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31 行方1


 その日の午後、家中探しても、ニーナの姿は見えなかった。


 

 午前中の礼儀作法の授業は大人しく受けていたし、お昼ご飯もいつもどおり美味しい美味しいと食べていた。


 今日のお昼ご飯は、自家製ハムとキノコのパスタで、トリュフとパルメザンチーズが効いていて絶品だった。アンティチョークのサラダもニーナは残さず食べていた。デザートのシャーベットも喜んでいた。

 ニーナはいつも至極幸福そうに食べ、それを見ている料理人達の顔もほころんでいた。


 昼食後、僕は自室で論文を書いていて、ニーナは、庭の手入れを手伝いに行くと言っていた。


 ところが、ニーナが、おやつの時間になっても姿を見せなかった。


 ニーナは、おやつを何よりも楽しみにしている。

 毎日、とろけそうなほど幸せそうに、ケーキやクレープを頬張る。

 パティシエ達も張り切っていて、このところ、いろんな種類のスイーツが皿に並んでいた。


 ニーナがうちに来て、半月が過ぎ、使用人はみんな彼女の虜だった。


 木に登ったり庭や廊下を駆け回ったりするニーナの姿を見て、驚きあわてふためいていた使用人たちも、今はニーナの型破りな姿を、驚きながらも微笑ましく見ていてくれる。


 だから、おやつの時間にニーナがいないとわかり、みんなが心配して、手分けして探してもらうことにした。


 庭にもいないし、図書室にもいない。

 どこかの部屋で眠ってしまっているかもしれない。

 まさか、屋根に登って寝ているかも。屋根裏部屋に入って出て来れないのかも。

 地下室は鍵がかかっていて入り込めないはずだけど、ニーナなら、勝手に鍵を開けて入り込むくらいはやりかねない。


「ニーナ、出ておいで、おやつの時間だよ」

「ニーナ様、今日のおやつはガトーショコラですよ」

 僕は、マリー達と一緒に、声を掛けながら屋敷中を探した。


 日が傾きはじめる。

 夕日が庭園を照らすけれど、そこにニーナはいない。


「まったく、どこに行ったんでしょう、こんなにみんなを心配させて。出てきたらお仕置きですからね、ニーナ様」

 クロエがプリプリ怒っている。

「クロエが怖くて出てこれないんじゃないですか、ニーナ様は」

「マリーっ」

「冗談です、すみません」


 仕事から帰ってきた父さんが、ニーナの不在を聞き、顔色を変えた。

 ニーナの虜になっているのは、もちろん父さんも一緒だ。


「ニーナなら、屋根の上で寝てるんじゃないか」

 と、僕と同じことを言い出す。

「屋根にもいなかった。」

 使用人と僕で頑張って屋根も見に行ったのだ。


 それから時間がたち一番星が見え始めたころ、使用人の誰かが、「誘拐では…」といい始めた。

 ルナール家のニーナがうちにいることは、公表されていない。

 だから、ルナール家を狙ったわけではないだろう。

 ニーナは、美少女だから、狙われたかもしれない。

 屋敷に入り込んだ怪しい人物をみなかったか、議論になる。

 みんな、玄関ホールに集まってきていた。

 玄関ホールには、コックやら庭師やら侍女やら20人近い使用人達が集まり、不安げに話していた。


 そこへ、父さんが現れ、一堂がシンとなる。

「クレマン」

 と、父さんが執事のクレマンを読んだ。


「みながニーナを懸命に探してくれたようだが、これ程見つからないのはおかしい。もしかしたら、事件に巻き込まれたかもしれない。警察に知らせよう。」

「かしこまりました」

 みんながクレマンを見つめ、クレマンは、馬車の用意をするよう指示をした。


 クレマンが玄関の扉に向かったときに、玄関のドアが、ひとりでに開いた。


お読みいただきありがとうございます!

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