33 行方3
遅くなった夕食は、ニーナが好きなものばかり並んでいた。
ニーナは、ご機嫌でパクパク食べ、テーブルマナーを疎かにしていると父さんに咎められ、首をすくめていた。
でも、デザートに、ニーナの分だけ今日のおやつのガトーショコラがプラスされていて、またご機嫌になっていた。
使用人はみんな、ニーナに甘い。
「ニーナは、どこで道に迷ったんだい?」
ガトーショコラを頬張って、ご機嫌なニーナに、父さんが問う。
「…よくわからないんです。街道沿い帰って来たはずなんてすけど、道を外れてしまったみたいで…。」
「道を外れるような街道筋があったかな? どうやって、もとの道がわかったんだい?」
「…通りすがりの人に聞きました」
「…ニーナ、街は何時ごろ出たの?」
「時計がなくて…」
ニーナの声が小さくなっていく。
「ほんとうに、本を買いに行っただけかい? 長い時間、街にいたんじゃない?」
「い、いえ、そんなことはないです。あ、あの、別に遊んでいた訳ではなくて、あ、アイスクリーム屋さんも探してません。」
ニーナの話を聞く、父さんと僕の目が合う。
どちらともなく頷き合う。
……ニーナ、それは、街で遊んでいたし、アイスクリーム屋にも、行ったってことだね……。
ぼくは嘘つきニーナをねめつける。
「ニーナ、本当はどうして帰りが遅くなったの? 正直に言わないと、また、父さんに叱ってもらうよ」
「え……」
ニーナは、情けない顔になる。
本屋に行くために街へ行ったのは本当なのだけれど、アイスクリーム屋にも行こうと思っていたらしい。
街でアイスを食べた後、広場で遊んでいた子どもと仲良くなって一緒に遊び、気がついたら暗くなっていて、あわてて本を買って帰ってきたと、白状した。道に迷ったというのは嘘だった。
さっきは、父さんが怖くて、遊んでいて遅くなったとは言えなかったと。
ニーナは、黙って勝手に出掛けて皆に心配をかけた上に、嘘をついたということだ。
父さんから、お仕置きとして、明日は「おやつ抜き」を言い渡された。
おやつが何よりも楽しみなニーナは、泣きそうになる。
「ごめんなさい。おじ様、もう一度絶対に一人で出掛けません、嘘もつきません。あの、おやつ抜きはだけは許してください。」
父さんにすがるようにして訴えるが、
「許しません」
と言い切られ、肩を落としていた。
結局、翌日は、父さんにこっぴどく叱られたニーナを見ていたに使用人達が同情して、それぞれが内緒でニーナにおやつをくれたので、ニーナは、ホクホクとご機嫌で籠一杯のおやつを抱えていた。
みんなニーナ甘すぎる。
「でもさぁ、よく考えると、わたしって、お昼から夕方まで、たった半日いなかっただけなんだよねー。なのに、あんなに大騒ぎするなんて、貴族って過保護なんだねー。」
僕の隣で、おやつを眺めながら、何気に呟く。
「そうだね」
僕は、ニーナの顔を覗き込む。昨日あんなに泣いていたのに。
「…ちっとも反省してないよね、君」
ニーナの両方のほっぺたを、ちょっと強めにつまんでやった。
僕がどれだけ心配したか。
ごめんなさいと言うまで、離してやらない。
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