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「ありがとう、マリー、ニーナのために…。この埋め合わせは、また、させてもらうよ」

 僕は心を込めて、マリーにお礼を言う。


「坊っちゃまは、私のニーナ様を、ちゃんと褒めてあげてください。」

 マリーにしては珍しく、少し声に感情がこもっていた。


 マリーは感情の起伏をあまり見せないけれど、幼い頃から一緒にいる僕にはわかる。マリーはなんだか怒っている。

 マリーは7歳でこの屋敷にきた。僕は6歳だった。

 だからマリーは時々、僕を弟のように扱う。


「まったく、坊っちゃまは頼りない。ニーナ様が叱られていても助けて差し上げなかったでしょう。ニーナ様は、当家の争いの火種を消してくれたんですよ」


 どうやら、僕に小言をいうために、ゲームに参加したらしい。

 しかし「私のニーナ様」とは…。


「わかったよ、マリー」僕は、肩をすくめる。


「ニーナ、今日はありがとう。君がいなかったら、イネスは疑われたままだったかもしれないし、屋敷の中に誰か泥棒がいるんじゃなかと、トラブルになるところだった。君のお陰で助かったよ。」


「うん、わたし、頑張ったんだよ、アレクのために」

 にこーと笑った。そして、さっと、ソファから立ち上がり、僕に抱きついてきた。

 僕は座っていたから、首に体当たりされ、グッと締められる感じになった。苦しい。けれど、

「よかったぁ、アレクが怒ってなくて!」

 ぎゅうっとひっついてから、僕の顔を見て、嬉しそうな顔をするから、可愛いな、と思ってしまう。

 

「坊っちゃまは、ニーナ様の凄さを知っていて、うちにお招きしたんですよね?」

 マリーが、低い声で言う。まだ怒ってる?

「凄さって、何?」

「坊っちゃまのお祖父様は、国王様の弟君です。坊っちゃまだって、魔力があってもおかしくないんですよね?」

 は? 

「いや、お祖父様から、魔力のことなんて聞いたことないよ」

 お祖父様は、今は、田舎の城で悠々自適に暮らしている。

 魔力のことなんて話したことなかった。

 

 マリーと話しながら、僕は、僕にひっついたままのニーナが暑苦しくなって、肩を掴んで引き離す。

 まったく子犬みたいなやつだ。

 ニーナは不服そうな顔をした。


「そうですね、坊っちゃまは魔力をお持ちではありませんものね」

「そりゃそうだよ! みんな魔力なんてないよ!」

 マリーは、ふうっとため息をついた。

 なんか釈然としない。何が不満なんだ、マリー!


「さあ、そろそろベットに入る時間ですよ、ニーナ様」

 マリーに促され、ニーナが部屋を出ていく。


僕は、ドアまでニーナとマリーを送り、マリーの耳元で囁いた。

「マリー、僕のニーナのために、遅くまで付き合わせて悪かったね」


振り向いたマリーは、僕を、デコピンした。

「いてっ」

不意打ちに、額を押さえる。

「残念ながら、坊っちゃまでは、まだまだです。私のニーナ様を、お任せできません」

冷たい目をしたマリーに囁き返された。


マリーは、ふんと鼻息荒く、ニーナを連れて行ってしまった。



お読みいただきありがとうございます!

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