30 隠し部屋2
図書室にそれはあった。
いつもは触らない本棚の辺りで、ついバランスを崩して本に手をついたら、ガコンと音がして、本棚動いた。
壁に取り付けられていると思った本棚が、壁ごと僕のほうへ開いたのだ。
…信じられない。
開いた隙間に手を掛け、ゆっくりと自分のほうへ引くと、薄暗い部屋がある。
「えーっ、ニーナ! 部屋がある!」
僕が大きな声を出すと、ニーナはの『貴族の屋敷・理想のデザイン』という本を抱えて、駆けつけてきた。
「なんだ、アレク、知ってたんじゃないか!」
「い、いや、違うよ、ほんとに偶然に、本棚が開いたんだ」
「ふーん」
やめて、その疑う目つき。
「入ってみる?」
「もちろん!」
僕は、本棚を引っ張り、ドアのようになっている本棚を最大限に開いた。
図書室の明かりが、本棚の向こうの部屋に届いて、中の様子が伺えるようになった。
小さな部屋だった。
部屋の中央にはテーブルとソファーが置いてある。
テーブルには燭台があって、蝋燭がたっていた。火は消えている。
奥の壁には背の低い戸棚があり、棚の上には、燭台やら小さな小箱やらが置いてある。
壁一面には絵画が飾ってある。
肖像画に描かれてる人は服装が今のものとは違う。本で見た昔の出で立ちだ。
僕のご先祖様たちなんだろうか。ゆっくりと肖像画を見ているてふと、目を止めた。
「ニーナ…」
「うん、何?」
「いや、君じゃなくてさ、これ、この子、ニーナみたいだ。」
一枚の絵のなかに、華やかな衣装をまとった家族が描かれていた。
頭にクラウンを乗せている人がいるから、王族なんだろう。服装は古くない。今の王族と変わらない。
王様とお妃さまと子どもが4人描かれている。
二人は男の子で二人は女の子だ。
その女の子の一人が、7歳くらいだろうか、ストロベリーブロンドの髪に緑の目でニーナの面影がある気がした。
「何言ってるんだアレク、わたしはそんなに小さくない。」
ニーナは憮然としている。
「なんか似てない?ニーナの小さな頃とかさ」
「そうかぁ?髪と目の色が同じなだけだろ?」
ニーナは絵を覗き込む。
「この人たち、王族っぽいよ。服装が豪華だし。私とは正反対の人たちだ! わたしはそのくらいの歳のときには海の上にいた。服だって、周りの奴らだってろくなもんじゃなかったし、そもそも、その頃はもう、親がいない。」
「…ニーナのご両親は?」
「親は高波にのまれて亡くなったってマルクスが言っていた、でも、わたしがまだ小さいころで…覚えてない。」
「そう、だったんだ、ごめん。」
「アレクが謝ることじゃないよ、それよか、こっちの絵、アレクの赤ちゃんの頃じゃない?」
ニーナに引っ張っていかれ、その絵を見た。
家族が描かれている。
父さんは、すぐにわかった。
二人の男の子は、たぶん兄さん達だろう。赤ん坊は、髪の色から僕っぽい。
そして赤ん坊の僕を抱いている人…
「母さん…」
「アレクのお母さんなんだよね! わたし、会ったことない。」
「もう会えないよ、僕が5歳の頃に亡くなったんだ。」
「…そっか…」
「何でここにこの絵があるんだろう」
「そうだね。おじ様が置いたのかな」
「そうだよね、この部屋、部屋は埃っぽさはなかった。誰かが掃除しているんだろう。戸棚の取手も磨かれている。僕は知らなかったけど、父さんか誰かが出入りしているんだろうね」
「この部屋は、まだ、どこかに続くなかなぁ」
二人で色々触ってみたけれど、他の部屋へ続くようなスイッチのようなものは無さそうだった。
「絵を飾るための部屋みたいだね、絵がお宝なのかな。ティーサロンじゃなかったのかぁ、残念。」
「でも、ニーナのお陰で、母さんに会えた。顔を思い出した。僕もあんまり覚えてなかったから、思い出せて嬉しかったよ、ありがとう」
ニーナは、驚いたように僕を見上げ、うん、と頷いた。
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