37 花火4
赤い炎が回転木馬を飲み込むように大きくなっていく。
僕は、回転木馬に近づこうとしている女性をみた。子どもの名前を叫んでいる。
女性の視線の先では、子どもが、木馬の棒にしがみついて、泣き叫んでいた。
女性は火の勢いを恐れて近づけないみたいだ。
火の粉がその子どもの方へと降りかかっていた。
僕は、回転木馬の柵を超え、台に乗り上がる。
木馬は火がついたまま回っている。
ギシギシと木が擦れる音、バチバチと燃える音。
子どもの方へ近づくと、熱風が強く、肌がヒリヒリする。
それでも、なんとか子どもに近づき、抱き上げた。
「大丈夫だから!」
5歳くらいの子どもは、僕にしがみつくと泣き止んだ。
僕はその子を抱えて、必死で走って、転がるように木馬を降りた。
母親だろうと思われる女性に、子どもを届ける。
「坊や!坊や!ありがとうございます!」
女性は、子どもを抱きしめて、うずくまった。子どもは安心したように泣きはじめた。
「急いで逃げてください。ここから離れた方がいい」
うずくまる女性を立ち上がらせる。
女性は、僕にお辞儀をして、子どもを抱えて走って行った。
まだ回転木馬から悲鳴が聞こえる。
僕は目を凝らして探す。
人はどこにいる?
回りながら燃えていく回転木馬は、奇妙な美しさがあった。
木馬の下にうずくまる人を見つけた。
その人の方に火の手が迫っている。
動けなくなっているのだろうか。
僕はもう一度木馬の台に乗り上がり駆け寄る。
「大丈夫ですか」
女性だった。僕より少し年上だろう。
「あ、足が…、花火に驚いて落ちてしまって…」
「足をお怪我されているんですね、僕につかまって!」
抱き上げて逃げられたら速いのだろうけれど、僕にはそんな腕力はない。
肩に掴まってもらい、体を支えて、立ち上がる。
火の勢いが増しているのを感じる。
急がないと!
また悲鳴が聞こえた。僕らの方に向けた悲鳴だと感じた。
ふと見ると、回転木馬の屋根の部分が燃ながら崩れて、僕の方へ、迫ってきていた。
炎の勢いがすごい、バキバキと音がする。熱い熱風が押し寄せる。
これは、ヤバイ。
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