40 花火7
結局、僕は、帰りの馬車の中で、父さんとオスカー先生とニーナの3人に、ずーっと叱られた。
3人とも、僕が、燃える屋根に潰されそうになったことが、気に入らないらしい。
でも、僕は人助けをするために頑張ったんだし、屋根のことは確かに危なかったかもしれないけれど、実際、無事だったんだし、そんなことで怒られるのは納得いかない。
そうやって言い合っているうちに、家に着いて、もう今日は遅いから明日続きを話すと、父さんの部屋に呼び出しをくらった。
翌日、父さんの部屋では、「目の前の危険をほっとけない」という僕と、「まだ15歳なのだから命の危険があることはしてはいけない」という父さんの主張は対立し、僕はやっぱり納得できなかったけれど、父さんとの口論で敗北した。
そして、父さんの長いお説教に耐えて、解放された。
自分の部屋でへこんでいると、ニーナがやってきた。
「アレク、元気だしなよ」
「無理だよ、しばらくほっといて」
僕はベットに突っ伏したまま返事をする。
ニーナは、ベットに乗って来て、僕の隣に座ると、僕の頭を撫でた。
「ほっといてったら!」
僕はニーナのいない方へ顔を向ける。
ニーナが僕の横で寝転んだ気配がする。
僕の頭の後ろをツンツンと突いている。
「もう! ニーナ、ほっといてって、言ってるだろ!」
僕は体を起こしてニーナを見る。
「アレクシス様は、ヒーローだって!」
「へ?」
ニーナが嬉しそうな顔で僕に寄ってきて、右手で僕の頬に触れる。
「昨日、アレクが助けた、エレナは、クロエの友人だったんだ。昨日は、クロエとエミールは、エレナとジュールのカップルと、ダブルデートだったの。それなのに、あの火事に巻き込まれてしまったんだって」
「ダブルデート? クロエと、エミールは付き合っているってこと?」
「あ、大人たちには内緒だよ」
にっとニーナは笑うと、僕の頬から手を離した。
「クロエも、エミールも、アレクにほんと感謝してる。今日、美味しいおやつをアレクの分だけ作ってくれるって! アレクが、おじ様にたくさん叱られたことも知っているから、チョコレートのお菓子も持ってくるって言ってたよ。よかったね、アレク」
…そっか…。
「え? アレク、泣いてるの?」
「ば、泣いてなんか、ないよ」
僕は、またベットに突っ伏す。
よかった。みんなに、いろいろ叱られたけど、僕だって役に立ってたんだ。
誰かの大切な人を守れた。
「ごめんね、わたしも昨日、怒りすぎた。わたしにとっても、アレクは、ヒーローだよ」
ニーナが、僕の頭を撫でながら言う。
もう、なんだか胸がいっぱいで、当分、顔をあげられそうにない。
エミールが、アレクシスに作ってくれたお菓子は、大好物のクレーム・ダンジュ、フランボワーズソースがけ。
そして、チョコレートは、キャラメルガナッシュのボンボン・ショコラ。
頑張ったご褒美は、蕩けそうなほど美味しかったようですよ。




