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46 湖畔にて6

 

 王子たちは、お礼に来たのか、乱暴な口をきいたニーナのことを告げ口に来たのか、わからない…。

 でも、2人ともニーナを見る目はキラキラとして真っ直ぐで、悪意はかけらも無いように見える。


 えーと、こちらもニーナに加勢しないとね。


「失礼ながら、申し上げます。あのときは、僕もニーナも必死で、とにかくお二人のお体だけが心配で、実は、どうやってお二人をお助けしたのか、あまり覚えていないのです」

「そうなんです。全く記憶にございません」

 ニーナは、張り付いた笑みで言いきった。


「そうですが…」

 なぜか2人とも顔を曇らし、顔を合わせる。アンリが言う。

「アレクシス、ニーナ、お二人に必死に助けていただいたことには、感謝しきれません。どうかお礼をさせてください」

「そこまでおっしゃっていただいて恐縮です。ニーナ、何か望みはある?」

 ニーナに微笑みかける。ニーナは、僕の顔を見ながら首をかしげ考え込む。

「何でもいいの?」


「ええ、おっしゃってください」

 アンリの声に熱がこもる。

「アイスクリームの三段重ねが食べてみたいです」

「え?」

「前に街へ行ったときに、アイスクリームを3つも重ねてコーンに乗せて食べている人を見て、わたしもいつか食べてみたいと思っていました。しかも、3種類の違うフレーバーをのせていたんです。できればわたしは、バニラとチョコと、あとひとつは、何にしようかな…、今私を待っているのは、レモンとフランボワーズのシャーベットだし…」

「えーと…?」

 アンリが困った顔で、僕の方を見る。


 ルノーは笑い出した。

「ニーナ、僕らがお礼をするんだから、アイスクリームひとつでは少なすぎるよ。君のためにアイスクリーム屋を作ることだって、僕らにはできるんだ。ね? 兄上」

「ルノー、そういう言い方はよくない。ニーナの希望をちゃんと受け止めないと。王家だからといって傲り高ぶってはいけないと父上にいつも言われてるだろう」

「…はい」


 しゅんとしたルノーを見たニーナは、緊張が解けたように笑顔になった。

「ルノー様、では、わたし、美味しいスイーツをたくさん食べたいって思うのですが、それは叶えていただけますか?」

「スイーツ? それなら、王宮においでよ、君の好きなスイーツを用意するよ!」

ルノーも笑顔になる。

「それはいい考えだね、ルノー。ニーナ、王宮に遊びに来ていただけませんか。王宮のスペシャルなスイーツをご馳走させてください」

 アンリが微笑んだ。


「王宮のスペシャルなスイーツ!…はいっ、喜んで!」

 ニーナが目をキラキラさせて満面の笑みになる。

 ニーナの嬉しそうな顔に、二人の王子も満足そうだ。


「アレクシスの望みを伺いたいのですが?」

「僕もニーナと一緒にお招きいただけると光栄です」

「わかりました。では、後日、日程を連絡させていただきます」


 玄関の外まで2人を送ると、王族専用の豪華な馬車が2台停まり、それを見に来たらしい隣人が集まっていて、ちょっとした騒ぎになっていた。

 

 お見送りをしたあと、おやつの続きを食べなきゃねと笑い会う僕とニーナは、玄関のドアが閉じたとたん、難しい顔をした父さんに応接室へ連行されて、ことの次第をすべて説明させられた。

 僕が説明しているうち、ニーナは、しゅんとして俯いていた。

 王子に乱暴な口をきいたことを叱られると考えているのかもしれないと思って、そこはあまり話さなかった。

 父さんは話を聞き終わるとニーナを見た。


「ニーナ、よくがんばったね、君は勇敢な子だ。溺れている人を助けるなんて、なかなかできることじゃない。たぶん、君は誰が溺れていても助けたんだろうが、今日、君が助けたのは、この国の王子だ。これはすごいことなんだよ。本当によく助けてくれた。私は、君をお預かりしている身として、君を誇りに思うよ」

「ありがとうございます。おじ様」

 ニーナは、嬉しそうに頬を赤らめた。

「アレクもよくお二人を助けてくれた。よくがんばったね」

 僕はお二人をボートに引き上げただけなのに、そう言われると照れ臭い。


 ニーナは、おやつの続きを食べておいでと解放された。

 うきうきと走り去る。

 でも、僕は、残るように言われ、今日あったような王室に関わることはすぐに報告しなければいけないと、父さんだけでなく執事のクレマンからも言われた。

 それから父さんは、もう少し詳しく確認したいことがあると言う。



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