…」


盗賊の一人がニーナに近づこうと動いた瞬間的だった。

ニーナが左手を振った。


ごおおおっと言う音がして、突然の疾風に男2人の体が中に舞った。

男達は、バキバキッと木に叩きつけられた。

ぐわっと言う声が聞こえた。気を失ったのか、二人は動かなくなった。


「な、なんだ?」

僕を切った男が、怯えて周りを見る。


「お前、アレクを切ったな」

ニーナが顔を上げる。目が据わって、薄笑いを浮かべている。

普段のニーナじゃない。


ニーナが、男に向けて左手を上げた。

次の瞬間、ごおっっと音がして、男の体が空に舞い、バキっと木に叩きつけられた。

風は止まず、その木は、バキバキという音ともに折れて、男と共に吹っ飛んだ。

男の体は背にした木ごと、別の木に叩きつけられた。

男がぐったりと気を失ったように見えた。


僕は、目の前のことに呆然として、突っ立てっていた。


ニーナが、何かしている。


「残念、まだ息があるみたい」

 ニーナが不穏なことを呟いて、ぐったりとしている男の方へ近づく。

「ニーナ、君…」

 声をかけても振り向かない。僕の声も聞こえていないみたいだ。


 ニーナは、ゆっくりと男に近づくと、もう一度左手を男に向かって掲げた。


 ニーナの足元から竜巻が起きていた。竜巻は男に向かって進んでいく。


 竜巻は、男の体を持ち上げた。男はぐったりとしたまま、竜巻に高く持ち上げられていく。


「ニーナ、やめて!」

 僕は、ニーナに近づいた。 


「ニーナ、やめるんだ、もし君が竜巻を起こしているなら、やめるんだ。それ以上やるとその人は本当に死んでしまう。その人をゆっくり、降ろしてくれないか」


ニーナは目が据わったまま、僕を見た。表情が動かない。声が届いている様子はない。

ニーナはすっと目を盗賊に戻す。男の体は木の上方へと持ち上げられていく。あそこから落とされたら、命はない。


僕はニーナに駆け寄り、後ろから抱きしめた。


「ニーナ、やめるんだ! その人をゆっくり降ろして!」


すっと、ニーナの体から力が抜けたように感じた。

竜巻が小さくなり、男の体は、地面にゆっくり下ろされた。

男は、まだ、気を失っている。死んでないと思う、たぶん。


「アレク…」

 僕の腕の中から、ニーナの声がした。僕は、ニーナをきつく抱きしめていた手を緩める。

 ニーナが僕を振り向いた。瞳に表情が戻っている。

 

「あいつが、アレクを切ったから…。あいつ、許せなかった…」

 ニーナの目が見開かれる。

「わたし、アレクの前で魔法を使っちゃった…」

 瞳が揺れ、潤んでくる。


「どうしよう、マルクスが、この国にでは魔法は禁忌だって。魔女ってバレたら、国王に捕まるから、急いで国から逃げ出さなきゃいけないって…」

 僕を見つめたままのニーナの瞳から、涙が溢れてきた。


「大丈夫だよ、ニーナ! 僕は、誰にも喋らない。内緒にする!」

  

 僕は、ニーナの両肩に手を置いた。

「僕は、君を国王の下へなんか行かせない。僕が君を守るから。魔女だからって、なんだっていうんだ。ニーナは、ニーナだ!」


 ニーナはしばらく僕の目を見つめて、それから、僕に抱きついた。僕の胸に顔を埋める。


「アレク、わたしが怖くない? わたしは、魔力がとても強いの。うちのみんなにも怖がられている。リヒトは、アレクの前で魔法を使ったら、きっと怖がられて嫌われるから気を付けろって言ってた」


僕は、もう一度、ニーナの肩を掴んで、ゆっくりと自分から離し、身をかがめてニーナと視線を合わせる。


「僕がニーナを怖がる? 確かに、花火の時、ニーナに叱られたのは、ちょっと怖かったけどね…。…あの時も、竜巻を起こして助けてくれたのはニーナだったんだろう? 国王が近くにいるのに、捕まるかもしれないのに、魔法を使ってくれたんだろ? 僕は魔力なんて怖くない。僕が怖いのは、君が僕の前からいなくなることだよ。この国から出て行ったりしないでよ。僕たちは、親友だろ?」


「うん。わたしは、アレクのそばにいたい」

ニーナは僕をまっすぐに見て言ってくれた。


僕は肯き、ニーナをもう一度抱き締めた。


「まずは、とにかく、あいつらをなんとかしなきゃ…」

 僕は、気を失っている盗賊に目をやった。


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