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48 空飛ぶ馬1


僕とニーナは、二人乗りで馬に跨がり、家路を急いでいた。

もうすぐ日が暮れる。


湖畔の別荘から、乗馬して「ちょっと散歩に行って来る」と告げて出てから、ちょっとじゃない時間が経過していた。


目的地の丘に着いて、風景をゆっくり眺めていたら、

「寝転ぶと気持ちいいよ」

と、ニーナが芝の上に、ごろんと寝転がった。


「だめだよ、ニーナ、お行儀が悪い」

 と言ってみたが、「いいからいいから」というニーナの暢気な声に、「ちょっとなら、いいか」と僕も寝転がった。


青空を流れる雲。爽やかで心地よい風。この場所には、二人しかいない開放感。


僕はいつの間にか眠ってしまっていた。

はっと、目覚めた時には、日が傾いていた。

ヤバい!


隣を見ると、ニーナが気持ちよさそうに、くーくー寝ている。

「ニーナ、ヤバいよ、寝ちゃった! 夕飯に間に合わなくなる!」


ここから馬の足でも、別荘まで1時間かかる。

この夕日だと、これから帰ったら、どう考えても日がくれてしまう。


今日は、別荘で過ごす最終日なので、夕食は、みんなでバーベキューをする予定をしていた。

あんまり遅くなると、時間に厳しい父さんやクレマンに大目玉をくらうし、使用人のみんなからも何か言われる。

昨日色々あったばかりなので、今日は無事に一日を終えたい。


あたふたとニーナと騎乗する。

ニーナは僕の前に座り、僕はニーナを抱えるように手綱を引く。

今日、僕が乗っているのは、オクタビアンという名前の牡馬だ。

穏やかな性格な馬で、僕と相性がよく、別荘に来るたびに乗馬していた。

今日は二人乗りで、重いだろうから申し訳ないが、少し速めに駆け続ける。


別荘まであと半分くらいのところに来て、馬を休めるために、スピードを落とした。

日が陰って、薄暗くなってきている。


細い道に差し掛かったとき、シュッと風を切る音がしたかと思うと、馬が嘶きをあげて足を止めた。


手綱を引き、馬を落ち着かせる。

「どうした?」

馬の足元を見下ろすと、地面に弓矢が刺さっていた。

え?


「おい、坊主、いい馬だな」

 低い声が聞こえた。

 森の木立の影から、三人の男達が出てきた。


 二人は剣を持ち、一人は弓を持ってる。

 目つきが悪く、どう見ても、近隣の村人ではなく、不埒な輩でしかない。

 盗賊? こんなところに?

 この辺りは王族や貴族の別荘地のため、衛兵が見回りをしていて、治安はよかった、はずだ。


「馬から降りろ。その馬を渡せば手荒なことはしねぇ」

 男の一人が剣を構えて言う。


 僕は迷った。このまま馬で駆けて逃げてしまうこともできるかも知れない。でも、弓矢から逃げ切れるのか。

 馬は二人を乗せているから、そんなに速く走れない。


 ニーナが振り向き、僕の顔を見上げた。

 険しい顔をしているが、怯えた様子はない。

 ニーナがいくら喧嘩が強くても、武器をもっている男三人に、素手では向かっていかないだろう。


「なんだ、坊主、妹のことも、心配だろう。馬さえ渡せばいいんだ、簡単だろう」

 ニヤニヤしながら、剣を構えて、僕らの方へ近づいてくる。


 そんな話は信用できないと思った。

 馬を降りたら、下手すると殺されるかも。そんな危機感があり、身動きとれなかった。

 僕は盗賊を睨んだまま、判断に迷い、手綱をにぎる。


「おい、聞いてんのか、坊主!」

 盗賊の一人が剣を振った。


「いたっ」

 僕の足の脛に、痛みが走る。見ると、僕の右膝の下辺りのズボンが裂け、血が滲み出ていた。剣で切られたらしい。


「何をするっ」

 僕は騎乗から盗賊を睨む。


「ちょっと剣で撫でただけだ。早くしねぇと、今度は本気で刺すぜ」

 盗賊が睨み返してきた。


「アレク?」

 ニーナが、僕の足の傷を見た。

 血が流れ、ズボンの裾まで汚れている。傷はドクドク痛い。


 ニーナは、視線を僕の足においたまま、するりと馬を降りた。


「ニーナ! 降りちゃためだ!」

 僕が止める間もなく、ニーナは、男達の前に立つ。


「いい子だな、お嬢ちゃん、兄貴にも降りるように言ってやれ」

 盗賊達が、ニーナに近づいて来る。


「やめろ、その子には近づくな!」

 僕も慌てて馬を降りる。

 盗賊がニーナに触れないように、ニーナの前に出る。


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