43 湖畔にて3
「おい、大丈夫か」
意識を取り戻した少年は、咳き込んでいる。ニーナはその背中をさすってあげていた。
僕の方にいた金髪の少年は、息が落ち着き、顔をあげた。
「ありがとう、助かりました…」
そういってから、先に水に落ちた小柄な少年の姿に気付き、ハッとして手を伸ばす。
「ルノー、大丈夫か?」
「…はい、なんとか…」
小柄な少年は、息が落ち着き、頷くと、体を起こした。
二人とも、ずぶ濡れで、ボートの上に座り込んでいた。
「ごめんなさい、兄上。僕のせいで、兄上も、ボートから落ちたんですね…」
「ああ、大丈夫だよ、ルノー」
ルノーと呼ばれた小柄な少年は、ニーナを見た。
「たすかった、礼を言う。」
ニーナは頷いて、それからおもむろに、ルノーの頭にゲンコツした。
「いたっ」と、ルノーは頭を押さえて目を見張る。
「このバカっ、お前、泳げもしないのにボートの上で暴れて、死ぬ気かっ」
ルノーは、ポカンとニーナを見ている。
「王子、王子っ」
別の人の声がしてみると、もう一艘のボートが、青い顔をした青年二人を乗せて近づいてきた。
「ご無事ですか、王子っ」
ルノーは、二人を見ながら、片手を上げて見せた。
「よかったぁ」
二人とも泣き出した。
「岸に帰る。」
ニーナは、ボートを漕ぎ始める。
今こちらに向かってきていた別のボートの二人は、よかったよかったと泣いたまま僕らのボートを見ている。
「お前ら、泣いてる場合かっ、早くこいっ」
ニーナに叱られ、「はいっ」といって二人はボートを漕ぎ始める。
ニーナは、小さな体のどこにそんな力があるのかと思うスピードで漕いでいく。
別のボートの二人が王子と呼ぶので、僕は、全身ずぶ濡れの二人をまじまじと見直した。
ああ、小さい方は、ルノー王子だ。現国王の孫で、皇太子の第4王子だ。
たしか僕より二歳下の13歳かな。ニーナと同じ年齢だ。
もう一人の金髪の少年は、アンリ王子だ、皇太子の第3王子。僕の一つ上の16歳のはず。
お二人とも、王宮の行事で何度かお会いしたことがある。
ま、僕なんか数多いる親戚のうちの一人だし、王子は僕を覚えていないだろう。
…しかし、こんなところで王子が溺れているなんて…
「お前、この国の王子なのか?」
ニーナが、ルノーに、怒った声で言う。
「うん、まあね」
ルノーは、困った顔で頷く。
「お前、王子なら、もうちょっとしっかりしろよ」
「…ごめんなさい…」
たぶんニーナとルノーは同い年だ。だから、ニーナに叱られている様子には、ちょっと同情する。
しかも、相手は王子だし、不敬だからって、後で何か言われるのも困る。
「ニーナ、お二人とも、大変だったんだから、もう少し優しくしてあげて」
ニーナはちょっと不満げな顔をして僕をみて「はぁい」と答え、それからは黙ってボートを漕ぎ続けた。




