表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/96

28 昇格2


しばらく沈黙があって、父さんがふっと笑った。


「わかったから、頭を上げなさい。」

 父さんは怒った顔はしてなかった。

 隣にいるクレマンは、それはそれは怖い顔をしていたけれど。


「ニーナ」

「はい」

「怪我はなかったかい?」

 ニーナは、頷く。

「なら、よかった。」


 父さんはしゃがんで、壺の欠片を拾う。

「この壺が、倒れてこの台の高さから落ちると、もっと粉々に砕けてもいいのだけれど、破損部分が少ない。…落ち方が上手かったんだね。修復できると思うよ。クレマン、手配してくれるかな?」

「かしこまりました。」

 クレマンは、ニーナを睨み付けながら出ていった。ニーナは、首をすくめて、見送る。


「ニーナ」

 父さんは、しゃがんだままニーナを見た。

 立っているニーナを見上げる格好で、ニーナと目を合わせる。


「君が元気がいいのはいいことだと思うけど、私はね、今日は、壺が、君の代わりに怪我をしたと考えている。もしかしたら、君にとって壁に登るくらいは平気だと思ったかもしれないけれど、自分の力を過信したり、はめをはずしたりすると、怪我をするんだよ。私はそれが心配だ。」

ニーナは、神妙に頷く。


「今回は、困ったとき、ちゃんとアレクに相談して、偉かったね。今後は、何でも一人でやろうとせず、事前にアレクや私に相談してほしい。」

「はい」

 父さんは立ち上がって、ニーナの頭を撫でた。

「君を信じてるよ」


 それから、僕の肩に手をおいて、僕に笑いかけて部屋を出ていってしまった。


「…これは、…許してもらえたってことかな?」

 父さんを見送っていたニーナが、心配そうに僕を見る。

「たぶんね」

 僕は、肩をすくめる。


「信じられない、うちなら、今頃わたし、マルクスにボコボコにされている…」

「…そんなに乱暴なの、君のお兄さん…」

 ニーナは、なにかを思い出したように顔をしかめて頷く。

 そうなんだ、大変だったんだね、ニーナ。


「アレク、本当にありがとう。一緒に謝ってくれて、わたし、アレクを一回しか助けてないのに、アレクには、何回も助けてもらった、だから…、わたし、もう、アレクの親分を辞める。」

「え?」

「もう、アレクを子分だなんて呼べないよ。」

 それは良かった。僕は、昇格したらしい。


「だから、これからは、その…」

 ニーナは、顔を赤くしながら、僕を見上げる。

「わたしの親友になってくれないかな?」

 赤い顔で、しかも真剣な目で言われてしまった。


「えーと、『お兄さん』とかでなくて、『親友』?」


「お兄さんって、マルクスやリヒトは、ろくなやつじゃないから、アレクは、お兄さんじゃない。あいつらに比べれば、アレクの方が数千倍マシだ。」

 誉められてるんだよね?

 というか、あんなに格好いいお兄さんたちなのに、何言ってんだニーナ。


「わたしの親友は、嫌かな?」

 いつも自信満々のニーナにしては、不安げな表情で見上げてくるのが面白くて、僕は、ぽんとニーナの頭に手を置いた。

「とんでもない、喜んで親友になるよ」

 ニーナの顔が、ぱあっと明るくなる。

「ありがとう、アレク!」


 どうやら僕は、ニーナの中で、「子分」から「親友」へ、レベルアップしたらしい。


お読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ